見出し画像

卯年

来年は卯年である。そう今断言できたのは、目の前に干支飾りフェアと称してうさぎの置物がたくさん置かれているからだ。様々な白いうさぎ達が並んでいる。真っ直ぐ座っている者もいれば、扇子を広げてこちらを見て踊っている者もいる。まさに、来年は卯年だと知らせてくれているようである。

来年が何年であるかをすぐに答えられる人はどれくらいいるのだろうか。

十二支、干支。少なくとも中学生の頃までは今が何年か明確に知った上で生きていたように感じる。10数年。干支を一周したことに達成感でも覚えて、それ以降の興味を失ったのか。

思えば、そこには年賀状が強く絡んでいるような気がする。まだ年賀状文化が当たり前にあった。友達や家族に出す年賀状には、どこかしらに十二支を入れて作っていた。それで今年が何年で、来年からが何年なのか。それを自分の中に覚え込ませる唯一の手段だったのかもしれない。

高校生になり、自分は出す相手も減り、それ以上に、来る相手がいなくなってきた。徐々に制作枚数は減り、大学進学。もはや出すことはなくなってしまった。


僕は年賀状という文化が好きだ。正月のダラダラした日々に、ポストに入っているハガキの束。誰から届いて、どんな内容か。それを見るのがやはり正月シーズンの醍醐味であった。

今年も自分宛に年賀状が届くことはないであろう。せいぜいLINEでの「あけおめ」というやりとりが山である。それすら最近はないような気もしてならないが。余談ではあるが、日本の「余祝」という考え方が好きである。あけましておめでとう。最初におめでとうと言い切ってしまうことでその年を明るいものにしようという祈りが込められている。


帰り際、高らかに天に向かって笑っている者が見えた。なんだかめでたいやつだなと思う同時になんだか幸せな気持ちになった。笑いは大切だ。

来年は卯年である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?