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放送後記 『ちゃぶ台のラジオ』 _vol.3



まさに「三度目の正直」

3回目の生放送。「お試し」としては最終回である。

ゲストには「駄菓子屋併設型デザイン事務所」ヤギサワベース 店主
兼 アートディレクターの中村晋也さんと「駄菓子屋女将」でジャズシンガーの顔を持つ麻美さんご夫婦をお迎え。

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緊急事態宣言が蔓延防止に緩和されたため、ブース4名入室可能に。
というわけでツッチーPも横から冷やかしにかかる。

超いい人だしシゴトでもご一緒してるし結構ちゃんと準備もしたし、気楽にできる!... はずだった。

しかし(過去2度の放送オープニングはいずれも失敗)「もう失敗できない」そう思うと込み上げるプレッシャーが半端ない...
5秒前から心拍数が上がる上がる(!)

ともあれちゃんとかかった [Could You Be Loved / Bob Marley]
あとで聞いてみると声からしてガチガチなのがよく分かるけどw、
とにかく曲紹介まで切り抜けた。(後ろからPの拍手が聞こえるw)

番組ミキサー・かっか君が主宰する FTZ records 所属のアーティストの新曲
Kinail × Som  「My Wave」

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残り2曲も先に言っておくとゲスト持ち込みのオリジナル曲(流通なし)。
というのもあるから(BGM も好み基準でありながら大事にしてるから)この回からプレイリストを公開しようと思う。


未来に続く駄菓子屋

曲明け、やっと(先月の放送には間に合わず...)僕の新名刺を渡せました。


あらためてゲストのご紹介。

中村 晋也
1974年東京生。西東京市在住。漫画家への道を探る口実として多摩美術大学芸術学科に入学。在学中はマンガ研究会に所属。プロを目指すがあと一歩のところで断念(受賞歴/担当編集が付いた時期もアリ)。卒業後はア ニメ制作会社を経て、株式会社東北新社 にてCM制作に携わる。その後活動の場を紙媒体に移し、株式会社日本形色にて グラフィックデザイン業務に従事。2002年、当時の先輩とともに有限会社NKグラフィコを設立。
まんが「三丁目の夕日」(西岸良平) の茶川龍之介に憧れ、西東京市に駄菓子屋併設型デザイン事務所『ヤギサワベース』を2016年4月にオープン。 地域に根差したデザイン事務所、未来に続く駄菓子屋を目指して探求の日々は続く。

そもそも駄菓子屋を始めたのは... 特に平成以降は減少の一途で、もともと老後とか(?)に開いてみついと考えていたものが、大幅前倒しでの実現。
東日本大震災で帰宅難民になった際、地域の人たちにものすごくお世話になったことが、地元に「場所」を持ちたいと思うに至ったキッカケだそう。

駄菓子屋とデザインの仕事。一見つながりのないような「二つ」の融合を放送内で見出せるのか?そこが一番の懸念点だった(最悪結びつかなくても良いのだけど...)のだが、興味深い「なるほど」があった。

10円単位で物を売る儲からない職業と、そうではない職業をくっつけることで、続けられる仕組みを作り出す先駆事例になりたいと語られていて、現に活路を見出しつつある。

儲からない職業代表のような駄菓子屋というのは、茶川龍之介もそうだったように、持ち家での開業がほとんど。ところがデザインという『柱』(儲かる仕事とは言い難いが仕事として成り立つ)を持つ中村さんにとっては、今どき「わざわざ家賃を払って」駄菓子屋をやっている事実自体が、レアキャラ作りに一役買っている「売り文句」だったりする。

さらに「入口」という意味では存在自体がキャッチーな駄菓子屋そのものがデザインの敷居を低くすることにも繋がっている。

地域の子供の思い。... そして「女将」の登場。

正直「駄菓子屋を甘くみていた...w」と話す中村さん。時にエグい締切に追われるデザイン仕事ゆえに「今日は店閉めてもしょうがないな...」なんて日がたびたびあったという。

しかし心弾ませ駄菓子屋に集う子供たちにとってそんなことは関係ない。
入稿直前の昼下がり。突然のシャッターを叩く音「今日も休みかよ!?」「おい、中に人いるぞ!」等々... 騒がしい子供たちからのプレッシャー。

当時会社員だった妻・麻美さんにメールが入る。

「助けてくれ」
「俺は借金取りにでも追われてるみたいだ...(苦笑)」

そんな経緯もあって「子供たちに実は失礼なことをしているな...」と猛省。
駄菓子屋のことをもっと真剣に考えようと夫婦で話して麻美さんは退職し、普段のデザインや雑務を手伝いつつ、駄菓子屋の『女将』の称号(そう自称されてましたw)を手にすることに。

ちなみに今は女将は駄菓子屋を手伝いつつ「まちテナ西東京」にも勤務中。

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(「アキヤラボ」の中村さんのインタビューページにも詳しくあり〼)

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持ち込みはオリジナル楽曲

そして持込楽曲はオリジナル2曲
「駄菓子屋ブギウギ」

柳沢楽太郎一座 デビュー曲 『駄菓子屋ブギウギ』

Posted by ヤギサワベース on Saturday, March 10, 2018

もともと麻美さんはジャズシンガー。「地域密着のバンド活動がしたい」と思うように。中村さんがデザイン仕事を通じて商店街の方との接点が増えるにつれ、眼鏡屋さんはベース、珈琲屋さんはギターと作曲、中小企業診断士のドラムとメンバーが増え、作詞は麻美さんが詞を書き『柳沢楽太郎一座』の結成と相成った。

「一発狙えチョコバット」と歌詞にあることから、三立製菓の公認(許可)を取っているとのそう。

順番が前後しちゃうのだけど、もう一つの持込曲も。
②「梅の花ブルース」(4:20 頃から)

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(フル音源なく悪しからず...)こちらは元祖「梅ジャム」生産中止となったこと(転売ヤーが出たり...)を受け、好きな人がいなくなってしまった悲しさに擬えて歌ったブルースで、梅の花本舗より公式ソング認定もいただいているのだそう。

※ データ不備だったのか... 意図せずして音飛びのようなノイズ音が入ってしまいました。「駄菓子屋」のテーマでもあるのでもあるせいか、一部「雰囲気があって良い」という声も聞かれたということで良しとします。

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懸念点であると同時に大切なこと

いくつか駄菓子屋ならではの面白エピソードもあった(聞き逃した人はぜひ「ヤギサワベース」行ってお話聞いてみてください)。当日の放送前には「駄菓子屋トークに終始しすぎたら...」という懸念は前述のとおり。

『じゃあデザインの話そうか?』となるのが自然だが、終始駄菓子トーク...それはそれで良いのではないかと話しながら思えてきた。

雑談に「下町の少人数の駄菓子屋工場」「きなこ棒の当たりが出すぎて問い合わせたら消費者センターの電話担当者が詰めた箱だった」「茶川龍之介さながらのハズレくじ量産」などの話が。笑いがあるのも当然良いのだけどそれ以上に、工場の話ついでに「《こうじょう》の絵ならいけるクチだよ」「どういう伝え方があるかな?」等々、それぞれ考えてしまっていた。

誰しも安易に「自分の業界にデザインは関係ない」と考えがちだが、どの業界であれ確かに課題はあって、それを解決に向かわしめる方向付けをできるのが「ディレクター」であって、具体的に「見える化」する手段や経験を持っているのがデザイナーやイラストレーターだったりする訳だが、見えない段階からそうやって考えてたりする訓練や経験を持っている。

そして悲しいほどにそれが世間には知られていない。

クライアント(になり得る全ての人)自身が自覚していない課題を引っ張り出すのなら、一見どうでも良いように映る雑談の方が断然良かったする。

番組内に『ちゃぶ台相談室』のコンセプトと同じ視点を見た瞬間だったし、「たぶんヤギサワベースのコンセプトとも同じ」とも言ってもらえた。
(さらに僭越ながら僕の絵に中村さんから「商業だと効率優先になりがちな中での非効率」「変人の域」とのお褒めの言葉をいただきましたw)

街にひとりいれば...

「相談室」とは言うものの、実際はアパートの余った一室でしかない。
やはり場所があるというのは強い。しかも駄菓子を通じて人が集まってくるのだから。なにもデザインに限った話ではなくて「街に相談できる人がいれば解決できることは多い」と、加えて「結構早くに天井が見えてしまった」中村さんは言う。

ただそれも「生き方」の問題でもあって...「限界」が見えてしまったような者はたぶんたくさんいて、でもその時にどうやって前に進むか?

別に難しく考えなくても、楽しく「一緒に作れる人」「相談しやすい環境」を手にすることができれば、300も400も作れちゃう優秀な奴がいる中で自分は200、あるいは150くらいまでしか表現できなかったとしても、たぶん自分の方が距離感としては近いと思えるし、そういう生き方もある。
無理なこと、苦手なことは信頼できる人にお願いすれば良いわけで。
そういう見極める目だけは自信があると言って良い。

(ツッチーP)「中村さんに発注する人というのは誰なの?」
(※とても良い質問です)

地域の人や街の経営者が多い(つまり「課題」「目的」がある人は誰でも発注者になる可能性がある、ということ)
→ 案件的には「集客のための」なにかを求められることが多い。
→ 実際「誰にでも伝わるように」的発注もあるが、そこは丁寧に説明。
  『誰に向けて?』『何を達成したいのですか?』

(ツッチーP)「聞くのが怖い感がある」
→ 確かに専門職に聞くのってなんか怖い。その敷居を低くするためにどうするか?「駄菓子屋」もその一助となっている。
(※「ちゃぶ台」も、そういった意図ですのでどうぞお知り置きを!)

【選書】今さらながらの...

放送中で長く(それでも頑張って端折ったけど...)喋ってしまったけど見てもらった方が早い。つまりそれだけ視覚の情報量は多いということ。

「地域で仕事をしてて大概そういうこと(そもそも何のために作るかが見えてなかったりする)が多い。経営者や決裁権のある立場の人にこそ勉強になるかもしれない。」(中村さん談)→ 僕もそう思います。


手応えを感じつつあり☆

「梅の花ブルース」でしっとりしたところでエンディング。
あっという間。雑な質問にも「楽しかったです」のご回答で何より。
『料理人と農家の喩え』なんかも少しは伝わったのではないかと思う。

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プチ告知)
お馴染みの『CLUB くるめラ MAGAZINE』がリニューアル。
この号から表紙のデザインを担当になりました。次号からは撮影のディレクションにも参入。地域のクリエイティブディレクターを目指して。


局名も『TOKYO854』へと変わり、次回はいよいよ本放送スタート!
第三月曜日・21:00 〜 お引っ越し。そうです「ゲツク」です!

『ちゃぶ台のラジオ』 〜 みんなのデザイン
7/19(月) 21:00 〜  (生放送でいきなりのビッグゲスト!)
ゲスト:小熊千佳子(アートディレクター・グラフィックデザイナー)さん


サポートいただけたらさらに嬉しいです。実製作も含めた更なる発信に活かしたいと思います。