嫌いな食べ物
嫌いな食べ物は何ですか?
人生で初めてその質問をされたのは、幼稚園の頃だった。
保護者参観の日。子供たちは事前に質問に対する答えを紙に書いておき、保護者が自分の子の回答を予想して答える。最後に答え合わせで子供が紙に書いてある内容を発表する、というゲームがあったのだ。
母は自信たっぷりに、「パイナップル!!」と答えた。
しかし。
わたしは、「納豆」と答えたのだった。
当時、わたしはパイナップルが大嫌いだった。納豆とパイナップルだったら、絶対にパイナップルの方が嫌いだと断言できた。母の答えの方が間違いなく正解だった。
なぜ、わたしは納豆と答えたのか。それは、わたしが当時住んでいた場所が関西だったからに他ならない。
今はわからないけど、当時の関西人は納豆がとにかく嫌いで、絶対に食べないらしかった。幼稚園児のわたしの耳にも届くくらい、みんなが納豆を憎んでいるようだった。仲が良かった男の子も納豆はねばねばしていて嫌だと言っていた。一方で、親は食べないけど、子供は喜んで食べてるよっていう情報もあった。
しかし、そもそもわたしは納豆が嫌いだったことは無かったような気がする。
にもかかわらず、自分の味覚より周りの評判を気にして、納豆を悪者にしたのだった。
幼い頃から周りに流されやすい人間で、みんながセーラームーンを嫌いになれば、嫌いにならなければならないと思っていた。
そんな性格だからこそ、好きも嫌いも、自分の基準で考えられる人間は強いなって強く思う。
周りの多数派に合わせて自分の好みを決めてしまうことってありがちな気がする。自分でも、本当に好きか嫌いかが分からなくなっていくのである。
自分だって日々変わっていくもの。それに伴って好き嫌いも変わっていく。あれほど大嫌いだったパイナップルも、いつからか好んで食べるようになった。
周りに流されない人間になりたい。
なんでこんなことを思い出したかというと、今さっきまで読んでいた群ようこ氏のエッセイ本の中で「関西人には申し訳ないが毎朝納豆を食べていた」みたいなことが書かれていたためである。
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