未来をつくる技術が集結!「第6回J-TECH STARTUP SUMMIT」パネルディスカッションをレポート
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未来をつくる技術が集結!「第6回J-TECH STARTUP SUMMIT」パネルディスカッションをレポート

TEP Deep Tech Journal

2022年2月22日、オンラインにて開催された「第6回J-TECH STARTUP SUMMIT」。大きな成長が期待されるシード・アーリー期の技術系スタートアップを支援するための取り組み「J-TECH STARTUP」が行うイベントです。今回はゲスト・鈴木万治氏と、認定企業2社の代表者を交えてのパネルディスカッション「未来をつくる技術 ~オープンイノベーションの現在と未来~」の模様をレポートとしてお届けします。

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パネルディスカッション
「未来をつくる技術 ~オープンイノベーションの現在と未来~」

登壇者:
スズキマンジ事務所代表 株式会社デンソー技術企画部CX 鈴木 万治様
株式会社エマルションフローテクノロジーズ 代表取締役社長CEO 鈴木 裕士様
株式会社MinD in a Device 代表取締役CEO兼COO 加藤 真平様
一般社団法人TXアントレプレナーパートナーズ 代表理事 國土 晋吾

モデレーター:一般社団法人日本能率協会 KAIKA研究所 所長 近田 高志

近田:このパネルディスカッションでは鈴木さんがお二人いらっしゃるので、鈴木万治さんは万治さんと呼ばせていただきます。

「スタートアップと大企業の連携をいかに進めていくか」という大きな課題と、あとは「オープンイノベーション」。今日のテーマである「未来をつくる技術~オープンイノベーションの現在と未来~」について、皆さんの立場からご経験・ご意見を交えて進めていきたいと思います。

スタートアップと日本企業の時間軸の違い

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近田:万治さんはシリコンバレーでのスタートアップとの連携経験がありましが、まずは國土さんにコメントをいただければと思います。日本でのスタートアップと大企業の連携においても近いことはあるのでしょうか。

國土:実は私もシリコンバレーで10年間スタートアップをやった経験がありますが、万治さんのおっしゃっている通りで、スタートアップの時間軸と大企業の時間軸は全然違います。

大企業のほうが時間軸が長く、スタートアップの情報収集から入ります。ところがスタートアップは情報収集をされても何のメリットもありませんから、本当はお互いにメリットのあるアプローチが必要なのですが、感覚の違いがあるなと思いましたね。

日本人のスタートアップは面と向かって言いませんが、シリコンバレーのスタートアップは率直に「何しに来たの?」と言います。よく「3L」とも言われます。Listen、Learn、Leave、以上。No progress、みたいな(笑)。

やはり、1年でやるべきこと、3年でやるべきこと、5年でやるべきことをきちんと定めて、お互いメリットのある提案をするのが非常にフェアだし、まず相手を“パートナー”と思う精神が大事だと思っていて。大企業もスタートアップも、お互いにパートナーだという意識でリスペクトしあうことが一番基本的で、一番大事なことじゃないかなと思います。

近田:ありがとうございます。続いて、今日のテーマである技術系のスタートアップと大企業の連携をどう進めていくかであったり、オープンイノベーションをどう進めていくかということに関して、スタートアップのお二方から連携事例や取り組みについてお話いただければと思います。

鈴木(裕):当社は創業から10カ月ほどですが、この1年の間に約40社とお話をさせていただいています。1社あたり1時間ずつぐらいお話をさせていただいて、そこから上手くその先につながっていくのが大体その半分くらい。そこからNDAを結び、実際に走り出しているのがまたその半分ぐらいな感じで、40社やると10社ぐらい、なんとなくうまくいくところが見えてくるかな、というところです。

大企業さんとお話させていただくときにも、先程國土さんがおっしゃっていたように、企業の中にオープンイノベーション関係の部署があるので、そういったところはすごくよく話は聞いてくれるんですよ。でもそれが本当にその先に続くかどうかというと別で。あとは持ち帰って議論します、といってそのまま音沙汰がなくなることもやはりあります。

ただ僕らとしては、協業させていただくチャンスはいろんなところにあると思っていて。イベントを通じて、さまざまな出会いやつながりはできます。そのチャンスを生かせるかどうかは僕らのやり方、あるいは大企業さんの考えがちゃんとマッチするかにもよるので、努力次第かなと思っています。

近田:企業との最初の接点としてはイベントでのプレゼンなどでしょうか。他にされていることはありますか?

鈴木(裕):最初の頃は毎月のようにプレスリリースをしていました。プレスリリースをすると問い合わせが結構来ることもあって。僕らも相手を選ばずに話をするということで、しっかりとチャンスを構築していく努力はしていました。

近田:ありがとうございます。続いて、加藤さんはいかがでしょうか。

加藤:我々はスタートアップなので、1年目は正直何もないという状況でした。技術のコンセプトはもちろん素晴らしいものでしたが、一般の企業様からご評価いただけるほどではなかったと。その中でどのように企業様とのきっかけを作っていったかというと、本当に“数”を当たったというのが率直なところになります。

その中で、少し変わった方というか(笑)。我々のまだ不完全な技術を見て、「ここをこうしたらこうなるよね」というような前向きな言葉をいただける方がいて。日頃、そんなの無理でしょ、とかいろんな言葉を浴びせられている中で、前向きな方というのは珍しいんです。そういう「変わった方」がきっかけになったというのが率直なところです。

近田:なるほど。オープンイノベーションといってもきれいにさっと揃うわけでもなく、そこは足を使ってあちこち回るという努力もされたということですね。

加藤:そうですね。ただ感じたのは、10年ぐらい前より「変わった方」の割合が多くなってきているというか。それはご年齢が若いとかではなくて、スタートアップと大手が組むと何か生まれる可能性があるという感覚をお持ちの方が増えてきているんじゃないかという肌感を感じています。

情熱をもって一緒に動いてくれるパートナーを見つけること

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近田:万治さんのシリコンバレーのご経験の中でもウォームイントロダクションが大事であるとありました。具体的にどのようなことをされていたのでしょうか。

鈴木(万):加藤さんがおっしゃっていたように、イノベーション業界は、外から見るのとは違いスマートな世界じゃないですよね。実は結構体育会系です。私がシリコンバレーにいたとき、アメリカ人の方にメンターをやっていただけたのです。その人に、とにかく周りの人に、「俺はこんな世界を実現したいとか、こんなことをやりたい、こんなやつを探している」ということを常に発信するように言われました。

すると、良い人が必ず一人見つかるんです。そういう人が見つかったら、その人から次の人を紹介してもらう。最初に一番信頼できる人を見つけるのが、ウォームイントロダクションのキーポイントになります。

シリコンバレーも日本も同じだと思いますが、自分が紹介する人は、自分が信頼できる人でないとダメですよね。その最初の一人が大変ですが、一人さえ見つければそこからどんどん輪が広がっていきます。その中でもやっぱり面白い奴であることが大事だと思います。オープンイノベーションに関してもそうで、面白がらないとポジティブフィードバックってできないし。

國土:僕も昔から言っているんですけど、オープンイノベーションとか新しいアイデア、発想の大事なことは、やっぱり楽しむことだと思います。つまらないと思ったら新しいことなんか出ませんし。

シリコンバレーって、組織のつながりよりも人のつながりが強いんですよね。あの会社の何々役職、ではなく、万治さんと誰々、みたいな感じのつながりのほうが強い。向こうの企業では「次の日に解雇」みたいなこともありますし、会社自体もどうなるか分からない。どんなに優秀な人でもそれで解雇になることがあるので、セーフティネットを自分で張るという意味もあって、個人の横のつながりってすごく強いんですよ。

近田:人と人とのつながりであったり、パートナーであったりというのが大事だというのは今お話を伺っていて改めて感じました。先程加藤さんからは変わった人との出会い、というお話がありましたが、鈴木さんのご経験の中ではいかがでしたか?

鈴木(裕):僕はあまり企業側では変わった人と会ったことないんですよね。むしろアクセラレーター側に変わった人が結構いて。やっぱりすごく熱量があって、自分事として捉えてくれるような人が入っていると、その人がもう宣伝マンになって宣伝してくれるんですよね。お願いもしていないのにどんどん広げていってくれる。そういう人との出会いがあると、僕らもうれしいし、相手側もすごくやる気を持ってやってくれて、僕らはそれに引っ張られる…みたいな相乗効果で、うまくいくという経験はあります。

近田:スタートアップと企業の間に入るアクセラレーターや、間に入る役割の方がいて連携が起こり得るのかもと感じたのですが、いかがですか?

鈴木(裕):その通りだと思っています。間に入る人がどんな人か。今、アクセラレーターの人って結構そうやって頑張ってくれる人多いと思っていて。加藤さんのお話にあった大企業側の人も同じく、オープンイノベーションをやっている人はある意味そういうアクセラレーターに近い人だと思うんです。そういう人が僕らの技術に興味を持ってもらえると、すごくつながりやすいんじゃないかなという気がしますね。

鈴木(万):私もその通りだと思います。シリコンバレーにいたとき、自分の身をどこに置いていたかという話なんですけど、自分は駐在員ではありますが、多くの時間とスタートアップの人たちと飲んで議論していました。転職まではしないものの、スタートアップのほうにどれだけ身を置くかということで、駐在しているときの得るものはかなり違うのではないでしょうか。

スタートアップと大企業の間でギャップがあるだけではなく、実は大企業の中でも新事業開発をやっている人たちと、従来からの既存ビジネスをやっている人たちの間にはギャップがあるんですよね。スタートアップの方も大企業の方も、何年か先の素晴らしい世界や同じゴールを夢見ているわけじゃないですか。例えば、デンソーの中でも新事業開発をやっている人たちも、既存の事業をやっている人たちも、それぞれの時間軸で会社をよくしよう、社会をよくしようと思って頑張っています。

その時間軸が違うだけなのに、なぜかお互いディスり合う場合も少なくありません。そういう対立構図を目にすることはすごく残念です。

新事業開発をやっている人たちというのは、その宿命として、ほとんど“当たらない”事業を作ることに時間を使い、自分のキャリアを犠牲にする覚悟で取り組んでいます。そうして会社の未来に対して取り組んでいます。一方で、今ある既存の事業は、ただのオペレーションだと言う方もいますが、そんなことはなく、今日、足下のお金を稼ぐ既存の事業は、やっぱり難しい。それぞれの難しさがあって、それぞれ頑張っているのだからお互いリスペクトしたいですよね。

みんなパートナーで、社会をよくしたいという同じゴールを目指して頑張っているんだから、お互いを理解しあえれば企業の中もよくなるし、スタートアップと大企業ももっといい関係を築けるんじゃないかなと思って、今は活動していますね。

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近田:パートナーとどう新しいことを作っていくかということで、もっと可能性があるのではないか、もっと上手いやり方があるんじゃないか、ということですけど、もっと大企業がこうなったら、スタートアップがこうなったら、というところを交換できればと思います。まずスタートアップの観点から加藤さん、鈴木さんのほうからコメントをいただけますか。

加藤:最近は増えているかもしれませんが、過去これは素晴らしいなと感じたことがあって。大企業さんの中からスタートアップに出向してきた方がいます。さらに素晴らしいなと思ったのは、その方がとにかくやる気がある、やる気を失っていない状態の方であるということ。スタートアップにどっぷり浸かるような取り組みですね。

各企業や各局面によって、大手企業の中の状況も異なると思います。それを、「こういう状況で」「こういう決裁ラインになってて」「実は予算が」とかお互いに率直に話したり、そういう中で可能性を探していくことでいろいろな手段が生まれてくるというか。双方の理解が進むということにとっては、非常によくワークした事例でした。

鈴木(裕):うちの会社の場合はお客さんが結構ついてくれていた部分もあって、そこでの開発を急がなきゃいけないことが多くて。お客さんに納品するのと同時にうちの開発も追いつかせなきゃいけないみたいなことがあるんです。そのときに、お客さんがすごく自分事として捉えてくれて、一緒になって開発を進めてくれるときがあるんですね。

それって別に「この技術を自分たちのものにしたい」というわけではなくて、僕らも一緒になってやりますよといって一緒に開発を進めてくれるような方というのはやっぱりいらっしゃるんですよ。そうやって動いてくださると、すごく僕らとしても助かるんです。

ただ、自分たちの技術にしてしまおう、スタートアップの技術を奪い取ってしまおうという感覚でやってしまうときっと成り立たない。そこにはある程度信頼感みたいなものも出てきますし、付き合う企業が多くなってくると、こうした協業は難しくなってくるのかなと思っています。どこで切り分けてお付き合いしなきゃいけないのかとか。僕らが自分たちで一生懸命技術開発を進めて、独自に成長させるということが必要になると思うんですけど、それが難しいときに、大企業さんが一緒に「自分事」として一緒にやってくれる。そんなことがあるとすごく助かるな、というのはありました。

近田:万治さんのお話にもあった相互補完のところですね。根っこには信頼関係であったり、人と人とのつながりもあるかもしれません。

鈴木(万):おっしゃる通りで、対等な関係というのが基本ルールですよね。実は自動車業界は垂直統合なのです。垂直統合ということは、横の存在というのは競合しかいないんです。自動車業界がなぜオープンイノベーションが苦手かというと、その理由一つには、そもそもそういう「横の関係=対等なパートナー」という関係性がないことが挙げられます。日常の業務で、横のパートナーという関係がほとんどないため、対等に話せない人が多いのではないでしょうか。

その関係性において大事なのは、お互いにお互いをレバレッジ(高め合うことが)できる関係であることです。スタートアップから見て、その大企業が自分たちをレバレッジできれば付き合うし、そうでなければ付き合わない。社員と企業ともよく似ていると思うのですが、どちらかが支配的でもなく、そして依存的でもなく、お互いに対等な契約で結びつくという感覚も、きちんと持っておくと良いと思います。

加藤さんがおっしゃった大企業からスタートアップへの出向というのも、有効な方法だと思います。体験しないと分かりませんし、体験すれば、多くの学びを得られます。大事なことは、その人が戻ってきてからどう処遇するかですよね。「行ってきたからいいだろう」みたいな感じで、その人の学びを組織で学ぶ姿勢なしに受け入れてしまうと、本人がすごく苦労することになります。

お互いの目的を明確にし、何を求めていて何が提供できるかを語ろう

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近田:お互い何を目指して、何を勝ち得たいのかは結構クリアにすべきだというのは確かにありそうですね。そういう会話は結構オープンに出るものですか?

鈴木(万):本当に大事です。そこをきちんとやらないから、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の人たちが苦労するんだと思います。大企業とのコラボレーションって、アウトプットを何にするかって本当に難しい。普通のベンチャーキャピタルの目標はキャピタルゲインなので成果指標がはっきりしています。しかし、コーポレートベンチャーキャピタルだと、よく「戦略的シナジーとは?」みたいな話になるわけです。

スタートアップの方々は、大企業の何を使って自分たちをレバレッジするかということを頭に置いてやられるといいかなと思います。逆に大企業側もそれを自社の魅力としてアピールできないと上手な連携は難しいのではと思います。

國土:ベースの信頼関係を作るという意味は大事だと思うんですね。だから一緒に飲みに行くのもありだし、アメリカでも一緒に飲みに行って信頼関係作るってごく普通にやっていることですし。

それから、日本よりもアメリカのほうがウェットだと僕は思うんですよね。例えばアメリカ人のスタートアップの方と何回か話していればその方の家に招かれて、子どもとか家族とか含めて、日曜日にランチを一緒にとりながら雑談をしたりってなると、こちらがどういう人なのかを彼らは見ているし、本当に信用できる人なのかどうなのかを判断して、信頼できるとなったらもっと踏み込んで進めよう、みたいなこともあります。だからそういう意味では、日本よりももっと見定めているというか、ウェットだなって感じますね。

ビジネスでいうと、例えばヨーロッパの数兆円を売り上げているような世界的な企業の方が会社に来て、開口一番「我々はこういうビジネスをやっている。でもあなたたちがやっているような領域には全くテクノロジーがなくて、今後一緒にやっていくことによって大きく市場をとれると思います。あなたたちが今一番困っていることは何ですか?」というわけです。

例えばマーケティングのリソースや世界中に展開している営業拠点、量産化に必要な施設。そのスタートアップの中に何が足りなくて、どういう手伝いをしてほしいのか言ってくれというところから話を始めるんですね。

一方、日本のある会社ではこんなことを言ってて。「我々はあなたがたの技術を非常にいいものだと思っている。一緒に今後の協業の可能性を図りたいので、お互い持ち出しでやりましょう」とか、「共同開発の費用を一部負担しますので見積書をください」と……。この違いですよ。

いかに信頼関係を築いて、その中でビジネスの話をどう組み立てていくかというアプローチをとらなければなりません。それぞれ独立した会社で、なおかつパートナーですから、そういう立ち位置でのディスカッションみたいなものが冒頭から必要かなと思います。

知財を含めた法的知識のインプットも、スタートアップCEOは避けてはならない

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近田:技術に関する情報開示の必要性や実情はどうなのか、スタートアップのお二人から、知財などにまつわるご経験があればお願いします。

鈴木(裕):弊社は、ファーストステップでお話するときは最低限の情報しか出しません。最低限の情報しか出さないので、その最低限の情報でどうやって興味を持ってもらうかってすごく工夫が必要だなと思っています。

深いことを知らないで、なんとなくこういう特徴があるんですという話をして。それだけで「これうちで使えます」と思える人って、さっきの加藤さんの話じゃないけど、相当変わった人ですよ(笑)。そういう変わった人がすごく来てくれるというのは幸せなことではあると思うんですけど、それでお話していく間に、もうちょっと詳しい話をしましょうという話になったときにNDAを結びます。それで情報開示をしていくというスタイルをとります。

ただ全部を出すわけではなくて、技術は僕らベンチャーの生命線ですし、それをなんでもかんでも簡単にどんどん出しますよというのはやっぱり難しい。そこは先程の信頼関係の部分もありますけど、どこまで開示してやるべきかというところはある程度考え、開示できる範囲でまず話をしていきます。踏み込んでいくごとに相手側からも情報が出てきますから、その情報をどう扱うかもありますし、そのあたりでお互いの信頼関係ができあがってきます。

そこから先というのは、バックグラウンド特許やフォアグラウンド特許、どの点を僕らが知財として必要としているのか、彼らに必要なのはどこか、共同特許はどのようにとっていきますかということを、あらかじめ契約の中で明確にした上でスタートさせていきます。

自分たちの持っているもの、将来出来上がるもの、相手が持っているものはちゃんと整理しておかなきゃいけないと思いますね。

加藤:今のお話に重なる部分も多いですが、我々の場合はソフトウェアな部分もあるということで、知財で必ずしもカバーしきれない部分もあるというのが実態です。その中で、今日時点でのアセットを見ていただくと同時に、改善速度、技術の進化のところも見ていただきます。例えば1年後、我々がここに集中していって、いろんな業界とコラボレーションしてノウハウを蓄積して、大手と比較してどちらが速いかというお話をさせていただくこともありますね。

全ての部分で予算は勝っている大手企業と我々で、ある領域だけを比べた場合に、技術だけを大手さんが全部持っていこうとしても、それが本当にいい関係性になるかどうかというところは、折を見て話すようにさせていただいてます。そういう会話ができるように、前提で信頼関係をきちんと、というのはおっしゃる通りですし、そういう深い会話ができるようにもしていっています。

加えて、技術だけでなく人に価値を置いていただくというところもなるべくお伝えするようにしています。優秀な社員もおりますので、そういう人間をきちんとアピールしています。技術と人と、あとは将来の伸びしろというところですね。

國土:知財についていうと、スタートアップ側も甘えているところがあるんですよね。技術をやっているから…と。財務とか知財戦略とか、そういう会社の経営について、我々は技術力でやっているので知りません、みたいなCEOも結構いて。でも、会社のCEOなら勉強しましょうという話なんです。

知財をどう守りますかって、知財戦略が頭に入っていて、自分の知財の整理や、自分がやっているビジネスの中の知財というのが世の中でどうなっているのか。自分たちの技術をどう知財化するのか、ノウハウ化するのかとか。そういうのも全部やって当たり前なんですよね。

技術系スタートアップってそれをしていないところも多くて。知識がなければ大企業と一緒にいろいろやる上でも支障が出るし、ビジネスの中でのネゴシエーションでも不利なほうに着地してしまいますよね。なので、そのへんはきっちりスタートアップ側もしっかり準備して勉強しておくべきだと思います。


鈴木(万):私からも二点お話してもいいですか。一つ目は、シリコンバレーのスタートアップは結構テック系のところが多いのですが、IP(特許)を含めた法務領域とHR(人事)はすごく強くしています。自身でやるという手もありますが、法律事務所とかが出世払いのサービスを提供しています。良いスタートアップは必ず法務とHRが強いですね。

もう一つは、シリコンバレーではディープテックのスタートアップばかりではなく、サービスとかマネタイズがすごく得意な人たちもたくさんいます。「そんなアイデアみんなに言っていいの?」みたいな感じで、みんなに言いふらしている人たちもいます。そういう人たちは何を考えているか? それは、こんなカラクリです。自分の考えたアイデアは、いいアイデアほどみんな似たようなことを考えている、という前提なのです。だから、シェアすることによってよりいいアイデアが出てきて、またよりいいアイデアが出てきたら自分はさらにいいアイデアをまた出して、みたいな感じで、スパイラルアップでアイデアをよくしようという人たちもいます。

いずれにしても國土さんがおっしゃられたように、法務とかIPって大事ですよね。そこには、ある程度のお金を掛けておかないと、あとでビジネスが当たったときに大変なことになって後悔することになります。シリコンバレーでの「出世払い」のようなシステムが日本でもできればいいなと思っています。

國土:日本ではほとんどないですよね。

近田:ちなみに、TEPとしてはサポート支援の枠組みの中で法的なサポートもされてらっしゃるんですか?

國土:基本的には無償でいろんな相談事には応じていますので、ファーストでいろんな相談をしていただくには全然OKです。契約書作成などの実務については仕事として別途支払っていただくということになりますが、ネットワークの中に弁護士事務所とか弁護士とかがいますので、その方のメンタリングやレコメンデーションを通して、その方にお願いしたり別の方を探したりするのもいいと思います。

カルチャーフィット重視で、人同士のつながりを強固なものに

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近田:続いて参加者の方から質問をいただいています。ディープテックスタートアップとして採用をどうしていますかということで、ご意見や知見があればお願いします。

鈴木(裕):僕らは結構人材を固めるほうを先にやっていました。どちらかというと、技術開発は初期のほうで進めて終わっていた部分があって。むしろマーケティングというか、もう少し会社として事業的な面で成長させる必要があってスタートアップを始めたところがあるので、そういった意味で、最初に人材を固めるという点を結構重視しました。

ただCFOとか財務系に強い人とか、あるいは僕らの場合プラントを開発していかなきゃいけないので、プラントをずっとやっていた方とか、そういった経験者を採用しなきゃいけなかったので、ある程度コストをかけて人材紹介会社やエージェントに頼み、いい人を選ぶというかたちをとりました。

それから僕らが一番重視していたのは、僕らの会社のカルチャーフィットです。僕らはカルチャー1番、技術2番と言っていました。まずうちの会社のカルチャーに合う人を選んで、その人がうちの技術とちゃんとフィットしているのかを見た上で採用してきたので、実はうちの会社って似たような性格の人がそろっていて。うちのもともとの創業者が穏やかな人で。そういった人たちが気持ちよく仕事ができ、新たに入ってきた人もフィットして上手く仕事ができる。そういったところを重視して人を選んでいますね。

加藤:我々の場合はまだ技術開発が足りていない状況でしたので、エンジニアを優先して採用してきました。日本ではAIのエンジニアが海外と比べて少ないということで、結構苦労した側です。

鈴木さんからもカルチャーフィットというお話がありましたが、我々もカルチャーフィットの手前で、一緒にカルチャーづくりをしていける方に入っていただいています。特に営業系、事業開発系、エンジニア系という職種間でよくケンカになるのを見てきていましたので、両者が互いにリスペクトできるような文化にしていきたいこともあって、そういうことをむしろ一緒に作ってくれるような方々を優先しています。

鈴木(万):お二方が言われたカルチャーフィットというのは、スタートアップと大企業の間でもすごく重要ですよね。よく「自動運転のスタートアップはどこそこがいい」と機械的にベンチマークする人もいいますが、結局カルチャーフィットが悪いと、そのスタートアップの力は引き出せません。

カルチャーというのはスタートアップのカルチャーと大企業のカルチャーではなくて、目指しているものに対して同じ軸を共有できるとか、同じ価値観を持っているといったこととかが大事です。まず二つの違うもの(スタートアップと企業)があって、そのコラボレーションによってアウトプットが出てくるわけなので、カルチャーフィットがよくないとそこの効率は下がってしまうんですよね。

ギャップを乗り越えるというチャレンジも、もちろんやるべきだと思いますが、もっと簡単な方法もあるということは理解しておいたほうがいいし、大企業としては、ドライなベンチマークだけで決めないことがすごく大事だと思います。

國土:私からもお話しすると、スタートアップって少ない人数でいろんなことをやっているので、そこの志が同じじゃないとなかなか難しいという部分はやっぱりあるんですね。とはいえ一人でスタートアップをやっていると、いろんな困難も多いものです。一人で考えて一人で乗り切るってすごくタフなんですよ。だからこそ、チームで乗り越えるという発想は必要だと思います。

アメリカの著名なベンチャーキャピタルの方に、最終的な投資判断を下す項目を聞いてみたら「そのチームがいろんな困難を乗り越えられるかどうか」だという話もあって。もちろん技術や狙うマーケットも大事だけれど、最後の最後、最も重要なファクターは、そのチームが困難を乗り越えられるかどうかだということをよく聞きます。

鈴木(万):そうだと思いますね。米国では投資家向けのピッチって4分とかで、スライドも6枚ぐらいということもよくあります。6枚ですよ。でも、その中に必ず1枚「チーム」というのがあるんですよね。そこに結構多くの情報が詰まっています。質問は一つ、「Why you?」なんです。「なぜあなた(たち)ならできるんだ?」というところなんですね。そういう意味でもチームというのは大事だと思うし、大企業も投資家も、そこをよく見ていると思います。

近田:今のお話を伺うと、大企業の側も自分たちのカルチャーが何なのかを見逃しがちかもしれません。組織が完成しているだけに、案外気づかないというか。自分たちのチームとかカルチャーとか、自分たちは何なのか?という、「Why you?」というか「Why us?」みたいな。

鈴木(万):そうです。いつも自分たちは他の人たちに向かって「Why you?」と言っているわりに、じゃあ「Why you?」って言われたらどう答えるんだ? ということに対して大企業は備えなければいけない。いくら相手のことが好きでも、相手から好きになってもらえないとディールクローズしないわけなので、どうやったら相手から好かれるかということですよね。そういう意味では、「Why you?」って聞くだけじゃなくて、逆に聞かれたとき、「Because」を答えられるような大企業でありたいですよね。

近田:最後に、これからスタートアップと大企業のそういったパートナーシップ連携であったり、あるいはオープンイノベーションを進めていくにあたって、大事にしていきたいところをお伺いします。

加藤:今日のお話にもありましたけど、大手でもベンチャーでも“人と人”ということかと思いますので、仕事を終えたあとにいい関係になれるような、そういうお仕事をさせていただきたいと思っています。それを頭の中に置きながら、日々協業自体もいいものにしていくというか、やったあとに「後味悪いね……」という仕事になるのを避けたいというのが率直なところです。

鈴木(裕):今日はいろいろ勉強になることもあって、とにかく僕らも今いろんな大手の企業さんと一緒にやることも多くなってきてますので、お互いにお互いを信頼し合って、自分たちが目指すものをお互いに作り上げていく。そこをしっかり重視して、これからも取り組んでいきたいと思います。今日はありがとうございました。

鈴木(万):本当にすばらしいディスカッションの場に呼んでいただいてありがとうございました。私の発表の中でも少し触れましたが、お互いに理解し合うことが大事とはいうものの、人間や組織はなかなか自分のことは自分でわからないんですよね。そういったときに、“壁打ち”は非常に効果的だと思います。そういった意味で、私は大企業シミュレーターとしても使えると思うので、何かあればお声がけください。

國土:万治さんからお話があったように、どっちがいいとか悪いとかではないと思うんですよね。大企業側もベンチャー側も、お互いカルチャーが違うので、クロスカルチャーでお互いを理解するということと、そのベースはやっぱりお互いリスペクトすることだと思います。そこを外さなければ信頼関係も自然とできてくると思いますし、その信頼関係の上に、実際のいろいろな契約に基づいた事業が展開できて、お互いwin-winの関係が築けるんじゃないかなと思います。

近田:以上で終了したいと思います。個人的には、オープンで率直なコミュニケーションをとっていくことがとても大事だと思っていて、そういう意味で今日のこのディスカッション、皆さん率直にコミュニケーションをとってお話いただいたことに御礼を申し上げます。ありがとうございました。

(2022年2月 J-TECH STARTUP SUMMIT)

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