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「ケガ明けのあいつ良い動きしてるなぁ。」

「ケガ明けのあいつ良い動きしてるよな。」

こんな風に監督・コーチからコメントをもらえると復帰した選手もリハビリ頑張ってよかったなって思ってくれるだろうし、サポートしていた側もそんな話聞いちゃったら気持ちいいったらありゃしないですよね。

サッカーって正直ケガがつきもので、重症のものでは長期間サッカーができないことも…。そうなるとこれまでのトレーニングで積み重ねてきた体力などの心肺機能が低下してしまいますよね。

復帰に向けて地道に長距離走を走り込んでしっかりと準備をしても実際にサッカーの試合になったらすぐに息が上がって全く走れなかったなどの経験ってありませんか?

それは、サッカーにおける走りがさまざまなメカニズムから成り立っているからです!それぞれのメカニズムへ負荷をかけることで、心肺機能面からも良いコンディションで復帰することができると考えます。

今回の記事では、体力的側面(心肺機能面)からみた段階的な復帰に向けたフィジカルトレーニングをどのように行なっていけば良いのかまとめていきたいと思います。

「休んだ分の倍は走り込まないと復帰できないぞ」

自分が高校時代に所属していたサッカー部は、めちゃくちゃ走るチームでした。夏休みなんかは初日から長野県の山に篭って朝は8キロ走、午前と午後はそれぞれ山の中の道を10キロ走。そんな生活を5日間。笑

そんなチームを率いる監督やコーチからはケガ人に対して「休んだ分の倍は走り込んで体力を戻しなさい。」とおっしゃっていました。
(走りが苦手で嫌いだった石橋選手はこの言葉がある意味モチベーションで日頃のストレッチ等ケアを頑張っていました…)

そんな昔話はどうでもよくて。
実際にどれぐらいの期間休むと心肺機能などに悪影響を及ぼすのでしょうか?

トレーニングを中断されるとトレーニングによる好ましい適応変化は失われ、心肺機能は低下する。8~10週間以上のトレーニング中断期間をとると、トレーニング前のレベルまで低下する。

臨床スポーツ医学「長期休養に伴うスポーツ活動の注意事項」

具体的には、有酸素性運動能力の指標のひとつである最大酸素摂取量(単位時間あたりに酸素を取り込める最大量)の低下が著しいと言われています。

1-2週間など短期間の休息には最大酸素摂取量などに大きな変化は見られなかったとも報告も。
体のケア(成長期における体の成長)のためにも、休める時にはしっかり休みましょう!

休む前よりも倍以上走ったらいいのかは定かでありませんが、休息期間によってはしっかり走り込んだ方がいいようですね!

「走行距離」や「スプリント回数」…現代サッカーに求められる走

る能力って?

「相手よりも走り負けるなよ!」

なんて選手の皆さんは監督やコーチから指示されたことがあるかと思います。

でも「走り負けるな」って…??

現代のサッカーにおいては、相手よりも長い距離をただひたすら走り続けられればいいというものではなくなってきています。

以下の画像は、2019-20シーズンイングランド・プレミアリーグにおける「年間順位」「走行距離」「スプリント回数」のチームランキングです。

画像引用はこちらの記事から

年間順位の上位チームは「スプリント回数ランキング」も上位であることがわかります。

さらに、シャトルランのようにトップスピードの走りを何度も繰り返せる選手とそうでない選手の違いについて示すデータもあります。

画像引用:「パフォーマンス向上に役立つサッカー選手の体力測定と評価」

このように現代サッカーにおいて走り負けないとは、「相手選手やチームよりも多くトップスピードでのプレーを繰り返す」と考えるのが妥当ではないでしょうか!?

競技復帰までに「間欠的運動能力かんけつてきうんどうのうりょく」を鍛えよう

サッカーは、歩きやジョギングなどの低強度の動き(有酸素性運動)からスプリントなどの高強度の動き(無酸素性運動)を多く繰り返す競技です。このような運動様式を間欠的運動といいます。

酸素と酵素を活用して発生するエネルギーを活用するのが特徴
グリコーゲン(ブドウ糖)を分解した際に発生するエネルギーを活用するのが特徴

サッカーは様々な強度の運動(有酸素性運動と無酸素性運動)が不規則に繰り返される競技です。さらに、スプリント回数が重要な能力でもあるため、それに焦点を当てて心肺機能面に負荷をかけていく必要があります!

スプリントなど瞬発的で爆発的な運動は無酸素性運動能力がメインで働きますが、有酸素運動能力も同時に働きます。また、中学生など育成年代は筋肉内にあるグリコーゲン(筋グリコーゲン)に限りがあるため、無酸素性運動能力の向上よりも有酸素性運動能力の向上に主眼を置くことが良いとされています。

有酸素性トレーニングは長時間の運動に対する能力だけでなく、回復能力や無酸素性のエネルギー消費コストを抑えることができるようになるため、無酸素性運動能力の向上が見込めるともされています。

実際に有酸素性トレーニングは、運動時間と休息時間を適切にとり、心拍数を確認しながら行いましょう。そうすることで、適切な負荷をかけながらトレーニングを行うことができるようになります。

ボールを扱いながらのトレーニングに組み合わせて行うこともおすすめ

心拍数の測り方は下記のホームページを参考にしてください!

最近は心拍数の測定できるスマートウォッチなども多くこのようなデバイスを活用して心拍数のモニタリングするのもいいかもしれませんね!

ケガからの復帰を目指す選手に対しては、そのケガの状態(病態や病期)をベースに考えつつ、復帰時期から逆算して有酸素性運動の強度をコントロールしてあげるといいのではないかと考えています。

より実践的な心肺機能の向上のためには、漠然と長距離走や長時間走のトレーニングだけで心肺機能面に負荷をかけるのではなく、さまざまな負荷をかけていく必要があります。

しかし、素走りだけでは強度を上げることは可能ですが、自分のように走るのが嫌いな選手からしたらモチベーションが落ちてしまいます。そのため、ボールを使いながら有酸素性運動を行えるようなメニューを組むのもひとつの手段になります。

ボールを使いながらのトレーニングになると実際にサッカーで使用する筋肉に対しても特異的に負荷をかけることもできるので、より実践に即したトレーニングを行うことが可能となります。

※技術的な問題で負荷をかけにくい場合は、負荷を適切にかけるために素走りを行う必要があります。

まとめ

今回は、長期間のけがによる復帰で一番困りやすい体力面(心肺機能面)に対する段階的な負荷のかけかたの一例をご紹介しました。

長期の怪我からの復帰やテスト期間などの休養明けの練習でより高いパフォーマンスでプレーするためにも、段階的に実戦に近い負荷をかけていく必要があります。

「あんなに走り込んだのになんで試合じゃ全然動けないんだ…。」

こんなふうに悔しい思いをしないためにも復帰時期から逆算してさまざまな負荷をかけていきましょう!

最後までお読みいただきありがとうございました。

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