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生花教室


日本には移り変わる四季があり、
花はその季節の移り変わりを教えてくれる。

生命力に溢れる花たち。

疲れた心をリフレッシュされてくれ、
ポッと心を温めてさえくれる。

私に花の魅力を教えてくれたのはおばあちゃん。

今回は、おばあちゃんが大切にしていたお花への思いを綴る物語。

おばあちゃんは週に1回、お花の先生を家に招き、仲の良い友達と一緒に生花教室を楽しんでいた。


「ただいまー!」

学校から帰ってくると、いつもおばあちゃんが出迎えてくれるはずなのに、今日は返事がない。


鍵は空いているのにおかしいなあー。
と思いおじいちゃんの仕事場へ向かうと
賑やかな話し声が聞こえてきた。

我が家はおじいちゃんが自営業をしていたので、事務車の上のフロアが生花教室の会場となっていた。

賑やかな声が響く。

生花教室の開かれている扉を開けると、おばあちゃんが笑顔で迎えてくれた。

「おかえりなさい。
 早かったねぇ〜。
 もう少ししたら終わるから、
 下でおやつ食べて待っとってねぇ。」

おばあちゃんの顔を見た私は、ホッと一安心。

おやつを食べてのんびりしていると、トットットッ、と階段を下りる足音が聞こえてくる。
生花教室を終えたおばあちゃんが帰ってきた。

「話し込んでしまって、
 長くなってしまったわぁ〜。」

話好きのおばあちゃん。
教室が長引くのは珍しくない。

食器洗いや料理の下ごしらえなど、軽く家事を終えると、また階段を上がったいくおばあちゃん。

もう生花教室は終わったはずなのに。
不思議に思い事務所の上の階を覗きにいくと、おばあちゃんは生花教室の片付けをしていた。

ソッと部屋に入り、おばあちゃんの作品を眺めていると

「お花はいいでぇ〜。
 春も夏も秋も冬も、
 いろんな花が咲くけんなぁ。」

「お母さん(おばあちゃん)は、
 お花の話好きだね。」

おばあちゃんの作品に目を残し、ふんわりと言葉が耳に流れ込んでくる。

「毎日忙しくて、
 時間が経つのを忘れてしまうけど。
 公園に咲いてる花や
 花屋さんに並ぶ花を見ると、
 季節を教えてくれるけんなぁ。」

桜やチューリップ、ツツジを見て春を感じ、
向日葵やアサガオ、ノウゼンカズラで夏を知る。

ダリアにコスモス、キンモクセイが秋を呼び、
シクラメンにスイセンは、冬の便りに。

おばあちゃんの教えは、今の私の生活に生きている。

あの頃は実感がわかなかったけど、子育てや仕事に追われる日々の中で、花に季節の移り変わりを教えてもらっている。


そして、季節と一緒に、あの頃のおばあちゃんの笑顔を連れてきてくれる。


 

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