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額賀澪さん『できない男』を読んで

額賀さん2冊目。
1冊目は児童書だったので、一般書籍だとこれが1冊目。
『タスキメシ』が有名だとは知ってたけど、『できない男』の私はこちらが読みたかった。

話のテンポがよく、とても読みやすかった。
ダブル主人公で3年間もの長い物語なのだが、これを280ページ以内に収めている。
限られた人数の登場人物をしっかりと活かす。
せりふも洗練されていて多すぎず少なすぎない。
展開に違和感が無く、ダレることもない。
とにかく読んでいて心地がよい作品。

場面の切り替えはズバッとやる。
一瞬だけど読者が状況を飲み込めない状態を作るがうまい。
「おやっ?」って思う瞬間があると集中力が高まる。
分からない状態は5行も続かず、すぐに種明かしされるので、安心して読める。

と、心地よさについて自分なりに考えてみたが、この本が「いい本だなぁ」と思ったところはそんなところではない。

この本は「できない2人の男が、できる男になっていくストーリー」です。
真面目でひたむきで良い人なんです。
でもできないこともたくさんある。
仕事ができない。格好つけることができない。恋愛もできない。結婚もできない。自分に自信がもてない。自分に正直にできない。挑戦できない。覚悟ができない。
たくさんの「できない」があった2人が、悩み苦しみ、最後には何か「できた」と達成感を味わいます。

小さい仕事から大きい仕事まで色々なものに携わり、知り合い・友人・上司や同僚からたくさんの生きるヒントをもらい、最後には何か決断を下せるようになる。
その過程は共感できるものがあるし、見習いたい部分もある。
だからこの本は読んでいておもしろかった。

私も「できない男」の1人です。
上に挙げたもの全部ができない訳では無いけど、自分のできていないものがあるし、人から言われるとグサッと刺された気持ちになる。
決断ができなくてウジウジしてしまうこともある。
チャンスを掴みに行くためのアクションも躊躇ってしまいがち。

南波さんの言っていた
・人生のクオリティを上げるチャンス〜
・他の誰かに取られちゃったり〜
・ああ、これは逃しちゃいけないチャンスなんだ〜
ということはすごくすごくよく分かる。

頭で分かっているだけじゃだめだ。
自分で自分の背中を蹴飛ばして前に進まないとだめだ。
行動したやつが世の中の良いもん全部持っていっちまう前に、俺も動き出せ!

って思わされるパワフルなストーリーが1番の魅力なんじゃないかと思います。

最後に、納得できない点がひとつ。
荘介とつぐみさん。
荘介と私で大切にしていることが違うから、あまりにも納得できなかった。
文句があるのではなくて、私と違いすぎて納得できない。

つぐみさんが不憫で仕方ない。

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