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じーちゃんが死んだ

じーちゃんが死んだ。

72歳。肺がんだった。

タバコ、酒、釣り、アウトドア(ほぼサバイバル)
じーちゃんらしいじーちゃんだった。

そして何より、あんなに強い人間が死ぬことなんてないと思ってた。

ほぼ鉄人だった。

実際のところじーちゃんは今まで何度も死にかけた。
びっくりするぐらいデカい鯛の骨飲み込んで死にかけたり(摘出後アホみたいにご飯食べてた)
1回目の肺がんでほぼ肺無くなったり(数ヶ月後夜釣り行ってた)

それでも死ななかったじーちゃんだからこそ今回もまあまたどうせ生きてるんだろうと。

変化は急だった。

じーちゃんの家は実家の目の前。しかし僕は実家を出ていて毎日顔を見られるわけではなかった。
日々送られてくる家族からの連絡を見て状況を把握しているつもりだった。

たまにじーちゃんにLINEを送ってみる。
元気な時でも規格外の誤字を披露するじーちゃん、文面からはどれだけしんどいかは分からなかった。
しんどいくせに返事は決まって「大丈夫、また遊びにおいでや」
いつも通りだったから。
分からなかった。

「ちょっとヤバいかもね。」
両親からの連絡。
はっきり言ってヤバいとかそうゆうレベルじゃなかった。
「おぉ久しぶり。まだ生きとったんかいな!」
いつもの冗談を言っている場合じゃなかった。

死に際の意地

なんだかんだしているうちに病室も決まり、日が経つにつれていよいよその日の訪れを感じ始めていた。

「今夜が山じゃないですかね。」
いよいよだった。

じーちゃんには僕を含めて4人の孫がいる。
家族旅行をするときは決まって10人揃って旅行をしてきた。
しかしその晩、集まれたのはじーちゃん含め8人。
残り2人は早くても次の日の合流だった。

「しんどいと思うけど、あと1日だけ頑張ってくれ。」
その晩病院からの連絡は無く、次の日を迎えた。

じーちゃんが望んていたように家でみんなで集まることはできなかったけど、とりあえず10人全員集まってギリギリのじーちゃんといつも通りワイワイした。

帰り際じーちゃんは僕の手を強く握った。
「あとは頼んだぞ。」
孫の中で最年長の僕はその無言の意思を感じた。

その晩じーちゃんは死んだ。
誰にも死に際を見せることなく死んだ。
どこまでもシャイで強がりな人間だった。

最高に楽しかった2日間

死んだとなったら残された人間はまあ大変なもので。
葬式の段取りやら各所への連絡やら。
それぞれが動き交代で仮眠をとりながら。

迎えた葬儀の日。
葬式とは人生で最後に主役になる式だと思う。

だからこそ、悲しくても、寂しくても、最高の主役にしてあげる必要があると思った。

ありったけの写真をコルクボードに貼り付け、いつも着ていたライフジャケットを並べ、好きなお酒を並べ、タバコを並べ。
形あるじーちゃんと過ごせる最後の日だから。
みんなでじーちゃんの吸ってたタバコに火をつけて吸った。


「もっとお前らしょげろよ」
そんなことを言うじーちゃんじゃなかったから。
俺は分かってるから。
積極的にふざけて明るい式典にするよう努めた。

結果的に来てくれた全ての人が口を揃えて
「こんなお葬式は初めて、感動した。」
そう言ってくれた。

悲しい式典である反面、最後に主役になる式典だからこそ来てくれた人には特別な気持ちになって帰って欲しい。
これが僕のお葬式に対する考え方。

めちゃくちゃに大変な2日間だったけど最高に楽しい2日間にしてやった。

どれだけやっていても後悔は残るもの

僕はそれなりにじーちゃん孝行はしていたつもりだった。
2人で田舎に墓参りに行ったり、朝から酒飲んだじーちゃんに運転させられたり。

墓参り後の東尋坊

確かに生きてたらもっともっと一緒に食べたいものも行きたいとこもあった。
同じ境遇の経験のある方なら分かるかもしれません。
結局一緒にしたいことは尽きないものだから。

ただ、確実に言えることは
やれる時にやっとく、会える時に会っとく

また今度なんてないんです。
だから、会える時に会って、言える時にありがとうは伝えてください。
本当に死んでから考えても遅いです。

さいごに

最後まで読んでいただきありがとうございました。
大切な人を失って悲しい思いをしている方はたくさんいると思います。
僕は悲しいという感情だけでは亡くなった人も苦しいかと思います。
大切な人の死を受けて日常の大切さ、何事も当たり前じゃないということを気づくきっかけにして、故人の分まで人生を使い果たす糧にすべきだと思います。

そして大切なのは自分が死ぬときは同じように最高の主役にしてもらえるように周りの人を大切にすることです。

じーちゃん、お疲れ様でした。


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