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足部・足関節機能からみたオスグッドへのアプローチ-重心移動に着目した介入-

ストレッチだけでは不十分なオスグッドへの対応

中学生など育成年代に関わるセラピストやトレーナーの方はオスグッドに対応することが非常に多いと思います。

大腿四頭筋のストレッチだけでは、オスグッドによる膝関節痛に対するアプローチが不十分であることは周知の事実だと思います。

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このオスグッドは、動作中の重心が後方偏位することで大腿四頭筋への過負荷がかかり、発症すると考えられています。

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サッカーにおけるキック動作では、身体重心の後方変位が大腿四頭筋への過負荷(膝関節伸展モーメント増大)につながると報告されています。
参考文献:「軸足ハムストリングスの柔軟性とキック動作時の身体重心後方化との関係」

そのためオスグッドへのアプローチでは、重心位置を修正する(前方へ重心を移動させる)ことがポイントとなります。

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しかし、重心位置を前に乗せられるようにするといっても、身体機能の制限が原因でなかなか前方へ乗せられないケースも多くいます。

重心の前方移動制限の原因は多岐に渡ります。

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オスグッドのリハビリにおいては、これらの原因に対して適切に対処していくことが求められます。

足部・足関節機能と重心移動

なかでも、足関節機能は身体重心移動をコントロールするために重要な要素になると考えられています。

ランニング動作において、足関節背屈角度は約30°必要だと言われています。

この足関節の背屈可動性が適切に保たれていることで、前方への重心移動に必要な下腿前傾を引き出すことができると考えられています。

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言い返せば、足関節背屈制限があることで動作中の下腿前傾が制限され、それにともない重心の前方移動も制限されます。

様々な研究の中で、オスグッド発症者のスクワット動作は足圧中心の前方移動制限によって身体重心が後方変位しやすいという報告が散見されます。

また、実際の動作中では、足関節背屈制限の代償運動として足部外転運動いゆわるtoe-outなど足部過回内を認めるケースも多くあります。

この代償運動によって、足圧中心や下半身質量中心が過度に前内方変位すると考えられています。

一見、前足部に下半身質量中心が移動することで身体重心も前方移動し、後方重心は改善されたように考えられます。

しかし、支持基底面の辺縁まで足圧中心が変位すると、運動連鎖よりも姿勢制御がオーバーラップして転倒しないような姿勢をとります。

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本来、足部が回内すると上行性運動連鎖によって骨盤は前傾・前方回旋します。

しかし、足部過回内による下半身重心が前内方へ偏ることによって、骨盤は対側への後方回旋および後傾位となり、身体重心は後方変位します。

その結果、膝関節伸展モーメントの増大および大腿四頭筋への過負荷につながり膝蓋腱による脛骨粗面の牽引が惹起されます。

足関節背屈に必要な機能

適切な重心の前方移動やそれをコントロールするためには、足関節における背屈可動性が保たれていることが重要であることをお話ししました。

では、その足関節背屈運動がどのようなメカニズムで成り立っているのか整理しましょう。

ここを理解することで、足関節背屈制限に対する評価や評価結果の解釈および介入方法の選択をより具体的に行うことができます。

この運動は、距腿関節や距骨下関節・ショパール関節それぞれが連動することで成立します。

-足関節背屈に対する距腿関節の挙動-

距腿関節内では、下腿に対し距骨は後方へ滑り、この動きに連動して、踵骨は背屈方向へ動きます。

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踵骨に付着するアキレス腱や後方関節包の柔軟性が低下することによって、踵骨背屈が制限され、距骨後方滑りの低下につながります。

また、距骨後方を走行する長母趾屈筋腱の柔軟性低下によっても距骨後方滑りの制限因子となり得ます。

-足関節背屈に対する距骨下関節の挙動-

足関節背屈時に踵骨が外がえしと軽度外旋方向へ動き、距骨も連動して内旋方向へ動きます。

距骨内旋に対し、下腿内旋も連動すると考えられており、これによって距腿関節面を一致します。

その結果、距腿関節における円滑な背屈運動を引き出すことができると考えられています。

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この踵骨の動きは、載距突起周囲を走行する長母趾屈筋腱や屈筋支帯などの伸張性低下が制限因子となりやすいと考えられています。

-足関節背屈に対するショパール関節の挙動-

踵骨(距骨下関節)の外がえしに連動して、ショパール関節も外がえし方向へ動きます。

この連動性によって、適度な内側縦アーチの降下を行うことができ、中足部の柔軟性を増加させることができます。

今回のnoteでは、オスグッドにつながる動作エラーが足部・足関節機能が影響しているか評価し、動作改善のための介入についてまとめていきます。

オスグッド治療に欠かせない動作分析

前述したように、オスグッドに悩む選手の多くは、動作中の重心をコントロールできないことが原因としてあげられます。

オスグッドにつながるメカニカルストレスがどのようにかかっているのか、明確にしておくことが治療において非常に大切なものになります。

実際の臨床では、姿勢制御の難易度(立位バランス分類)に合わせた基本動作から動的な安定性が得られているか評価していきます。

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✔︎片脚立位

この動作では、身体重心の位置と足底圧がどこにかかっているか、股関節および骨盤の動的アライメントがどうなっているか確認しましょう。

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この動きで多い動作エラーは、足部過回内による足部における前内足部への過荷重です。

また、それに伴う骨盤後傾および上半身質量中心の後方変位です。

足部機能から見たこの動作エラーは、荷重に対する踵骨外がえしの可動制限に対するショパール関節における代償運動(足部過回内)や後脛骨筋と腓骨筋によるクロスサポート機能の低下が原因として考えられます。

✔︎スプリットスクワット

スクワット動作の特徴は、下腿前傾を伴う足関節背屈運動が股関節屈曲動作と連動して行われることです。

この際に足関節背屈制限がある場合、動作中の下腿前傾が制限され、下腿が床面に対し垂直に近いポジションで動作を行うことになります。

また、前方への重心移動を足部外転させた代償運動によって行うことも多いです。

このような代償運動では、前内足部に荷重が集中し、前述したように身体重心も後方変位して、膝関節伸展筋群へ過負荷の原因になります。

✔︎フロントランジ

この動作でもスクワット同様に下腿を前傾させながら重心を前方へ移動させます。

前述したように足関節背屈制限がある場合、スクワットと同様な動作エラーがみられます。

また、重心を適度に前方移動させるには下腿三頭筋の遠心性収縮による下腿前傾の制動が求められます。

これは、スクワット時も必要ですが、重心移動の距離が長くなるフロントランジ において重心を制御する上で非常に重要な機能となります。

オスグッド治療における足部機能評価

以下の記事では、オスグッドの局所評価について詳細に記載されています。ぜひ、ご一読ください。

オスグッド治療において足関節機能への介入は、とくに背屈運動への介入が重要になります。

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