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森見登美彦さん『夜は短し歩けよ乙女』を読んで

電車やバスでの移動中に読破したのだが、
読んでる私の顔は間違いなく変な顔をしてた。
おかげで恥ずかしかったぜ。
でもこの本に出会えてよかった。

感想に何を書けばよいのか分からないが、
私が表現するならこれは大人のラノベである。

些か頭の固い平平凡凡な男子大学生が、
不思議で純情で強運で好奇心旺盛で行動力Maxな
「黒髪の乙女」に恋をしてひたすらに追いかける。

二人を取り巻くのは
奇想天外で予測不可能な愉快な仲間?達。
果たして『私』こと先輩の恋の行方は…。

ほらラノベじゃん。
中高生の時に見たラノベだ!
それぐらい設定モリモリな話でした。

しかしながらだ、
落ち着いた大人の小説ではなく、
勢いこそが面白さのラノベでもない、
この本ならではの魅力が出ているのがすごくいい。

まず目を引くのが文体。
語り手の先輩と黒髪の乙女が恐らく京大生。
なんと独特で小難しい言い回しをするのだろう。
京大生に対して偏見ができるぐらい好き。
京大生に対して失礼だが、それがいい。
この二人が語り手だからこそ、
名言がたくさん生まれる生まれる。

語り手の二人だけでなく、
出てくる登場人物らの癖が強い。
そして事件も起こる起こる。
ちょっとぐらいファンタジーでも構わないさ。
なんたって大人のラノベだからね。

ハチャメチャな登場人物と事件だが、
最後の最後でハッピーエンドになるのが
さらにラノベらしい。

個人的に好きなのが、
ハッピーエンドに導いたのが
ファンタジーなものではなく、
運命的な何かではなく、
「単純接触効果」というのがよかった。

あんなにファンタジーな乙女が、
現実的な恋愛の仕方に落ち着くってのがいいね。

この本は4章構成なのですが、
4章に入ったあたりから
「こんなに楽しいお話が終わってしまうのか」
という悲しみを背負いながら読みました。

読んでる途中からこの感想が出てくる本は、
自分の中で大切な本の証なんだろう。
また何年後かに読み返して、
数々の名言たちで笑いたいと思います。

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