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團菊祭五月大歌舞伎『鴛鴦』『毛抜』『幡随長兵衛』どれも、趣向が盛り沢山!

一幕目は51分、二場の舞踊劇『鴛鴦襖恋睦(おしのふすまこいのむつごと)』。ラストで鴛鴦の羽を描いた袖をパタパタと。綺麗でした。

さて、そのストーリーは?

河津三郎は曽我兄弟の父。後に、暗殺される人物だけに、なんやかやで敵が多い。赤っつらの股野五郎もそのひとり。河津三郎を妬む股野は、遊女・喜瀬川を彼から奪おうとして彼に相撲を仕掛け、負けてしまったのである。泉のほとり、河津に生き血を飲ませて狂わせてしまえと、股野は鴛鴦の雄を殺める。悲しむ、雌鶏(右近丈・二役)。すると、残された雌鴛鴦の前に鴛鴦の精が現れる。雌と共に踊る雄の精。実は、血を飲まされて、鴛鴦の精を宿した河津三郎、その人であった。

思いの他、複雑な設定。後に、雄の鴛鴦の霊を宿す河津三郎は松也丈。TV朝日のドラマ『グレイトギフト』で見たが、歌舞伎でも、眉間がきゅっとなっていた。

それと、舞台上の高さ1メートルくらいの台に長唄連中(立て三味線・杵屋巳太郎さん)が座っていて、後半の常磐津と台ごと入れ替わるんだけど、袖に引っ込むスピードがめっちゃ速かった。ドリフより、速かった。

二幕は「四世市川左團次丈の一年祭」。演目は明治時代の終わりに、二世・左團次が復活させた『毛抜』。実は古いお芝居なんだって。主人公は殿様の使者だが、いわば探偵役。あらすじにも「おおらかな」とあるけど、とぼけたお話でビックリ。主人公に言い寄られる役で時蔵丈・梅枝丈、家臣に菊五郎丈に鴈治郎丈と豪華、豪華。後見に團十郎と演出も豪華、豪華。Eテレの『芸能きわみ堂』で左團次丈の『身替座禅』を放送していたのを見たけど、コミカルなキャラクターをコミカルにではなく、大真面目にやる面白さ。大きな毛抜きは左團次丈のキャラクターにピッタリ。もちろん、男女蔵丈にも✨

三幕は団十郎丈の『極付幡随長兵衛』。別名「湯殿の長兵衛」といい、最後の場は風呂場。話の冒頭は劇中劇。歌舞伎座の舞台上に芝居小屋の舞台を設え、成田屋面々の『金平法問諍(きんぴらほうもんあらそい)』が上演されている。酔客をつまみ出そうとして小競り合いが始まる。喧嘩を見守る舞台上の役者たちの熱演を面白く見ていると、私の座っていた席(31番)の左側の通路へ駆け込んで来る足音。走り去った後ろ姿は侠客・長兵衛、その人である。しばらくすると、歌昇丈ら子分たちが、座席の右側の通路をドドドドド。それだけで、凄い迫力。

喧嘩を納めた長兵衛。彼の活躍を「悪目立ち」と受けとった旗本・水野。危険を知りながら、長兵衛は自ら水野の手中に。そして……。

演劇評論家の渡辺保さんは「見ていて、スカッとした」とブログに書いていた。私としては、映画『仁義なき戦い』のようなジリジリした気持ちを期待して観に行ったんだけど、演出の仕掛けとか、他のことに気持ちを持っていかれてしまって、上手くノレなかった。『野崎村』の時も生々しく思えてノレなかったんだけど、私って、テンポが遅いのか? #舞台感想

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