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きもの本棚⑭工芸ライター・田中敦子さんの無地系紬とは?

目下の関心事項は、着尺の枚数だ。アンティークの愛好家は30枚以上をお持ちというお方もチラホラ。では、正統派コーデなら?

工芸ライターの田中敦子さんは『和楽』の森田空美さんの連載を手がけ、着物の分野の書籍も多い。田中敦子さんが自前の着物と、師と仰ぐ森田空美さん、染色史家の吉岡幸雄さんとの対談、“憑かれたように”語られる帯や履き物の歴史と、見た目はコンパクトながら、濃いぃぃぃ内容の本。知りたかった日本製生糸の歴史も載っていて、まさに、目から鱗である。

『きもの自分流入門』田中敦子さんの11枚

田中敦子さんのコーデの流儀は、無地系の紬を中心に、作家モノの幾何学柄やアジアの布で仕立てた季節性のない柄の帯を組み合わせ、色合わせで季節感を醸し出すこと。この本で用例にした着尺の枚数は、通年(浴衣から、礼装まで)11枚。他に雨ゴート2枚を含む羽織りもの5枚をキッチリと揃えてあった。

小学館「きもの自分流入門」田中敦子著からのメモ

着ている方の人となりが一目で伝わり、着回しできる無地系紬は、初心者には選ぶのが難しく、最初に手を出しやすいオススメは、ディナーにも着られる“スマートカジュアル”とのお話。その後は、一本釣りで。そもそも、私には着回しが必要な程に着ていく先があるかが問題で、だから、真似しようにも夢の話なんだけど、仮に三味線の舞台衣裳を“スマートカジュアル”と考えて、その次に欲しいのは単衣か、紬の濃い色かな?

自分らしさが、これからの基準になる

先日の『銀太郎さん…』の振袖のエピソードのように、和装は集まりに箔を付けることができるという。結婚式でなくても「あら、お洒落な人が来てるのね」と思って貰えて、レストランやお店の開業祝いなら、同席している他人まで、華やいだ気持ちになれる。集まりの格や値打ちが上がるのだ。そんなふうに場で喜ばれるため、“相対性の中で”選ばれてきた着物は、令和の時代を迎え、対象が“自分らしさ”に変わってきたと田中さんは言う。

田中敦子さんの着物の本は、2022年に新刊が出て、進化したコーデを見比べることができるのも、面白い。そういえば、歌舞伎座で樋口可奈子さんばりのココア色の美しい無地紬と、カジュアルに振り過ぎて、もったいない感じのする無地紬の両者をお見かけした。もっさりさせないのがコツだ。無地系紬って、難しそう。いつかはチャレンジしてみたい、憧れの着こなしなのだ。#わたしの本棚

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