見出し画像

オープンイノベーション税制について

Gx Patnersの寺井です。実は税理士もしてます(これ最近は知らない人もいます)。令和2年度の改正で新設されるオープンイノベーション税制、聞いたことありますか? スタートアップ界隈の方、気になってる人もいるのでは無いでしょうか。今回はこの税制について、ざっくりの内容と自分なりの感想を書いてみます。

<創設の背景>

増加し続ける大企業の内部留保を活用して、イノベーションの担い手となるベンチャー企業へ新たな資金供給を促進するため・・・
とあります。2019年に発表された統計では企業の内部留保は7連連続増加中で463兆1308億円、この豊富な資金をスタートアップとの協業に活用しましょうということですね。

<いつから?>

令和2年4月1日から令和4年3月31日まで

<誰が対象?>

青色申告書を提出する法人で特定事業活動を行うもの※1(対象法人)

※1「特定事業活動を行うもの」とは、自らの経営資源以外の経営資源を活用し、高い生産性が見込まれる事業を行うこと又は新たな事業の開拓を行うことを目指す株式会社等をいう
<出資を行う企業要件>
・国内事業会社
・国内事業会社によるCVC(事業会社又はその子会社が運営し、持分の過半数以上を所有するファンド等)

<どんな取引が対象になる?>

期間内に、特定株式※2を取得し、この株式を、取得した事業年度末まで持っている場合

※2「特定株式」とは、産業競争力強化法の新事業開拓事業者の株式のうち、既に事業を開始しており、設立後10年未満のもので下記の要件を満たすことにつき経済産業大臣の証明があるものをいう
①対象法人が取得するもの又はその対象法人が出資額割合50%超の唯一の有限責任組合員である投資事業有限責任組合の組合財産等となるものであること
②資本金の増加に伴う払込みにより交付されるものであること
③その払込金額が1億円以上(中小企業者にあっては1千万円以上とし、外国法人への払込みにあっては5億円以上とする。)であること。ただし、対象となる払込みに上限を設ける
④対象法人が特別新事業開拓事業者の株式の取得等をする一定の事業活動を行う場合であって、その特別新事業開拓事業者の経営資源が、その一定の事業活動における高い生産性が見込まれる事業を行うこと又は新たな事業の開拓を行うことに資するものであることその他の基準を満たすこと。

↑ かなりややこしいですねw 税法ってこんなもんですが、 要するに、
① 対象会社 or 対象会社のCVCが対象  ✖️いわゆる普通のVC
② 第3者割り当て増資が前提 ✖️既存株主からの取得
③ 1億円以上払ってね でも上限はあるよ
④ 謎。。。。   詳細は法案通った後
さらにいうと
⑤ 設立後10年未満(すでに事業を開始していること)
⑥ 経済産業大臣の証明が必要

<どんな税メリットが?>

特定株式の取得価額の最大25%が損金算入できる

<補足>

○損金参入するためには、特別勘定として経理することが必要
○一定要件に該当した場合には、特別勘定を振り戻して益金参入しなければならない

<感想>

○ 要件がややこしい 特に上記④と経産大臣の証明
○ 25%はちょっとインパクト薄い 
税率30%と仮定すると、税に与える影響は、0.25×0.3=0.075=7.5% 仮に1億円出資した場合、750万円の減税。
○ 税額控除ではなく課税の繰延なので、結局は課税される。

という感じで、このままだとそんなに利用されるのかなあ、と思ってしまいますが、「オープンイノベーション」という言葉で所得控除の法律ができるということは初めて。まずは第一歩ということで、大企業側・スタートアップ側の両サイドからこの制度を活用できるように取り組んでみたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?