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美術館『大阪の日本画展』東京ステーションギャラリーの反省

木綿着物のお出掛け先に、美術館を選んでみた。東京ステーションギャラリーで開催中の『大阪の日本画展』だ。主に、大阪・中之島美術館が所有する、大阪画壇の日本画が展示されている。

私は関西の出身ではないが、大阪の船場に本社のある会社で働いていたので、親しみがあるのだ。『夫婦善哉』の淡島千景のような浪速女の画を楽しみに訪れたが、大阪の水辺の祭りを、俯瞰して描いた生田花朝の作品も気になった。

展覧会のポスターに登場する舞妓さんの画は、北野恒冨の作品『宝恵籠(ほえかご)』で、俯いた襟元の赤い鹿の子絞りが愛らしい。逆にインパクトを与えてくれたのは、床几の上で和む姉妹の二双の屏風絵『いとさんこいさん』だ。いとさん、こいさんと聞いて『平成細雪』の方を思い出すのは、私だけだろうか。

屏風の姉妹は、白地と黒地、揃いの柄の着物を着て、揃いの下駄を履いている。鮮やかな色は下駄のオレンジだけで、全体は寒色系のしんみりした色調だ。

初期には、気取らない女の色気を匂わせた恒冨作品だが、傾倒する団体の洗礼を浴びて、ヨーロッパの宗教画を思わせる作風(『茶々殿』、『淀君』)を手掛け、その後に、この『いとさんこいさん』の様な、品と情が入り混じった持ち味に到達したのだという。

『大阪の日本画展』の感想をこんなふうにしたためることが出来たのも、図書館で借りた全集の解説を読んだからで、実は、集中して見ることが出来なかった。

東京ステーションギャラリーは駅直結で便利だが、ホームから改札口まで、東京駅の構内を横切る。成田空港に向かう外国人旅行者が、大きなスーツケースを持って、立ちすくんでいるのに出くわすと、心配でハラハラする。

それが、良くなかったか、ざわざわした雰囲気を引きずったまま、ポンと作品の前に出されるので、落ち着いて見られない。ギャラリーの一階で、エレベーターに乗らずに、自動販売機のある休憩スペースに逆流して行く人も見かけたが、あれはどうだろう。

作品が日本画だけに、空間を強く意識する日となった。

参考文献・集英社『現代日本美人画全集 第三巻』作品解説・馬場京子

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