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ソーシャル坊主起業奮闘記 #5 「社名やロゴの誕生秘話」

このnoteでは、ビジネス経験のない僧侶たちが新電力会社の起業に至った物語や、いまなお悪戦苦闘し続けている様子を、取締役・霍野の視点で赤裸々に告白します。

今回は、「起業はやめといた方がいいんちゃう」と言われたにもかかわらず、立ち止まることなく起業に向けて準備を進め、社名やロゴ、パンフレットなどを制作する話を書き進めます。

デザイナーの選定基準

「起業は止めた方がええんちゃう」と信頼する税理士にお勧めされ、「起業メンバー抜けるなら今やで」と尊敬する社会起業家に助言されたにも関わらず、怖いもの知らずのノリと勢いで立ち止まることなく起業の準備は進みます。

まず、手をつけたのは、ホームページやパンフレットを中心としたデザイン制作。まだ会社の名前すら決まっていないのに…。

信頼する知人に「ソーシャルグッドな新電力をつくるんですけど、オススメのデザイナーさんを紹介してください」と唐突に聞いてまわり、何人かピックアップ。代表の竹本(以下、たけさん)は、「これまでの実績よりも、僕たちの想いを聞いてもらって、そこに熱く共感してくれる人と一緒に仕事がしたいな」ということで、3人のデザイナーの方々とお会いして話を聞いてもらうように調整を進めます。

最初にお会いしたのが、京都に事務所を構え、実績豊富なサノワタルさん。京都の美味しいお店をよく知ってるデザイナー。

サノさんとは、有志の僧侶仲間と取り組んでいる、いのちの問題に向き合う宗教者の行進「LifeWalk」のフライヤーなどの製作でここ3年ほどお世話になっていました。

まだ妄想の域を出ない状態の事業構想にも関わらず、サノさんは「お坊さんが新電力会社?!すごいチャレンジですね。ワクワクドキドキヒリヒリするな」と嬉しそうに話を聞いてくれます。さらに、「だけど、新電力ってまだ胡散臭いイメージがあるじゃないですか。なにかよく分からない。うちの事務所にも営業きましたけど、なんとなくヤダなと思ってお断りしたことある。ネガティブなイメージを壊しながら信頼感をいかにつくっていけるのか。ここらへんが大切そうだし、大変そうですね」と、僕らも懸念していることを率直にフィードバックしてくれます。

さらに、同席してくれていたアシスタントの長村マリンさんも「お坊さんたちがやっているのが大きな特徴だから、仏教の教えをモチーフにしたビジュアルをつくれると良いかもしれないですね」とコメント。「うん、良いね。だけど、あまりに仏教感が強すぎると、拒否する人も出てくるだろうし、生活インフラを担う電力会社として信頼してもらえないかもね。ただでさえ、新電力会社へのネガティブなイメージもあるし」とサノさん。「うーん、バランスが難しいいい…」とマリンさん。「だけど、なんだか良いものつくれそうな気がする」とサノさん。そんなやりとりを微笑ましく見つめるたけさん。一通り事業の話を終えると、たけさんとサノさんが同世代トークで盛り上がり、あっという間に1時間ほどの打合せが終了。

お二人をお見送りした直後、たけさんが「よし、サノさんにお願いしよう!」……えぇえぇえぇー。3人のデザイナーと面談して話を聞いてもらおう。それぞれの意見を聞くなかで僕たちも気づけていない可能性やリスクも見えてくるかも。色んな視点でコメントをもらうことは大切だね。って、ついさっきまで話してたのに。デザイナーの方々とそれぞれお会いする日程も決めていたのに…。なんと即決。

「だって、僕たち素人には、プロを並べて比較して、最終判断するデザインの軸なんてもってないよ。それなら、この人と仕事したいって感じる方と一緒にやりたい。サノさんと一緒に仕事やってみたいじゃん!」

「一緒に仕事してみたい」と思った理由を詳しく聞いてみると、アシスタントのマリンさんとの関係性に強く共感したらしい。上司であるサノさんが一方的に指示するのではなく、マリンさんも率直に感じたことや考えをフィードバックし、サノさんもそのコメントに賛同したり、違和感のあることはお互いに話している様子をみて、対等に働いてる関係性に惹かれたらしい。サノさんの実績や提案だけでなく、スタッフとの関係性を一番の決め手にしたのはたけさんらしいなと思い、僕も妙に納得。

サノさんに「僕たちの新電力会社のデザイナーをお願いします!」と連絡をいれると「あれっ、他の候補の方もいたんじゃなかったでしたっけ(笑)。もちろん、ご一緒できるのは嬉しいです。宜しくお願いします」と快諾してもらい、デザイナーが決定しました。

3つの由来から生まれた社名

先ずは、社名の決定を急ぎ、そのあとロゴをつくることになりました。サノさんにも入ってもらいながら、起業メンバーで社名のディスカッション。

ブッダでんき
ぼうずでんき
ブッダライト
回向電気
アミダパワー
ファンドレイジングエナジー
寄付でんき
ピュアシステム
十方でんき
TERAsystem
てらライト
ヒマラヤ電気
護法社
後光でんき

こうしてみると、同業のお坊さんから怒られそうな名前も多い…(笑)。このほかにも色々と候補があがるなかで、最終的に決定したのが「TERA Energy」。

TERA EnergyのTERAには、3つの意味があります。

①「お寺」の「テラ」
②単位を表す「terabyte」(テラバイト)の「テラ」
③ラテン語で地球を意味する「terra」の「テラ」

お寺の僧侶たちが、地球のことを想いながら、広く事業を展開する。僕たちの特徴やコンセプトを示すもので響きも良い。みんなが納得して「TERA Energy」に決定しました。ちなみに、僕は最後まで「ブッタでんき」がイチオシでしたが(笑)。

この数ヶ月後、お坊さんたちが新電力会社を起業するとメディアに報道されて大炎上して多くの批判を浴びることになるんですが、唯一、この「TERA Energy」という社名だけは、何故か不思議と、とっても好印象でした。ブッタでんきにしなくて良かった(笑)。

ロゴに込めた想い

社名が決まり、次に取り組んだのはロゴの制作。ホームページやパンフレットをつくるにしても、雰囲気やメインカラーを決めないといけない。そのためにも汎用性のある会社の顔ともなるロゴからつくることに。

サノさんは、改めて、僕たちがTERA Energy に込める想いや夢、この事業がどう仏教と関連するのかなどについて、じっくりと耳を傾けてくれます。その後、仏教をモチーフとした二つの案が送られてきました。

一つは、電球のなかで仏教のシンボルである蓮の花が光っているもの。世の中を明るく照らすコンセプトも感じられるし、電力会社っぽいし、仏教の匂いも感じられる、柔らかく、優しいデザイン。

もう一つは、尻尾がコンセントになっている白いゾウ。とってもチャーミング。白いゾウは、東南アジアで神聖なものとされ、お釈迦さまのお母さんは白いゾウの夢を見たときにお釈迦さまを妊娠したという言われます。

「おぉー、どっちもめっちゃいい!」と狂喜乱舞。どちらにするか意見が分かれるなかで、より僕たちのコンセプトや想いを説明しやすい蓮電球に決定。ちなみに、僕は最後まで白いゾウを推してましたが(笑)。

より丁寧に仏教的な意味づけをして、いまはこんなふうにロゴを説明しています。

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ちょっと小難しいですが、要するに、「世界を明るくあたたかな光で包みたい」との願いです。

後日談ですが、女性の社員が入社し、たまたま白いゾウのデータを見つけて「この白いゾウ、めっちゃカワイイじゃないですか。シールにしてパソコンに貼りたい」とメロメロに。「テラゾウ」と名付け、インスタグラムのストーリーで「でんき予報」を開始。毎日、電力市場の価格をお知らせしてくれています。白ゾウの活躍の場があって良かった!

電力を手段に成し遂げたいこと

次に、ホームページやパンフレットを制作していくために、訴求ポイントを議論。仏教やお坊さん感を前面に出していくのか。それとも、寄付つき電気という社会性を強調するのか。あるいは、再生可能エネルギーにこだわり、環境問題への貢献を訴えるのか。そもそも、届けたいお客さんは誰なのか。お寺や僧侶だけなのか。お檀家さん、ご門徒さんへのアプローチはどうする。仏教やお寺に関わりのない人には届けなくて良いのか。新電力への不信感もあるなかで、どうやったら信頼してもらえるのか。

ビジネス素人の僧侶が集まってあれこれ考えても、良い答えが見つかるはずもなく…。そうだ、プロモーションに強そうな異業種の大手企業も新電力事業に続々と参入している。相当の金額をだして、マーケティングや顧客心理をリサーチしているはず。リスペクトして、真似しよう!

それから街やショッピングセンターを歩き回り、他社のパンフレットを集めまくりました。机に並べ比較してみると、色合いや雰囲気に違いはあれど、掲載されている情報には大きな違いがないことに気づきます。「大手電力よりも安くて、切替えは簡単」。結局は価格なのだな、と痛感しました。

だけど僕たちは、寄付つきの仕組みや再生可能エネルギーを広めたいがために、周囲に心配されながらも、こうして起業に踏み切ったわけです。誤解を恐れずにいうと、僕たちは、別に電気を売りたいわけじゃない。電力事業を手段に「社会的な活動にお金が回る仕組みをつくりたい」「気候変動の問題が少しでも改善されるためにアクションしたい」。そんな想いに立ち返りながらパンフレットやホームページの制作に取りかかります。

最初に完成したパンフレットは、お寺への営業に特化したものでした。

最初の半年間は、ひたすらお寺を回り事業について説明したりフィードバックをもらう日々。その後、お寺とは関係ない方々が、寄付つき電気の社会性や、再生可能エネルギーの割合の多い環境性に賛同してくださり、事業の輪が拡がっていきます。

ホームページは、新しくWEBデザイナーやイラストレーターにも協力いただき、今年の5月にリニューアル。まだまだ改善すべきところはあるけれど、僕たちの想いや雰囲気が伝わるものになっていますので、是非ご覧ください。

次回は、予期せぬ形でマスコミに取り上げられ、起業しただけで大炎上してしまった話を書き進めます。

霍野 廣由(つるの こうゆう)
1987年福岡県生まれ。浄土真宗本願寺派覚円寺(福岡県)副住職。龍谷大学実践真宗学研究科在学時に、自死・自殺や終末医療、高齢者福祉の活動に携わるとともに、寺院活動を研究する。大学院を修了し、認定NPO法人京都自死・自殺相談センターに就職し、現在は事務局長を務める。2018年、ソーシャルグッドな新電力会社、TERA Energy株式会社を立ち上げる。相愛大学非常勤講師、浄土真宗本願寺派子ども・若者ご縁づくり推進委員など。

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テラエナジーでんきのWebサイトはこちら
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