ume,yamazoeで一周回って不幸になった話
奈良県にある山添村って知ってますか?
奈良に住む人なら名前は知ってますよね。奈良にゆかりのない人は多分知らないですよね。サウナ好きな人はもしかしたら知ってるかもしれませんね。
で、山添村ってどんなとこ?ってなって検索してみたらちゃんとしたHPあってすごく好印象だった。このHPを参照して今度普通に遊びに行ってみたい。
この山添村に最近できた素晴らしい宿泊施設で不幸になった話をしたいと思う。多分読んだら不幸になるけど最後までお付き合いいただけると。
ちょっと不自由なホテル
そこのコンセプトが「ちょっと不自由なホテル」です。
どうでしょうか。香ばしい不幸の香りがしてきたのでは。
僕自身まだ宿の方には泊まったことがないので、今回はリンク貼ってさらっと紹介するくらいにしておくが、いくつかある部屋の一つを使わせて貰って、ひたすらに居心地が良い空間であったことはお伝えしておこうと思う。
自然にとって異物であるという感覚
奈良市から1時間ほど車を走らせると、そこに到着する。車を停め、外に出たらまず空気が違う。
少し湿り気のある空気の中に、森からなのか、そこらにある薪からなのかわからないが、確かに香る木の存在を感じることができる。なんとなく、下界からきた自分が自然の中で異質なモノであると囁かれているような感覚を受ける。
自分がここにとっての異物であることを認識させられながら、アプローチを進み、ガラス張りのイカした引き戸を開けると、壁をぶち抜いた広々とした空間が広がっていた。オーナーの梅守志歩さんが「どうぞー」と笑顔で出迎えてくれた。
古民家を活かした内装はカッコよくもあり、どこか懐かしさも感じる空間でここは直感的に「自分にとって好ましい空間である」と認識した。
何度も来ている友人が一緒だったので、挨拶もそこそこに簡単に説明を受けて用意に取り掛かる。
不幸のはじまり
空いている客室をまるっとかしてもらい、手渡された水着に着替え、まだ少し肌寒い4月の山村の空気を切りながら、不幸の城とでも言うべきこの日の目的地を目指す。
↑これが不幸の城
※全景の写真がなかったのでHPより拝借しました。
そうです。これは100℃近い超高温の空間と15℃前後の冷水に自らを交互にぶち込む装置。サウナと呼ばれるヤツです。
扉を開けると、
暗闇の中で薪をバクバク食べながら、燃え盛る地獄の炎の姿が。
中に入ると、志歩さんがサウナの温度管理をしながら、サウナの入り方(いわゆるととのい方)を分かりやすくレクチャーしてくれる。
入ってしばらくすると気付くのだが、サウナ特有の息苦しさがない。
理由を尋ねると、空気の通り道を緻密に考えて作っているため、温度を一定に保ちながら新鮮な空気が入ってくるようになっているとのこと。こういうディティールからサウナの奥深さとume,saunaのこだわりを感じる。
もちろんロウリュもできる。しかも地場の和紅茶を使ったロウリュアロマだという。どう考えても最高な気しかしない。
地獄の炎に熱された灼熱のサウナストーンに「本日の茶リュ」を2回、3回とぶち込むと「じゅ〜っ」と、最高にシズる音とともに広がる蒸気。それにやや遅れてほのかに香る和紅茶の香りに文字通り全身をひっ捕らえられる。
個人差はあるが、10分ほどすれば良い感じに蒸し焼きにされ、心拍数も上がってくるだろう。110-120ほどのペースになったら次のステップへ。
↓
熱々に熱された身体を冷水にドボンする儀式だ。
水風呂を嫌がる人も多い(かく言う僕も水風呂の存在を最近まで認めていなかった側の人間だ)が、サウナというのは、サウナ→水風呂→外気浴のルーティンがセットであり、これがないと成立しないのだ。
一度サウナに入ってしまったら余計なことは考えるのをやめて、言われた通り目の前の水風呂にドボンする以外の道はない。
汗を流してからいざドボン。
「冷たい、死ぬ!」となるのははじめの3秒だけだ。4秒すれば自分の体温で少し温まった水が身体の周りにまとわりついて、「冷たくて気持ちいい」状態になる。いわゆる”羽衣”と呼ばれるヤツだ。
1分ほどクールダウンしたらさっと上がって、ささっと身体を拭いて次のステップへ。
↓
サウナの上にあるこの”整いイス”を目指して、集中して、梯子を登る。垂直で、しかも濡れてると滑るので要注意だ。肝心なのは集中だ。垂直にずるずると滑り落ちて痛い思いをした人を知っている。
ここにたどり着いたらミッションコンプリート。
至高の整いはすぐそこにある。
ただただ森の香りに包まれ、草木の擦れ合う音と鳥のさえずりを聴く。熱によって高められた心拍と冷水によって引き締められた血管によって、内側から脈打つ自らの鼓動と、外側から肌をなでる風の調和を全身で感じる。
交代浴によって副交感神経が優位になりリラックスした状態でありながらも、サウナと水風呂という日常ではあり得ない外気の変化に晒された事によって、血中に分泌されたアドレナリンなどなどの快楽物質が全身を駆け巡っている(らしいよ)。
リラックスしながらも神経が冴え渡るこの感覚が、「ととのう」と形容されるそれだ。サウナはこのルーティンを2-3回繰り返してととのっていくのが本来の楽しみ方だ。
ume,saunaが普通のサウナと違うのは、それを自然の中で行うことで、本当に自然と一体化する感覚を得られるという点だろう。
真の不幸がここから先にあった
冒頭、車から降りた時の感覚が以下である。
なんとなく、下界からきた自分が自然の中で異質なモノであると遠くから囁かれているような感覚だ。
つい1時間ほど前まで、このような感覚に包まれていたのだが、いつの間にか自然と一体化する感覚になっている。ヒトというのは誠に都合よくできている。
異物だった自分が自然と一体化することの幸福を知ってしまった。これは、下界で生きる自分にとっては不幸と言えるかもしれない。こんな幸福の形を知ってしまったら、また下界からはるばると来ないわけにはいかなくなってしまう。「幸せのカタチを知るという不幸」がこの世には確かに存在する。
不幸はこれで終わりではない。
ルーティンを2回ほど繰り返したら、炭の匂いとともにこんなものが運ばれてくる。
ちょうど最高に心地よい時に、良い感じにお腹が空いてくるタイミングでこんなものを目の前に並べられてしまう。なんて罪な体験のデザインなのか…
気心知れた人間とプライベートサウナで整い、良い感じにお腹が空いたタイミングでBBQ…
こだわりの新鮮な食材を焼いて食べ、奥大和ビールを飲み、青空の下談笑する。志歩さんにumeを作るに至った経緯や、それぞれの場所がこのようにデザインされている理由を聞くことで、より一層この場所が好きになる。
お腹が満たされたら、最後にもう1ルーティンでとどめのととのい。
最後は、乾いた身体に冷えたお茶とリラクゼーションドリンクを注ぎ込んでお勤め終了。
「ヒトがもう一度、うまれ、めざめる場所になる」
ume,yamazoeが謳うように、まさに自然と一体化し、生まれ変わった気分だ。
サウナの作用も手伝い、五感が研ぎ澄まされたことで自然の息づかいをきちんと受け取ることができるようになる。まさに、「もう一度、うまれ、めざめる」場所だ。
日常に忙殺されて、心を失い、もちろん自然のことを考えることなどなかったこれまでの自分の生き方を問い直すきっかけになった気さえする。
戻って着替えて、実家に帰ったような気分にさせられるこの空間で志歩さんに色々と話を聞けた。ここに至るまでの経緯や事業への想い、街を盛り上げること、地域に根差すこと、良い体験をデザインすること、良いチームを作ること…
「来てくれたお客さんと色々と話をすることで、またここに来たいって思ってもらえるとありがたい」と言う志歩さんの思惑通り、まんまとumeのファンになってしまった。やはり、「コンテンツの魅力を作るのは人の魅力なんだ」ということを志歩さんの人柄から思い知らされたし、身が引き締まる思いがした。
誰かを連れてきたい場所というのはそう多くはないのだが、こうして、数少ないオススメしたい場所の一つにumeが加わることとなった。
「なんて恐ろしい場所に来てしまったんだ」と後悔してももう遅い。
一度知ってしまったら、また来るほかない。だから、興味がある人は声かけてください。一緒にいきましょう。
こんな不幸がこの世に、しかも来たこともなかった山添村にあったとは…
おそらく奈良にはまだまだたくさんこういう素晴らしい場所がある。アンテナを張って生きていれば、自分の中にこういう素晴らしい場所がひとつまたひとつと増えていくのだろう。
今度はしっかりがっつり泊まってみたいと思う。厚かましくリクエストしたコワーキングのサービスもぜひぜひ実現して欲しいなと切に願っている。
気になる方はぜひ行ってみて
興味が出た方はぜひ行ってみて欲しい。当たり前の話だが人気で忙しいため、予約は取りづらい。それでも、ぜひ。
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