慢性的な股関節の症状の根源を探る
慢性的な痛みやつまり感などの違和感に悩む方って非常に多いと思います。
それも、スポーツをやっているいないに関わらず。まさに老若男女。
また、それらに対してアプローチに悩むセラピストやトレーナーの方も多いかと思います。
自分自身もなんども慢性的な股関節の症状へのアプローチで壁にぶち当たり、悩まされた経験があります。
そういった場合、往々にして共通する原因に病態そのものを適切に捉えることができていないことが挙げられます。
つまり感などの違和感を含めた股関節の諸症状の原因は様々なことが考えられます。
目の前の患者様やアスリートの何が原因で、股関節の諸症状に悩まされているのかを適切に評価し、特定していかなければ改善につなげることは難しいと感じています。
このnoteでは、股関節の痛みからつまり感まで股関節局所で何が起きているのか特定するために必要な考え方から実際の評価方法についてお話させていただきます!
股関節痛治療や指導にお悩みの方にオススメの内容となっておりますので、ぜひご覧ください!
股関節治療におけるkey word
股関節治療において私が大事にしているポイントが大きく分けて3つあります。
それがこちら。
求心位での関節安定化は、股関節に限らず関節運動を行う上で、非常に重要な要素となります。
多くの股関節の可動域制限の原因にこの関節の安定性に問題を抱えていることが多いと感じます。
股関節における関節安定化に関与しているのは大きく分けて以下の2つと考えられています。
解剖学的肢位において股関節は、大腿骨頭の前方約1/3および後方約1/2が寛骨臼に覆われている。肩関節や膝関節に比べると、股関節は骨形態そのものによる安定性が高い関節であるといえる。
(引用:「身体運動学-関節の制御機構と筋機能-」)
しかし、股関節唇や関節包・靭帯に損傷がある場合、シーリング機能(※)が低下することによって関節内の不安定性を助長します。
※関節唇は関節包内の近位部で関節液を密閉している。この機能による効果は、寛骨臼から大腿骨頭が牽引される力に対して関節内を陰圧に保つことで抵抗し、関節の安定化に寄与すること。さらに、荷重時にかかる関節への圧力を関節面に均一に負荷させることで、関節軟骨への過剰な負荷を防いでいる。
この他にも、筋機能によっても関節の安定化がなされています。
特に股関節深層に存在する筋肉は、関節の安定化に重要な役割を担っていると考えられており、その力は、骨を回転させるというより関節中心に向けて押し込むように働き、関節を求心方向へ圧迫させ関節の安定化に寄与すると考えられています。
また、深層筋(小殿筋や短外旋筋群など)は、関節包や靭帯との連続性もあるため、運動時の挟み込み防止や間接的に関節を安定させると考えられています。
深層筋以外にも腸腰筋や内転筋群は走行上、骨頭を求心位に保つ作用があるため関節の安定化に大きな影響を与えると考えられています。
骨形態や関節包・靭帯およびシーリング機能に対して私たちセラピストやトレーナーが関与することは不可能ですので、いかにして股関節周囲の筋機能(柔軟性・筋力)を整えられるようアプローチできるかが股関節治療では重要であると考えています。
股関節周囲の筋肉を整えればいいわけでもない…
しかし実際の臨床では、これら筋組織に対するアプローチのみで改善を図るのには限界があります。
その要因として、そのほかのkey wordである骨盤のアライメントおよび可動性(骨盤大腿リズム)が関与します。
股関節の正常な動きには、骨盤・腰椎の動きが連動します。
股関節屈曲運動中に骨盤は後傾および腰椎の後弯を伴います。
背臥位での片側股関節屈曲運動では、自動・他動ともに股関節屈曲角度のうち約26%は骨盤後傾である。
また、立位での自動運動による片側股関節屈曲運動では、股関節屈曲角度のうち約18%が骨盤後傾である。
(引用:「身体運動学-関節の制御機構と筋機能-」)
これらのことは骨盤大腿リズムとよばれ、股関節インピンジメントを防止する上で非常に重要な動きとなります。
骨盤(寛骨)の後傾が阻害され、前傾すると寛骨臼前縁におけるインピンジメントが起こりやすく、股関節90°屈曲位での内旋可動域の低下にもつながると考えられています。
前述したように、いくら股関節周囲の筋組織に対してアプローチをしても症状に変化が見られない場合、この骨盤大腿リズムが原因であるケースが多いです。
また、この寛骨の可動性低下は骨盤帯のアライメント不良(マルアライメント)によって引き起こされていることもあるので、あわせてそれらに対しても評価を進めていく必要があります。
このように股関節インピンジメントは、大腿骨頭および寛骨の挙動やアライメントが大きく関与していると考えるため、どの要素が症状の原因であるか鑑別し、適切にアプローチをしていく必要があります。
骨盤のマルアライメントを評価する
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