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#1 点と線と、きっかけ

 コロナ禍、ニューノーマルが浸透しはじめた2020年の春、僕たちは久しぶりに会い、近況報告や流行りのキャンプ道具の話なんかをしていました。普段は、家具設計業と広告カメラマンをしているふたり。どちらもクリエイティブな響きのある職種に聞こえるかも知れませんが、実は表舞台には出ない一黒子としての仕事が多いのです。そんな一黒子としての反動もあってか、「自分自身の価値観・考えをいつか表現しよう!」よくそんな話をしてました。時代はキャンプブームの真っ只中という事もあり、アウトドアに関連するプロダクトを作ってみよう!と盛り上がり、話は進んでゆきました。
 ところが、コンセプトやターゲット設定など話が具体的に進んでゆくにつれ、単にプロダクトのアウトプットをすることに違和感を感じ始めたのです。僕たちはプロダクトやそのブランドを通じて、人に何を伝えたいのか、その行為は単なる自己満足に過ぎないんじゃないか?薄っぺらな思いで自己表現がしたいだけじゃないはず!だから、自らが本当に表現したいものをもっと深く探るため、自身の価値観を形作っている本質的なものへの追求を始めたのです。

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 あれこれ思考を巡らせてはメモを取り続け、1年以上が経ちました。いつしか、普段は表に出す事もなく、心の中だけに留めてしまっている言葉や気持ちと、正直に対峙したいと思うようになっていました。

 心の内面に潜む言葉、押しつぶしている思いの正体をつかみたい、そんな想いで1年間取り続けたメモを振り返りました。自然・共生・持続・竹・間伐材・フェアトレード・トレイル・耕作放棄地・生きる・古の日本、それらの言葉を起点とした多数の琴線に触れる言葉と事象が姿を見せました。なかでも、常に思いの中心にあったのは、自然・環境・循環・日本文化・優しさ・先人の知恵、という言葉たち。僕たちが表現したかったのは、自然への敬意や、自然との共生、自然と人の在るべき姿、という様な、自分たちなりの ” 自然への向き合い方 ” だったのだと確信したのです。キャンプやハイキングが好きだから、その道具を作ろう!から、なぜ今、自分はそれに興味を抱き、その意識はどこから生まれ、どうしてそれを表現したいと望んだのか、その答えの源流にたどり着けた、そんな気分でした。

ここから” 自然への向き合い方 ”についての模索という、点と線との活動が始まったのです。

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