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ソーシャル坊主起業奮闘記 #1 「ビジネス知らない僧侶が起業してしまった事の発端の話 」

こんにちは、霍野廣由(つるのこうゆう)です。僕(こうゆう)は、福岡県と大分県の県境にある田園風景広がる田舎町の覚円寺(かくえんじ)に生まれました。小中高とサッカーに明け暮れ、大学進学で京都へ。大学時代は毎日のように深夜まで焼肉屋のバイトに勤しんでいましたが、些細なきっかけで自死・自殺の相談機関でボランティアをはじめました。その後、終末医療や高齢者福祉の活動に関わったり、死についてカジュアルに語らう「デスカフェ」を僧侶の仲間たちと主催しています。

エネルギーや環境の問題と1ミリも接点のなかった僕ですが、2018年春、TERA Energyの起業に携わりました。このnoteでは、ビジネス経験のない僧侶たちが新電力会社の起業に至った物語や、いまなお悪戦苦闘し続けている様子を、取締役・霍野の視点で赤裸々に告白します。

今回は、僕たちが電力事業と出会った事の発端についてお話しします。

「Sottoに寄付が集まる方法を思いついた、電気だわ!」

テラエナジーの社長である竹本(以下、たけさん)と僕は、認定NPO法人京都自死・自殺相談センターSottoで設立当初より一緒に活動してきました。

Sottoは、自死・自殺の相談機関で、今年10年目を迎えます。死にたいほどの苦悩を抱える方の電話やメールでの相談窓口、死にたい想いを抱えている人たちが実際に集まってこれまでの苦労や死にたいときをやり過ごす方法などをシェアする居場所づくりなどの活動を行っています。相談件数も着実に増え、活動も多岐にわたっていますが、お金の面で大きな課題を抱えています。このままだとあと3年で資金がつきてしまう。ファンドレイジングを学び資金調達を試みるものの結果がついてこない。解散も視野にいれなければならない、ということを議論して矢先、たけさんから「寄付が集まる方法を思いついた、電気だわ!」とのLINEが入りました。

長年、一緒に活動するなかで、数日すれば忘れているような突拍子の思いつきは多々あったので「時間の無駄になるな」と思い、見て見ぬフリしました。しかし数日して、「電気のことで相談したいからちょっと時間をちょうだい」と電話が入り、しぶしぶ話を聞くことになりました。

事の発端は、環境と仏教というニッチな研究会

たけ「こうゆう、いま住んでるマンションの電気会社はどこ?」

こうゆう「関電だと思います」

たけ「電気会社って選べるようになったって知ってる?」

こうゆう「楽天とかソフトバンクも電気やってますね」

たけ「そう、どんな事業者でも電力市場に参入できるようになったのね。いまでは新電気会社は700社を超えてるらしい」

こうゆう「へぇー、そんなにあるんですね」

たけ「だけど、ほとんどの会社がそれほど事業がうまくいってるわけじゃない。成功するために必要なことってなんだと思う?」

こうゆう「電気代の安さっすか。(ビジネスのこと素人のくせに、めっちゃ知ってる感があやしい)」

たけ「ステークホルダーの規模なんだよ」

こうゆう「???」

たけ「楽天とかソフトバンクは、オンラインショッピングや携帯キャリアで既に顧客がいるよね。その顧客に対して電気も販売するってのが大事。既に顧客やネットワークを持っていることが重要なんだって」

こうゆう「ふむ。そういえば、僕、このまえソフトバンクのショップで携帯の機種変したんですけど、電気もソフトバンクに切り替えたら携帯代が少し安くなる的なこと言ってました。たいした金額じゃなかったし、面倒だったので変えませんでしたけど」

たけ「僕はこのまえ同じ手口でauでんきに変えた(笑)。そうやってコミュニケーションをとる接点があるのが大事なわけ。僕たちもいけると思わない?」

こうゆう「笑っちゃうぐらい、ぜんぜん思わないっす」

たけ「なんでよ(笑)!お寺は全国に7万あるって言われてるやん。浄土真宗だけでも1万。しかも、檀家さんもあわせたらものすごい数。この数の規模が仏教界の強みだと思うんだけどな」

こうゆう「確かに数はあるけど、お寺が金儲けとか、逆にお寺の信用を傷つけることになると思いますよ」

たけ「僕たちやお寺の金儲けが目的じゃなくて、お金が循環する仕組みをつくりたいんだよ」

こうゆう「???」

たけ「ドイツでは電気・ガス・水道などのインフラを地域の事業者が提供するシュタットベルケという取り組みが盛んなんだって。インフラ事業で生まれた収益をまちづくりとか地域の人が喜ぶサービスに還元してるの。

こうゆう「イメージわかないです」

たけ「例えば、ドイツの田舎で路線バスが赤字で、何年も廃止になってる地域があって。そこはご年配の方が多く、高齢で免許書かえして車も乗れず移動手段がなくて困ってた」

こうゆう「僕の実家も同じです。いまは町が無料の乗合バスを走らせてます」

たけ「その地域は行政に金銭的な余裕がなくサービスを提供できない。それを見かねた地域の普通のおっちゃんとおばちゃんが立ち上がって電力会社を起業する。収益を路線バスの復活につかって、今では無料でバスを走らせることができてるんだって」

こうゆう「なんなんすか、それ!めっちゃ理想的なじゃないですか!」

たけ「そんな事例を真似て、電気代の一部をSottoとか、お金に困っているNPOとかの団体に寄付する「寄付つき電気」ってできないかなと思ってて」

こうゆう「ほぅ、なるほど」

たけ「おっ、ちょっと顔がノってきたね(笑)。なんとなくやりたいことのイメージできた?」

こうゆう「なんとなく。にしても、どこでそんなこと知ったんですか?エネルギーとか電気とか興味ないでしょう?!」

たけ「このまえ環境と仏教の研究会に出てて。あんまり興味なかったから寝てしまってたんだけど…」

こうゆう「寝てたんすね(笑)。たけさんが環境に気を使っていること、1ミリも感じたことない」

たけ「なにかできれば!とは思うけど、何をして良いのか分からないよね、環境のことって」

こうゆう「よく分かります。スケールが大き過ぎて、想像力が追いつかないです」

たけ「その研究会で、電力自由化について教えてくれてて。シュタットベルケの事例の話をしてくれているときに目が覚めて、これだ!ってひらめいちゃったんだよ」

こうゆう「寝てたのに(笑)」

たけ「睡眠学習だよ(笑)。講師の人に終わってから電力自由化のことについてめっちゃ質問したの。そしたら、日本でも幾つか事例があるみたいで、そこの社長さんを紹介してくれるってなったんだよ。だから、一緒に行こうよ。こうゆう、好きでしょう、こういう話」

日本版シュタットベルケの実例を聞きにいくことに…

たけさんは、テラエナジーを始めるまで西本願寺の総合研究所(いわばシンクタンク)の研究員をしていて、そこで同僚の本多(後にテラエナジーの共同出資者)が主催していたのが環境と仏教の研究会。そこで、環境NGO 気候ネットワークの豊田さんに気候変動の概要や、電力自由化の実例をレクチャーしてもらったのが、事の発端。

その後、ドイツのシュタットベルケを参考に福岡県みやま市で事業をやっているみやまパワーHD株式会社の磯部社長とお会いしのたが、2018年3月中頃。みやま市での事業を伺い、お寺の可能性を語ってくれる磯部さんの話を聞き、心踊ってしまう。その後、周囲に「やめとけ、やめるなら今やで!」と強烈に反対されながらも起業まで突き進んでしまい、NHKの報道で大炎上することになろうとは、この時は知る由もない。

次回は、磯部さんとお会いして、自分たちの実力を勘違いしてしまい、起業の準備をはじめてしまう話を書き進めます。


霍野 廣由(つるの こうゆう)
1987年福岡県生まれ。浄土真宗本願寺派覚円寺(福岡県)副住職。龍谷大学実践真宗学研究科在学時に、自死・自殺や終末医療、高齢者福祉の活動に携わるとともに、寺院活動を研究する。大学院を修了し、認定NPO法人京都自死・自殺相談センターに就職し、現在は事務局長を務める。2018年、ソーシャルグッドな新電力会社、TERA Energy株式会社を立ち上げる。相愛大学非常勤講師、浄土真宗本願寺派子ども・若者ご縁づくり推進委員など。

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