『アベンジャーズ/エンドゲーム』悲劇のあと、どう生きるか。
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の結末、ヒーローたちはボロ負けし、悪役サノスが全宇宙の生命の半分を消滅させた。
その続きを待つこと1年。ヒーローたちはどうやってサノスを倒し、どうやって消滅した人々を復活させるのか。そればかり気になっていた。
いざ公開された『エンドゲーム』。
本題は、そこじゃなかった。
映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』の感想。
※以下【ネタバレ】↓↓↓
====================
舞台は、その後の世界
Q.前作のラストから、アベンジャーズは逆転のためにどう行動する?
A.何もできないまま、5年が経過する。
…なんというひっかけ問題だ。
これが学校のテストだったら、生徒から苦情が殺到して、先生が「わかったよ。何も書かなかった人も、全員マルでいいよ」と謎の折れ方をするやつだ。
今回の舞台は、人類の半分が消え、5年経った地球。
戦争やテロ、災害や事故。そのあと、生き残った人間は、「悲劇が起きた、その後の世界」を生きなければいけない。
そこで人はどう立ち直り、どう進んでいくのか。そういう話だった。
起きた悲劇は、なかったことにはできない
起きた事実は取り消せない。この映画は大きく2か所、それを突きつけてくる。
1つ目は、キーアイテムがいきなり破壊されたこと。
映画が始まってすぐ、逆襲に向かうアベンジャーズ。今度はサノスに勝てそうだ。
しかし、消えた人を取り戻すのに必要な〈インフィニティ・ストーン〉は、サノスが先手を打って既に破壊していた。
怒ったソーが、サノスを殺す。
サノスは死んだ。でも、何も戻ってこない。
2つ目は、タイムトラベルのルール。
この映画は、タイムトラベルというフィクション全開な解決策をとる。
でも、そのタイムトラベルでさえ、「過去を変えてもパラレルワールドが生まれるだけ。自分たちの世界は変わらない」というシビアなルールだ。
一連のマーベル映画〈MCU〉は、壁にぶつかってもすぐ行動するヒーローの姿を通じて、「今できることをしろ」の精神を伝えてきた。
でも、今回はその言葉の前につく「起きたことは変えられないのだから」の部分を、重く叩きつけてくる。
ここにいない仲間のために
5年経って、アベンジャーズは皆、戦意喪失していた。
でも、ナターシャ(ブラック・ウィドウ)だけは、「ここにいない仲間のため」を貫き、消えたみんなを復活させることに執着していた。
死んだ人は、帰って来ないけど、「今はここにいない仲間」だ。
残された人は、今はここにいない仲間のために生きる。
冒頭、トニー(アイアンマン)は妻への遺言のつもりで「ぼくが死んだら、うしろめたさ全開で前に進んでくれ」と言った。
自分が去る立場でそう思うなら、自分が生き残った立場でも、そうすべきだろう。
ヒーローが正しい理由
サノスは、正義の人物だ。人口を半分にすれば資源不足が解消されると判断し、世界を救うためにそれを実行した。
前作『インフィニティ・ウォー』。サノスは世界を救う(生命の半分を殺す)ために、邪魔者集団アベンジャーズをはねのけ、犠牲を払いながら(娘を殺しながら)、なんとか世界を救った(いっぱい殺した)。
主人公サノスの、切ないけど満足気な笑顔のアップで終わる、イカれた映画だった。
しかし、サノスと本当のヒーローには大きな違いがある。
サノスは正義のために他人を犠牲にするが、ヒーローは他人を犠牲にしない。
それが一番目立ったのが、バートンとナターシャの格闘シーン。どちらかが死ななければいけない状況で、互いに相手を生かし、自分が犠牲になるために戦う。
決別していたアイアンマンとキャプテン・アメリカも、和解。
「考え方は違うけど、あなたを犠牲にしたくはない」という気持ちがあるから、違う正義でも団結することができる。
その結果が、最終決戦のアベンジャーズ・アッセンブル。
その正義の差で、サノスに勝った。
シリーズの歴史を引っさげたトドメ
トニー・スタークが勝利の瞬間に言う “I am Iron Man”.
これは、MCUの1作目『アイアンマン』と同じ決めゼリフ。そのあと『アイアンマン3』でも登場し、今回で3回目。
だが、毎回、強調される部分が違う。
(と、『アイアンマン3』のときにラジオでライムスター宇多丸さんが言っていた。)
“I am Iron Man”. (『アイアンマン』)
“I am Iron Man”. (『アイアンマン3』)
今回は、 “I am Iron Man”.
「おれは、ヒーロー・アイアンマンなんだ」と、今までの足跡をぶつける一言。シリーズの全てを集約した、映画22本分の強さを持ったトドメ。
今までの全てがあって、ここに辿り着いた。
“1400万605分の1の確率の勝利”は、これまでのキャラクターたちの全ての行動が導いた結果だ。
そう感じさせる、最強の最終回だった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?