死んだ小さな仔猫
学校へいく途中、道端で小さな仔猫が死んでいました。
死んだ小さな仔猫はコチコチになっているようでした。
毛並みもボサボサで、ところどころベッタリとしています。
少し気味が悪かったのですが、それよりも悲しくて、可哀そうで、小さな仔猫を小さな段ボールに入れて、両手かかえて歩いてゆきました。
とぼとぼと歩きながら、学校へは連れてはいけないと思いました。
そこで、肉屋の隣にある空き部屋の隅に、死んだ小さな仔猫をいれた段ボールをそっと置きました。
それから歩いて学校へいって、いつも通りに計算をしたり、朗読をしたり、絵を描いたり、駆けっこをしたりして過ごしました。
その間中、死んだ小さな仔猫のことを考えています。
少し気味が悪くて、それよりも悲しくて、可哀そうな死んだ小さな仔猫。
ノートを開いて、そこに絵を描きはじめます。
死んだ小さな仔猫のためのお墓です。
四角の石を組み合わせて、両脇には器に入ったお線香のようなものを描き、それからは煙が三本ずつ、波打ってきれいに立ち上っています。
まるで記号でしたが、それはとても立派なお墓のような気がしました。
死んだ小さな仔猫は少し気味が悪くて、それより悲しくて、可哀そうなんだけれども、なぜかとてもワクワクして、何枚もいくつもの死んだ仔猫のためのお墓を描きました。
カサカサとした紙が何枚にも増えて、そのうち学校の終わりの時間がきました。
急いで肉屋の隣の空き家にいくと、死んだ小さな仔猫を入れた小さな段ボールがありません。
そのかわりに小さなお米粒がいくつも散らばって、それを一匹の鳩がつついていました。
死んだ小さな仔猫を入れた小さな段ボールを探していると、隣の肉屋の老婆がやってきました。
あんなきみのわるいもの おいたのはおまえか きもちわるい ごみとりさんにもっていってもらったよ おまえもでておゆき
老婆は怒っているのか戸惑っているのか、怖い声で嫌そうに言いました。
叱られたような気持ちになって、身をすくめました。
老婆はブツブツと何か言いながら、いなくなってしまいました。
手の中で紙の束がカサカサとこすれあっています。
ゴミ収集車の中でつぶされていく死んだ小さな仔猫のことを想像しました。
作るはずだった死んだ小さな猫のための小さなお墓のことを考えました。
なんともいえない厭な気持になって、紙は
ゴミ箱へ捨ててしまいました。
――了――
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