60年前、お茶の水で、思い出のおしるこを
「思い出して、何だか食べたくなって」
正月休み、本日、祖母宅に伺ったときのこと。
祖母が出してきたのは、袋にみっちり詰まった餡子。それを湯で伸ばして餅を入れ、おしるこを作りたいらしかった。
祖母いわく、60年前にお茶の水で食べたおしるこを、もう一度食べたいと思ったらしい。特徴は上品にあっさりとした餡と、小さくて軽く炙られ焦げ目がついた餅。祖母が普段、電子レンジで餅を加熱することは知っていた。が、今回思い出の味に近づけるためにわざわざ切り餅を細かくカットしてトースターで焼いていた。
肝心の汁の方の作り方はよくわからなかったので、妹がスマホでレシピを検索し、餡と水と塩をいい具合に混ぜて作った。その間わたしは父母に作法に関する文句を言われながら茶を淹れたりしていた。
20分ほどでおしるこが完成した。
甘くて、優しい味わい。
60年前のお茶の水の味とは違うのだろうけど、三世代でのんびり過ごす元日に、贅沢すぎる時間。
祖母は終始笑顔で、若い頃の話をしたり、孫(妹)からLINEスタンプの買い方を教わったりしていた。
60年。わたしが生まれる倍の時間。
言葉で聞いただけでは想像もつかない怒濤の日々を乗り越えて、今。
わたしがあと40年、50年と生きて、今を振り返ったとき何を食べたいと思うのだろう。
何を食べたいと思うにせよ。
その時が来たら、美味しく食べれるように、歯磨きだけはきっちりやっておこうと思うなどした。
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