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きもの本棚⑦『きもの草子』九月は「夏のような、冬のような」が大事らしい。

近頃、月が美しい。来週から、九月になる。九月の着物はどんなだろう。小物の色や帯の柄で秋らしさを取り入れるのが基本だという。新宿ルミネの津田屋さんで、秋色の長尺の帯締めを購入した。他に、何かあるかしらとまた、本を漁る。

今回は、TBS『サンデーモーニング』に和服姿で出演しておられる田中優子さんの『きもの草子』を拝読。田中優子さんさんは法政大学前総長だが、江戸・アジアの比較文化が専門であるだけに、エッセイとはいえ、情報量が多く、着物を楽しむヒントがいっぱいだ。例えば、新撰組のユニフォームとしてお馴染みの「火消し羽織」のルーツがトンガリを横並びにした「鋸歯模様(きょしもよう)」で、インドの更紗から発展したという話が、サササッと書かれている。私には「ああ、あれのことね」とわかる程度だ。キーワードの覚え書きをさせて貰った。

ひとつ、私が面白かったのは、原由美子さんの『きもの暦』で九月に取り上げていた木綿を、田中優子さんが十一月のお題にしている点だ。

代わりに九月には花織(花織)について書かれている。花織は沖縄の「すくい織り」だが、田中さんの花織は、新潟県の十日町で作られたもので、沖縄ほどカラフルではない。暖かい土地の技法を豪雪地帯の色合いで再現したことで、夏のような、冬のような印象を受ける。思えば、木綿着物も同じなのかもしれない。


【田中優子著『きもの草子』十二ヶ月の内容】

一月•••「宝づくし」の由来
二月•••乾季恒例の東南アジアツアーとインドネシアの絣「イカット」について三月•••「貝紫(巻貝から取れる染料で染めた紫色のこと)」の帯と「江戸小紋」四月•••桜襲(さくらがさね)の伊達襟と、十二単に見る「襲色目(かさねのいろめ)」について。
五月•••インドの「更紗」江戸へ。蛸唐草のルーツ・花唐草に発展

西陣織の帯創作きものメーカー田村屋唐草紋

六月•••「名物裂」について
七月•••琉球文化の影響
八月•••鼠色の明石縮。季節ごとに表情を変える灰色と、新暦、旧暦の混乱の話九月•••十日町の「花織」
十月•••秋の蝶という季語から、蝶というモチーフの伝来について
十一月•••羽織の話。温もりある木綿素材の普及
十二月•••「丸紋」のあれこれ

参考文献/淡交社『きもの草子』田中優子

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