家族は私のためにある!?
「めっちゃ臭いんやけど?」
寝転がりながら携帯ゲームをしている夫が言った。
「そりゃ臭いやろ。だって…」
これが、一連のできごとの始まりだった。
・・・
さかのぼること6月末。
毎年梅干しを漬けている私は、今年も無事に梅と赤じそを漬け終わり、あとは土用干しを待つだけだった。
土用干しに適しているのは、梅雨明け後の天気の安定した3日間。
だいたい毎年7月20日から25日頃。
お盆あたりになると湿度が高くなったり、夕立やゲリラ豪雨、台風の心配も出てくるので、7月中に干せるのが理想だ。
だから、今年も梅雨明けを待って…と思っていたら、まさかの6月中の梅雨明け。
全然準備ができていなかった私は、子どもの幼稚園の行事などもあり梅雨明け直後の晴天続きの1週間を逃してしまった。
晴れた空を見上げては「梅を干したい」と思いつつ、毎日の家事と育児に追われていた。
そして4日前。
直前まで曇りや雨となっていた天気が3日連続晴れに変わっていた。
私の予定も空いている。
イケる!!
土用干しを決行することにした。
普段なら土用干しは朝から行うので、初日は休日に設定するのだが、今回は急きょ決めたので平日。
そのため、子ども達を寝かしつけた後、夜中にベランダにザルの設置をした。
両足首を計5、6箇所も蚊に刺された。痒すぎる…。
3日前。土用干し初日。
いいお天気の中、梅を干すことができた。
2日前。土用干し2日目。
朝起きると、曇っていた。
それからも、晴れたり曇ったり。
天気予報を確認すると、天気が晴れから曇りに変わっていた。
さらに、翌日は雨に…。
どうも、夜中から雨が降りそう。
どうしようかと思ったが、雨に当たってしまうと困る。翌日以降もしばらくはすっきりしない天気が続きそうなので、一度梅壺に戻すことに決めた。
あんなに虫刺されながら頑張ったのにと思いながらザルを外し、梅の干し上がりを確かめながら、梅酢の中へ。
あと1日くらいは干す必要がありそう。
もう少し我慢して晴天の日を待てばよかった。
「急いては事を仕損ずる」やな…。
そう思いながら迎えた翌日。
雨、降ってないやん!
むしろお日様出てるけど⁉︎
天気予報を見ると、朝の雨雲はなくなり昼からの雨に。
うわ、ショック。
でも昼から雨なら、どちらにしろ干すのは難しかったな。
と思ったら、昼を過ぎても雨が降らず。
天気予報は、15時から雨に。
遅くなってる!
でも15時から雨だったら、やはり中途半端だったかも。
と思っていたのに、15時になっても雨は降らず。
雨予報は19時からに変わっていた。
それやったら、今日干せたやん!
晴れた空を見上げる私。
ああ、悔しいなぁ!
今日干せば、梅が仕上がったのに!
昨日、ザルを取り込むんじゃなかったなぁ。
夜中、暗い中ザルを設置したあの苦労を返せ!
蚊にもあんなにも刺されたのに。刺され損やっ!
ああ、もったいない。
ああ、残念。
ああ…。
天気はいいのに、私の気持ちは晴れない。
いや、天気がいいからこそ、私の気持ちはなかなか晴れない。
だから…。
「ん?なんかめっちゃ臭いんやけど?」
夫が言う。
「そりゃ臭いやろ。すけちぃのうんち替えてるんやもん」
1歳の息子のすけちぃは、まだおむつ。
なので、おむつ替えは室内で行う。
「なんか近いやん。もうちょっと離れて替えてや」
「嫌やー。わざと近くで替えてるんやもん。
梅を干せなかったモヤモヤを晴らすために、腹いせに嫌がらせしてるんやー。ほーら臭いやろー!」
夫、関係ないんやけどね(笑)。
でも、私のモヤモヤはまだ晴れない。
うんちを替えた後のすけちぃの太ももをさすりまくった。
「太もも、むちむちやのぅ!ママの心を癒すのだ!」
何やってんのと言わんばかりの、1歳児の冷めた目。
そんなものは無視して、触りまくるセクハラ母ちゃん!
しかし、それでも気が晴れない私は、さらに4歳の娘のぽんちゅにも絡み出した。
「あのなぁ、梅を干したかったのに干されへんかってん。
天気悪いとか言って、こんなに天気いいんやで、信じられへんよなぁ。なぁ!」
静かにテレビを見ていたぽんちゅのほっぺをむにむにしながら、ウザ絡み。
夏風邪でしんどそうなぽんちゅ。
怒らないけれど、苦笑い。
まだまだ治まらない私は、また息子のすけちぃを捕まえて抱きしめながら、「ママ好き?ママ好き?」
ここで、見かねた夫に「もうやめたれ。子ども達で憂さ晴らしすなっ」と言われた。
「えー!いいやん!
普段この子達のわがままに耐えてるんやから、私がむしゃくしゃする時くらい絡んでもいいやろー。
こんな時の癒しやんー。
そのために頑張って産んで、一生懸命育ててるんやから」
我ながら、むちゃくちゃ。
しかし。
「じゃあ、よし!」
夫から許可が出た(笑)。
こうして夫公認でさらに子ども達に絡みまくり、梅を干せなかったモヤモヤを発散させたのだった。
家族の協力を得て(⁉︎)、元気復活した私。
梅干し大好きな家族のために、あと少し土用干しを頑張っておいしい梅干しを作るぞ!
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