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なぜブランド価値の最大化を支援するナインクラフトを起業したのか?

この度、新しく株式会社NineCraft(ナインクラフト)を立ち上げました。

ナインクラフトは共感と共創をクラフトし、ブランド価値の最大化を支援するコンサルティング会社です。

「パーパスベースドインスタグラム」など、マーケティングにおける独自の考え方を提唱しています。

今回の記事ではどんな思いで起業し、どんな事業をしたいと思っているかについてお話ができればと思います。

私たちがクライアントに対して考える「姿勢」みたいなものについて、少しでも感じていただけると嬉しいです。

少し長くなりますが、よろしくお願いします。

SNSマーケティング支援事業でぶつかった壁

私はエンファムに新入社員として約9年前に入社し、現在は取締役CMOとして勤務をしてきました。

ナインクラフト創業後も引き続き取締役として携わらせていただく予定です。

エンファムは「世界中の子どもたちを笑顔にする」をパーパスに掲げるエンタメディア企業です。

「情報誌」、「WEB・アプリ・SNSメディア」、「イベント」が三位一体になった「リトル・ママ」という育児メディアを運営しています。

情報誌は月間30万部、WEB・アプリ・SNSメディアは登録者26万人、イベントは年間来場10万人と子育てメディアとして日本屈指の規模を誇っています。

私は営業→エンジニア→プロダクトオーナー→マーケターと立場を変えながら、リトル・ママメディアの成長過程で様々な関わり方をしてきました。

今現在は広告主のSNSマーケティング支援を行う部署を管轄をしています。

結果だけ見れば、創業以来の過去最高売上を記録するなど、SNSマーケティング支援事業は少なからず事業貢献をしてきました。

吉野家様、LIXIL住宅研究所様、ダスキン様、西部ガス様などいくつものアカウントを大きく伸ばすことに成功しており、売上増に直結する成果も数多く生まれています。

中には毎月1,000万円以上の売り上げ増に繋がったケースもあるなど、「リトル・ママメディア×SNSマーケティング支援」のサービスは確実に結果を生み出すことができています。

しかしながら、成功の裏では失敗も経験してきました。

契約途中でプロジェクトが打ち切りになったり、契約後にアカウントの運用を止めてしまったりと、思い出すだけで今でも悔しさが込み上げてくるほどです。

もちろん、全プロジェクトが上手くいくということはありえません。

客観的に見てもエンファムのSNSプロジェクトの顧客満足度は高く、ビジネスとして十分に成り立つ事業モデルを作れたとは思ってはいます。

しかし、そんなことはどうでも良いんです。

「今の自分の実力では貢献できない企業がいた」
それが全てです。

自分の考えた戦略が上手くいかなかった。
自分の考えたコンテンツが伸びなかった。
自分が指揮したチームで結果を出せなかった。

私はこの壁を乗り越えるためにさまざまな試行錯誤を繰り返し、とにかくがむしゃらにやってきました。

中には細かな点を見直すことで改善することができたものもありました。 

しかし、それでもまだまだ改善レベルが足りないと思った私は、もっと根本的な変化や発想の転換を探し求めました。

そのようにしてもがいていった結果、私は大切なことに気がつき、それがナインクラフトの誕生に繋がっていくことになったわけです。

壁を突破しようともがく中で見つけた大切な価値観

壁を突破するために何が必要なのか?

SNSマーケティング支援において私がやってきた方法は、「コンテンツを発信して潜在顧客との出会いを作る」というアプローチ方法でした。

90%のクライアントはこの方法で大きく伸ばすことができました。

しかし残りの10%の企業は思うような結果に繋がりませんでした。

私はありとあらゆる原因を考えました。
たくさんの人に会い、様々な話を聞きました。

そして、ひとつの仮説に行き着きました。

それは、「広告を活用した施策を増やした方が良いのでないか?」と言う仮説です。

私がやってきた施策は、魅力的なコンテンツを発信してオーガニックで伸ばしていくというスタイルでした。

そのため、基本的に広告を大きくかけていくことはありません。

しかしながら、オーガニックによる数字の伸びが悪い場合、数字は極端に鈍感してしまいます。

そこで広告を活用することで、効果を補完し合うことができないかと考えたのです。

短期的な数字の跳ね返りを目的としたマーケティングを「ダイレクトレスポンスマーケティング」と通称しますが、まさにこの考え方が足りないのではないかと仮説を打ち立てたわけです。

ダイレクトレスポンスマーケティング専門の広告代理店に会いにいく


私は早速、ダイレクトレスポンスマーケティングを専門とする代理店にコンタクトを取り、話を聞きに行きました。

短期的な目標を達成することが目的の彼らは、とにかくさまざまな方法論を言語化していました。

バナーのクリック率を上げるための方法、LPに流入した顧客を可能な限り申し込みに繋げるテクニック。

ABテストを繰り返すことでわかってきた事実を、彼らは数字的根拠を持って明確に示すことができました。

正直に申し上げて勉強になることばかりで、これをやれば結果が出るだろうということは容易に想像ができました。

しかし、彼らの話をふむふむと聞きながら、どうしても頭を離れない疑問がありました。

それは「彼らが担当するブランドの顧客が、彼らの話を聞いたら、どう思うのだろうか?」という疑問です。

スマホを扱う人間の無意識を攻略するために、彼らはたくさんの知識を持ち合わせていました。

例えば、「『初回特典をお試しする』というボタンを用意すれば人は気軽にクリックをする。そのボタンをクリックした先で定期便を売り込めば、高い確率で売れる」というテクニックもそのひとつです。

そのほかにもたくさんの「ハック方法」があり、彼らはとにかく様々な方法を自慢げに話してくれました。

凄いなとは思いました。でも、好きなブランドが裏でそのようなことをしていたらちょっと嫌だなと思ったのも事実です。

とはいえ、実際に顧客に言うわけでもないし、私はこの業界に対して全くの無知でした。自分が気にしすぎなのかなと思ってそのままにしていました。 

起業のきっかけになったひとつの商談

そして、後日、私はたくさんのダイレクトレスポンスマーケティングの知識を携えて、自分が支援をしているクライアントのもとへ戻りました。

打ち合わせでは意気揚々と一朝一夕で身につけた知識を披露し、ダイレクトレスポンスマーケティングの必要性を訴えました。

その時のクライアントの様子は今でも鮮明に覚えています。

だんだんと顔が曇り、明らかに私の話に違和感を感じているのがわかります。

私は話終え、恐る恐る感想を聞きました。

クライアントはゆっくりと口を開き、ピシャリと言いました。

「そういうことをすれば売上は作れるかもしれない。でも、だからなんなのだ?私たちはそのようにして顧客をただの数字のように扱って売上を作りたくはない。そのようなことをしては気持ちよく眠れないじゃないか。君に求めているのはそういうことではない」

私はガーンと頭をハンマーで打たれたような気持ちになりました。

このクライアントは「顧客をただの数字のように扱って売上を作ることはしたくない」という明確な価値観を持っていました。

それは私が普段クライアントに伝えている「人を人として扱うマーケティングを中心に据えよう」という価値観と共鳴するものがありました。

そして、そのような価値観を私が持っているからこそ、このクライアントは私を選んでくれていたのです。

それなのに私は目に見える「数字」を追うあまり盲目的になり、大切なことを見失っていたのです。

私は大変なショックを受けました。
そして、自分の言動に激しく後悔をしました。

人は生きる上で価値観というものを持っています。

「金で全ての幸せが買える」というのも価値観ですし、「お金で幸せは手に入らない」というのも価値観です。

価値観には正解はなく、あるのは共感だけです。

そして、今回お話をさせていただいたクライアントが言っていることも価値観です。

「お金は手に入れば良いと言うものではない。

自分たちが大切にしたい価値観を貫き通しながら、人の役に立つことで利益を生み出していく。そうでなければ、なぜビジネスなんてやるのだ?

楽をして効率よく結果を生み出したいのであれば、君を選ばない。

簡単ではないが、私たちが理想とする方法で結果を生み出せることを共に目指せるから、君を選んだのだ。」

そのような言葉で直接言われたわけではなかったのですが、私はそのような意味合いとして受け取りました。

商談から学んだ2つのこと

私は今回の一件を通じて大きな学びを2つ得ました。

ひとつは、今一度自分自身が大切にしている価値観に自信を持ち、改めて深めていく必要があるということです。

自分の方法で結果を出せなかったことに焦るあまり、私は今と違う方法に答え見出そうと躍起になっていました。

しかし、私が本来評価されているのは「顧客との本物の関係性」という目に見えない大切なものを愚直に作り上げていくという姿勢でした。

足りなさがあったとすれば、その姿勢の至らなさであったと今では深く反省しています。

欲を欠かず初心に帰り、何を大切にしていくかをもっと煎じ詰めて考える必要性を強く感じました。

もうひとつの気づきは「価値観の可能性」です。

今回、クライアントは以下のような価値観を持っていました。

「顧客を数字のように雑に扱って売上を作りたくはない」
「自分たちが誇れるやり方でマーケティングをしたい」

私はこの価値観に強く共感しました。

人に伝わった価値観は相手の共感を生み出します。
そして上手くいけば、その共感を中心に新たな仲間がでに、コミュニティが生まれます。

そのようにしてできた繋がりは簡単に切れるものではなく、「ファン」と呼べる間柄になる可能性もあります。

私はこの価値観というものを企業の発信に取り入れることで、ファンづくりに活かすことができるのではないかと考えました。

価値観は「ある物事に対する個人的な主張」です。

打ち合わせの場では「ある物事=マーケティング」に対する「個人的主張=顧客を数字のように雑に扱って売上を作りたくはない」とい考えを、クライアントは主張しました。

そして私はその価値観の共感者となりました。

これをもう少しプロダクトや顧客側に引き寄せるテーマ設定(ある物事の設定)ができれば、顧客をはじめとしたより多くの人の共感を断続的に作ることができるはずだという確信を抱いたのです。

カチッと音を立てて、私の頭が新たなフェーズに進化していくのがわかりました。

ナインクラフトの誕生

私はすぐにサービス資料を書き直し、頭の中に湧いてくる様々なアイデアや考えを形にして、プロダクトの説明資料に落とし込んでいきました。

そのようにして新しいインスタグラム支援サービスである「パーパス・ベースド・インスタグラム」という考え方を確立させました。

パーパス・ベースド・インスタグラムとは、ブランド価値から発信すべき価値観などを言語化し、ファンづくりにつなげていく新しいインスタグラムマーケティング手法です。
(別記事に詳細ありますので、詳しい内容はそちらをご覧ください。)

私は現在運用しているアカウントですぐに「価値観」を発信するコンテンツを作って投稿しました。

すると、1回目のトライで通常の約5倍のエンゲージメントを獲得できたのです。

また、実際にクライアントへ話を持ちかけてみると「面白い!ぜひ、力を入れていきましょう!」という共感を得られ、明らかにチームの雰囲気が変わっていきました。

「これは何かある」

自信をつけた私は広告代理店を経営している同級生の友人にコンタクトを取りました。

彼の会社はダイレクトレスポンスマーケティングを主軸として企業のマーケティング支援を行っている会社です。

「価値観」という目に見えない「コト」を軸として共感を作っていくことが、彼のクライアントの目にどう映るか知りたかったのです。

アポイントでは私の考えを伝え、相手の反応を注意深く観察しました。

結果は予想以上のものでした。

ダイレクトレスポンスマーケティングしかしてこなかった企業の多くが、私の考えに共感をしてくれたのです。

「ぜひ、お願いしたい」
依頼がすぐに生まれ、急ぎ体制をととのえていきました。

共感してくれたのはクライアントだけではありません。

話をしたら広告代理店の社長も私の考えの共感してくれ、新たな仲間となってくれました。

そのようにして出来上がったのが、株式会社ナインクラフトです。

ナインクラフトが目指したいこと

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリによる小説「星の王子さま」の一説にこんなセリフがあります。

ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。
いちばんたいせつなことは、目に見えない。

サン=テグジュペリ, 河野万里子訳, 新潮社, 2006, p. 108

これは、王子さまとお別れをする直前、キツネが教えた秘密の言葉です。

世界中の多くが共感するキツネの価値観であり、私も大好きなシーンです。

「良き人生を過ごすための秘訣」としてキツネの価値観を考えたとき、その発想を否定する人はあまりいないと思います。

しかし、「良きマーケティング活動を行うための秘訣」としてキツネの価値観を持ち出すとしたら、どうでしょう?

共感する人はぐっと少なくなると思います。

マーケティングに携わる人の多くが、数字を「いちばんたいせつなこと」として考えているから、そのようなことが起きるのだと私は考えます。

数字はビジネスにおいて必要不可欠な要素です。

ビジネスは意思決定の連続であり、意思決定の判断材料となる数字は、人にとっての空気や水に等しいものだと言えるでしょう。

人は空気や水がないと生命活動を維持できません。
それが大事なものであることは間違いありません。

しかし、空気や水を得ることだけを考えて過ごす人生が、果たして良き人生と言えるでしょうか?

これは「マーケティング」と「数字」の関係に当てはめて考えるべき、重要な問いであると私は思います。

「空気や水」が人生における「いちばんたいせつなこと」ではないように、「数字」がマーケティングにおける「いちばんたいせつなこと」になることはありません。

極当たり前の話ではありますが、この当たり前を忘れてマーケティング施策を行なっているチームが少なくないのです。

数字を「いちばんたいせつなこと」とみなす効率至上主義は短期的に見れば問題なくとも、長期的に見れば顧客や従業員、あらゆるステークホルダーとの関係性において支障をきたす原因になります。

ナインクラフトは企業のマーケティング活動における「いちばんたいせつなこと」を取り戻す存在になりたいと考えています。

「いちばんたいせつなことは、目に見えない。」

ビジネスシーンにおいて、キツネの価値観に共感してくれる方がどれくらいいるかはわかりません。

しなし、少なくとも私たちナインクラフトは、キツネの価値観は企業のマーケティングにおいて大切なものになると信じています。

そしてそれが、私たちが大切にしたい「価値観」です。

これからナインクラフトをどうぞよろしくお願いします。


p.s.
エンファムには「世界中の子どもたちを笑顔にするエンタメディア企業になる」という素晴らしいビジョンがあります。

今回、私がやりたいことがエンファムのビジョンと違った方向になってしまったちめ、組織を別にした方がよいという結論になりました。

しかしながら、私はエンファムのビジョンに強く共感していますし、引き続き同じ仲間としてそのビジョンを目指していくつもりです。

SNSマーケティング支援事業においてもナインクラフトはコンサルティング領域を、そしてエンファムは運用領域をそれぞれ担っていきながらともに事業を推進していく予定です。

エンファムの運用チームは、全員が子育て中のママさんで構成されており、価値と雇用を明確に生み出し続けています。

ビジョンとぶれないエンファムの事業展開は本当に素晴らしいと思っています。

組織上分かれはしますが、それぞれの分野を高め合いながらクライアントへの貢献度を増やしていければと思います。

どうぞよろしくお願いします。

サポートいただけましたら、活動費として使わせていただきます。