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IoTが非常に奥深いので解説してみる ~その2:モノ(Things)編①~

前回の記事では、IoTの普及がなかなか進まない理由が「コスパが悪いこと」だとざっくり説明しました。これからの記事では、そのコスパの悪さの原因を、IoTを構成する技術要素ごとに紐解きつつ、IoTがより普及する世の中になるには何が必要なのかを探っていきたいと思います。
本記事では、そもそもIoTを構成するのに不可欠な「モノ」(英語ではThingsと呼ぶ)にはどのようなものがあるのか解説したのち、「モノ」の構成要素であるセンサーにフォーカスを当てていきます。

「モノ」を定義するのは難しい

IoTを構成する「モノ」(Things)について説明する文献やWebページは多数ありますが、その定義は文献によって少しずつ異なります。
広義には、私たちが普段使っているようなスマホやタブレットやPCもThingsであるとも言えますし、狭義でいうと、環境などの情報を収集するセンサー機能+ネットワーク送受信機能を備えたデバイスのことを指します。
本項を含む私の記事では、「モノ」を以下のように定義します。

  • 環境情報などを収集するセンサー機能を持つ

  • 他のデバイスとネットワーク(※)を介して接続する機能を持つ

  • 通常の情報収集には人間の操作を必要としない。(基本的には自動で情報収集し続けるし、自動で情報を送信する)

また、以下のような機器たちが「モノ」の周辺にあると考えられます。

  • ゲートウェイ
    →LANとWANの境界線に位置し、「モノ」からの近距離通信を受けてインターネットに転送したり、インターネットからの通信を受けて「モノ」に転送したりする。多くの場合、1台のゲートウェイに対し複数台のモノが接続される形になる

  • アクセスポイント
    →LANの通信を中継する

  • エッジコンピューティングデバイス
    →「モノ」から受けたデータを処理する。例えば、膨大な生データからインターネットに送信したい情報のみを抽出する時などに使われる(例:生データから個人情報とみなされる情報を削除する)

  • スマホ
    →Bluetoothなどで「モノ」とつながる。多くの場合、「モノ」からの通信を中継してインターネットに送る役割を担う。また、場合によっては、収集した情報のデータ処理を行うこともある。

  • タブレット
    →スマホと同様

  • PC/小型サーバ
    →スマホやタブレットと同様。PCの場合はより複雑なデータ処理(機械学習された推論モデルなど)がなされることもある。

スマホやタブレットやPCは、場合によってはゲートウェイ的に使われることもありますし、場合によってはエッジコンピューティングデバイスとして使われることもあります。IoTの世界では非常にポピュラーなRaspberry Piもこれらと同様です。

「モノ」が取得できる情報とは?

モノが情報取得をする場合、大体のケースでは「センサー」を使用します。身近なものでいうと、温湿度であったり重量であったり、そのような情報を何らかのセンサーを使って取得することになります。
どのような種類のセンサーがあるかについては、以下のサイトを見ていただくのがよいと思います。

https://www.chip1stop.com/sp/knowledge/078_types-and-features-of-sensors

上記のサイトでリストアップされているセンサーは、基本的には物体の情報取得のために使うものです。ヒトの情報収集に使うセンサーはそれほど種類はなく、心電のように電気の流れを捉えるものや、パルスオキシメーターのように光を使うもの、血圧計のように圧力を使うもの、体温計のように温度を扱うもの、これらを駆使して情報取得することが多いようです。

「モノ」を設置する際に考慮すべきこととは?

先述の通り、かなりの種類のセンサーがあることを認識したうえで、IoTを実現するために考えるべきことを以下に挙げます。

  1. そもそも、自分のやりたいことを実現するために取得すべき情報が何なのか?

  2. それを実現するにはどのようなセンサーを選ぶべきか?

  3. 生データがあればよいのか?データを加工する必要があるのか?

  4. そのセンサーをどこにどのように設置するべきなのか?

  5. 継続して安定的に情報取得するためにすべきことは何か?

上から簡単な順に並べてみたつもりです。センサー選びはすんなりできたとしても、設置する場合には設置場所の管理者と入念な調整が必要でしょうし、人の情報を取る場合には個人情報管理の問題がついてまわるでしょう。また、ずっと安定して情報を取得することは至難の業です。安定的に電力を供給でき、塵やホコリに耐え、屋外であれば風雨にも耐える必要があり、万が一故障が起きた際にはすぐに取り換えられるようにするとなると、かなりの労力とコストがかかります。ヒトから情報取得する場合は、これらに加えて、激しい動きへの耐性や汗や皮脂への耐性をつける必要があったり、そもそも人体に危害を加えないよう安全である必要があったりします。また、装着の際に不快感を与えてしまうと継続使用が難しくなるため、このあたりへの配慮も必要となるでしょう。
このようなことを考慮しながらIoTを実現していく必要があるため、労力の割に得られる効果は…?となると、なかなか厳しい現実を突きつけられることも多いのです。
ここまで、センサーの設置に関して論じてきました。本来であれば通信に関しても論じるべきところではありますが、長くなりそうなので次回の投稿にて論じることとします。

センサーを広く普及させるには?

センサーの設置で考慮すべきことについて前項で論じてきました。つまり前項で説明したことがセンサーを設置する際のペインポイントであり、広く普及させていくための課題と言えます。単純化すると以下のように分類されます。

  1. 電力の安定供給

  2. 悪条件への耐性確保

  3. 故障や停止に備えた監視運用体制の確立

  4. (ヒトから情報取得する場合)人体への安全性や快適性の確保

それぞれの課題に対して、より簡単でより安価な解決方法を各社が切磋琢磨しながら提示してくるものと思います。例えば電力の問題については、EnOceanなどといった規格が存在します。すべてのユースケースに適用可能というわけではありませんが、自己発電でセンサーと通信機能を動かすことが可能です。

安定稼働を実現するための監視運用体制については、現時点ではめぼしいソリューションがあるわけではありません。こうなると現時点では、「モノ」は故障してしばらく動かないことがある前提で考えるほかありません。

最後に

本記事では、「モノ」の中でも特にセンサーにフォーカスを当てて論じてきました。次の記事では「モノ」の持つ通信機能についてフォーカスを当てて論じていく予定です。

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