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モルディブ滞在記2024夏~FIVB Coach Course Level-1を受講

2024年7月モルディブの滞在の目的は、
FIVBコーチコースレベル1の受講のためでした。
受講者50名程度、過半数が現地モルディブの人、その他インドから10名くらい、ホンコン、スリランカから一人ずつ。日本からは私だけ。


【なぜ受講しようと思ったのか?】

私がこの挑戦を決断したのは、個人的な特別な思いがあったからです。
コロナ禍の数年前から、私はいま求められるバレーボール指導の実際を模索している中、バレーボールに対する視野を広げようと、様々な情報収集に奔走していました。
また、日ごろから個人的な探究だとはいえ、バレーボールに関する情報発信をしている身でありながら、学閥やキャリア、トップレベルでの所属歴や実績等が一切ない自分にとって、少しでも人々にリアルな情報を届けるためにも、行動する必要がありました。

その中で、かつて新潟の南魚沼にあったFIVBバレーボールアカデミーで主任コーチをされていた故阪本肇先生が北海道に帰ってきていることを知り、連絡を取り合うようになりました。しかも私の勤務校の校区内にご自宅があることがわかり、部活動にも顔を出していただけるようになりました。何とも不思議なご縁です。そこから、FIVBコーチ資格をお持ちの日本のコーチの方々の出会いが広がっていきます。

ついには、阪本さんのご紹介で、1964年東京五輪の強化コーチをなされ、日本バレーボール協会常任理事や専務理事を歴任、FIVB(国際バレーボール連盟)の副会長、技術コーチ委員長、公認コーチ指導委員なども歴任された豊田博先生とも出会い、札幌にお越しいただいて講習会を開いたこともありました。

かつてFIVBのコーチ・コースは日本でも開催されていたそうです。当時、私はまだバレーボールの世界を理解していなかったので、新潟のFIVBバレーボールアカデミーでの日本のコーチ・コースは知らないうちに終わってしまいました。特にFIVBコーチコースについては、阪本さんと交流を深め札幌でいろいろご指導をいただいていた中で話題になり、当時から私も受講を勧められていました。そして、行くなら日本人があまりいないところ、語学に不安があるのならアジアなど英語を公用語にしている国でのコーチコースの受講をアドバイスされました。今回、南アジアのモルディブを選択したのは、そのような理由だからです。

あれから数年経ちましたが、ようやく豊田さんや阪本さんとの約束を果たすことができました。また、受講の申し込み等について要領を得ない私は、成田明彦先生や吉田誠司先生、FIVBコーチコースで長年活動されていた渡邉孝さんからのご助言もいただき、受講の手続きに入ることができました。同時に、現役のFIVBインストラクターである加藤敦志さんとも知り合い、何度もアドバイスをいただきながら受講に至りました。

様々なご尽力のおかげでモルディブ行きが実現しました。本当にありがとうございました。
今回、たくさんの情報や最新情報を得ることができました。これらの情報を必要としている方々にお伝えできるよう、今後も活動を続けていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
改めまして、モルディブでお世話になったすべての方々に感謝申し上げるとともに、今後とも末永くお付き合いいただければ幸いです。

【受講までのプロセス・手続き】

・JVA(日本バレーボール協会)からの推薦状を得る。
 (JSPOコーチ3以上をもっていることが条件)

・推薦状を、開催地バレーボール協会にメールで添付して申し込む。

・数日待って、開催地協会から、参加可否の結果通知が来る。
 参加できるとなった場合、アプリケーション(申込)書類が添付されてくる。

・アプリケーションに必要事項を記入し、送付する。
 ※氏名、住所、性別、生年月日、年齢、その他パスポート情報
 ※パスポートの写しと顔写真を添付する
 ※宿泊の希望、支給されるアパレルの希望サイズ
 ※到着日、出発日
 ※バレーボールのプレー歴、指導歴   など

・費用納入の連絡が送られてくる。送金する。
 ※国際送金になるため、手続きが難しかった。
  結局、失敗したため、現地で現金で払うことを認めてもらった。
  国際送金の方法を余裕をもって事前に調べておくといい。

・受講のスケジュールと内容が送られてくる。

・直前の事務連絡が送られてくる。
 ※集合時間、集合場所等の動きなど

★この一連の手続きだけでも、語学力の有無によってエネルギーが消耗される。
 私の場合は、語学力が足りなかったので、ミスリードや行き違いが何度も生じてしまった。

かねてから、FIVBコーチコースのスケジュールをしばしばチェックしていたのですが、
まず、日本国内のどこの誰に申し込めばいいか分かりませんでした。
知り合いの方々に聞いたのですが、明確にどこが窓口なのかはわからない様子でした。
ようやく、JVA(日本バレーボール協会)の担当の方とつながることができました。
私が、受講を希望するモルディブのコーチコースの申込の締め切り期限が迫っていることを相談すると、
メールのやりとりで、親切にかつ迅速に対応していただき、大変助かりました。

【実際のコーチコースレベル1の内容】

伝達内容は、基本的なものとなっています。しかし「基本=初歩的・容易」ということではなく、むしろバレーボールにおける土台・基盤となる重要な内容であるという認識をもちました。FIVBのコーチングマニュアルも配布され、その内容に沿って講義がなされています。
このマニュアルの日本語訳で2011年に購入したものを持っていましたが、そこから講義内容はしっかりアップデートされています。

実技は、モデルチームや選手による実演ではなく、受講者(50名くらい)が、全員で実践したり、分担して実演したりしていきます。ウォーミングアップ~トレーニングの一連のメニューを全員でハードワークする時間もあり、なかなか体力も必要で思った以上に大変でした。

・1日目:開講式、講義(座学)
 →・イントロダクション
  ・FIVBの沿革と歴史
  ・バレーボールの歴史
  ・FIVBの事業(国際大会やコーチコース、普及活動等)と歴史
  ・コーチ(指導者)のフィロソフィーや心構え
  ・初心者や子供へのバレーボール指導(アプローチ、ミニバレー、マスバレー)
  ・選手の育成と発掘、有望選手の拡大
  ・トレーニングや練習のマネジメント

・2日目:講義(座学)
 →・チーム作りや選手育成のプランニング、マネジメント、ピリオダイゼーション
  ・バレーボールとフィジカル、身体能力、体力、動き、フォーメーションなど
  ・サーブとレセプション(サーブレシーブ)のスキルセオリー
  ・セット(トス)とアタック(スパイク)のスキルセオリー
  ・ブロックとディフェンス(守備)のスキルセオリー
  ・現代バレーボールのトレンドと課題

・3日目:講義(座学・午前1コマ)、オンコート実技
 →(座学)バレーボールのルール
  (実技)・初心者や子供に対する指導(ミニバレーやボールコントロールドリルなど)
      ・サーブの基本スキル、
      ・レセプションの基本スキル
      ・セット(トス)の基本スキル
      ・実技試験の説明と練習

I would like to share today's on-court practice with you all. First, here is a drill designed for kids.

(参加者と共有した現地メモ)

The second is an exercise on serving and warming up to it. We were taught that the toss is the most important part of the serve.

(参加者と共有した現地メモ)

The next three were practicing sets and warming up to them. I think this time was the hardest. I learned that the set and setter are that important. To the members of Group 2, please take a good rest!🙇

(参加者と共有した現地メモ)

The fourth session consisted of receiving and reception practices and warm-ups.
We were taught that it is important to control the ball by using your thumbs when creating a platform and to keep your concentration and focus on the opposing server during the reception.
We were also taught that it is important to be tactically flexible in our team formation during the reception.

(参加者と共有した現地メモ)

・4日目:オンコート実技
 →(実技)・ウォーミングアップとトレーニング、
      ・ブロックの基本スキル
      ・オフェンスシステムとディフェンスシステム
       ※ちゃんとリードブロック、シンクロ攻撃を説明していたよ
      ・フォーメーションの考え方

Thank you so much for another hard working day.
The first lecture was on the block.
The block is the most important element of modern volleyball, especially at the top level of the game.
Blocks can be practiced for individual skills, as a team, or even in game situations.
And even if you only consider individual skills, you have to practice them patiently, one step at a time, over time, because there are so many things to keep in mind and you cannot learn them all at once.
In team practice, we must make decisions about blocker placement, zone assignments, etc., assuming modern volleyball attacking tactics, and ensure that we are blocking on sees and react. We also learned that it is important to share these intentions with everyone in practice.

(参加者と共有した現地メモ)

The last lecture was on team formations.
What I have personally learned is that there are always pros and cons to these formations.
And, if one tries to decide in advance which of these formations to use or to let the players choose one, one must be aware that the nature of volleyball runs the risk of becoming rigid all at once.
Formation is not like a menu in a restaurant; it is extremely flexible, with players making decisions based on their own initiative to evaluate and judge the ball, the opposing players, and their own situation. I thought that positional play in this regard was very important.
I am sure everyone who served as a model player was very tired. Thank you for your cooperation.

(参加者と共有した現地メモ)

 →(実技試験)
   ・サーブを5つのゾーンに5回ずつの試技
   ・レフトからの3rdテンポスパイク練習のための手投げトスアップ20回
   ・ゾーン1からランニングしてくるセッターへの手投げトスアップ20回
   ・1-1(Aクイック)と3-2(2ndテンポ)によるタンデム攻撃への手投げトスアップ20回
   ・ゾーン2に立ち、ゾーン5にいる選手に向かって打つノック(取りやすいドライブティップ)20回

・5日目:筆記試験と閉講式
 (筆記試験)
   ・選択式の50問
   ・講習の内容と配布された資料(FIVBマニュアル)に沿った問題から出題。
   ・解答には十分な時間があり、冒頭は問題に対する質問を行うこともできる。
   ・解答を終えた者から提出、退室することができる。


【参加(受講)してみての感想】

・語学力(FIVBでは英語、フランス語、スペイン語のいずれか)の習得は、非常に重要である。とにかく、中途半端な語学力では参加しない方がいい。(自分はかなり苦労が多くて大変だった)
・準備や手続きは、かなり余裕をもって早めに動いたほうがいい。ただし、開催地によっては早すぎても情報が来なかったり、日本人的な感覚で返事を待つと、返事が遅いと感じる場合があるので、焦らないことも大切。
・参加者とは、積極的にコミュニケーションをとったほうが良い。
・服装や国歌斉唱など、その国の儀礼的なものがあるので、落ち着いて回りを見て合わせて行動するとよい。その際のマナーは緊張感をもって。
・実技指導の内容は、いたってシンプル。日本で見聞きするものと大きな違いはない。しかし、きわめて合理的な印象。
・FIVBからの伝達内容は、しっかりアップデートされている内容になっている。(コーチのフィロソフィー、ピリオダイゼーション、リードブロック、数的優位オフェンス・・・などなど)
・実技指導は、日本でよく言われるような、身体の局所的なポイントの説明はあまりなされていない。(手首を使え、右眼から見ろ、右足から左足みたいな類の説明)
・一番ラッキーだったのが、運営の方も受講生もみんなめっちゃ優しかった。なので、孤独にならずに済んだ。でもこれはラッキーなだけ。

【学んだ成果】

・とにかくコーチ(指導者)としての態度、振る舞い、心構え、マインドセットの在り方や重要性を強調していた。
・世界におけるバレーボールの持続可能な発展が、今日的な課題の大きなテーマの一つとなっていて、そのため子供たちや初心者への普及の取組を重要視している。マスバレーやミニバレーボールのイベントを推奨している。
・内容は、配布されたFIVBコーチマニュアル(レベル1)の内容に沿った、幅広い内容となっている。
現代バレーボールのトレンドも説明され、最新の情報をアップデートしていることがわかった。
・他国の受講者との仲間づくりが最大の成果。今ではSNS等も使えるため、確実に新しい仲間が増やせる。
・日本国内でバレーボールの情報を収集しアップデートしておくと、受講内容で苦労することはない。
国際的には認知されてきている、LTADやピリオダイゼーションの必要性についても明確に言及しており、日本国外のバレーボールでは当たり前の考え方になっているということ。

【個人的に感じた、日本における課題】

・日本国内での指導者研修や講習の内容が、FIVBのものとはかけ離れたものとなっている実情に危機感を覚える。日本のバレーボール指導の国際的なアップデートの遅れの大きな要因と考える。
・特にアンダーカテゴリーに対する指導の在り方や内容、事業などについては、日本のバレーボール界はFIVBの理念や内容とは大きく異なっており、むしろ逆行している現状が改めて明らかになった。
・FIVBと日本のバレーボール界のギャップについて質問したところ、返答はスバリ「language」(言語)の問題だと言われた。日本人は日本語以外使えないので、アップデートの大きな障害になっていると指摘された。
・リードブロックやフォーメーションの柔軟な対応、シンクロ攻撃のオフェンスを前提としたディフェンスの考え方など、講習内容にしっかり盛り込まれていたが、日本でこのような内容に触れる機会は、国内コーチ1~コーチ4の講習でもほぼない。逆にアップデートされていない情報が放置され、各都道府県で伝達されてしまっている。
・そもそも国内のコーチ1等の講習内容が各都道府県に任されており、まったく統一されていない。また内容も、講師に大きく依存しているため、講師の主観や古い情報のまま伝達されていることも多い。

【意見・提言】

・FIVBコーチコースの受講の申し込みがよりしやすいような情報提供。(手続き方法や連絡窓口の周知)
・バレーボール指導に特化した語学力向上のセミナーや研修会の企画などで、日本人バレーボール選手や指導者の国際的活躍の可能性を広げてほしい。
・日本国内のバレーボール指導者資格(コーチ1~コーチ4、JVA講師)の内容見直し。FIVBとの整合性。
・FIVBインストラクターやコーチコース有資格者の日本人人材の有効活用
・これからも学びとアップデートを続け、国内で必要としている人々の情報提供していきたい。

【おわりに】

今回の受講では、JVA(日本バレーボール協会)の担当者様が、本当に親切丁寧で、かつ時間のない中迅速に対応していただき、本当に助かりました。日本国内で受講のために助言くださった方々のお力も大きかったです。
また、現地モルディブのアソシエーション(VAM)の方々も大変親切で、受講生仲間にも大変助けられました。
一生の財産になる機会を得ることができ、このような機会を与えてくださったすべての皆様に感謝申し上げます。

(2024年)