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きもの本棚⑥『原由美子のきもの暦』の着物コーデは全体柄の小紋をまるで、無地のように帯合わせしている。

雑誌『an•an』のスタイリスト・原由美子さんが『フィガロジャポン』に長年、着物コラムを連載しているのは知っていたが、原由美子さんが日舞を通じて幼少期から着物に親しんでいたのは、知らなかった。着物のお仕事も、数多くされたそうだ。原由美子さんはじめ、80年代にコムデ・ギャルソンやヨージ・ヤマモトを着ていたマガジンハウスのファッション・リーダー(アイコンという言葉はなかった)が、着物の本を出すようになったのは、いつの頃からだろう。

著書で「着物ビギナーには、小紋がオススメ」と語る原由美子さんは、柄の詰まった、べたっとした全体柄の小紋を無地のようにとらえて、友禅や型染めの多色づかい、縦横20センチくらいありそうなモチーフの繰り返しを、あたかも、水玉や市松模様と同じ感覚で、帯選びしている。原由美子さんの着物コーデは独特で、柄の大小や、色数を絞るといった初心者コーデのセオリーが存在しない。好きなものをこだわって探せば、自然とマッチするのだそうだ。

大切なのはひとの着姿を見て、自分が受けた印象を捕えておくことで「私はこれはアリ」、「これはナシ」と、線引きができるようになるという。そこで、原由美子さんのオススメに従って、いつの日か、自分が着てみたい着物を連載から選んでみた。

連載の書籍版には、十二ヶ月のテーマが設定されている。九月のオススメは木綿。初夏にも残暑にも等しく合わせやすい縞から、染めのよろけ縞。縞は季節感を変えやすいそうだ。十月は、お茶会着物の応用で、私が好きだったのは、染め疋田の幾何学柄。チェックの内側が鹿の子絞りを模したポツポツで潰してあるので、幾何学模様がはんなりするそう。11月の紅葉狩りの着物から、明るいパステルブルーの結城紬。12月のパーティーシーズンの着物から、ちりめんの染めの格子柄。私は単衣用に、染めの紬を誂えたので、ステップアップしたい気分で選んだ。

1月の華やかな着物で、私が好きだったのは鶯色をした結び紋柄の付け下げと雪持ち南天の黒の染め帯のコーデ。飛び柄だけど、他では見たことのない枯れた感じが落ち着いていてとても、良い。この本の中で一番、好きなくらい。先生の演奏会に、こういうのを着てお出かけしたい。

同じ時期に古本で手に入れた雑誌『七緒』のやわらかものの特集で、工芸ライターの田中敦子さんが、小紋着物の使い分けを指南していた。これを見ると、原由美子さんが最初の一枚に薦めている小紋はパーティーではなく、気軽なお出かけ用の小紋にあたる。そう言えば東村アキコさんのコミック『銀太郎さんお頼み申す』で、主人公のさとりちゃんが誂えた最初の一枚も、カラフルで、詰まった柄だった。

【田中敦子さんのアドバイス】

・普段のお出かけ向き →小さく詰まった柄が全体にあり、光沢はなし。
・控えめをアピールしたい日に →シックな色で、柄もワントーンでまとめた小紋。
・よそゆき →光沢があり、ゆったりした柄だが、少ない色数。

そうだったんだと、納得。原由美子さんの『きもの暦』で、残りの半年の気になる着物を選んでみた。

二月の紬を飛ばして、三月のお花見に行きたい着物から、紬の帯にも合わせられる染めの花柄。具象化された花柄が好きなので。四月は新年度と旅。大小あられの江戸小紋に、繰り返しの柄の袋帯。五月は観劇用の着物。織りの縞の絣紬。六月は単衣。葵柄の小紋に夏絽の名古屋帯。七月は夏着物。黒地に白の麻の幾何学柄、白地の絽塩瀬の名古屋帯。八月の浴衣。歌舞伎『助六』風の番傘柄の藍の浴衣。または、よそゆき浴衣で竹柄の絹紅梅。

こんな感じ。例え、着られなくても、着物を選ぶのは楽しいものだ。

参考文献/文化出版局『きもの着ます。』原由美子
CCCメディアハウス『原由美子のきもの暦』原由美子
プレジデント社『七緒』vil.60

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