見出し画像

ショートショート「1分しまうま」

一匹のハイエナが、湖でフラミンゴの群れを見つめていた。美味しそうだな、ではなく、美しいな、と思いながら眺めていた。

ハイエナはふと、湖に映る自分の姿を見た。真っ黒な鼻と頬の、なんとも恐ろしげな顔。鈍い茶色と黒のブチ柄。

どうして僕はこんな姿なのだろう。

美しいものが好きなハイエナは、長い間獲物を狩らず、痩せこけていた。

ある時、怪我をしたシマウマが草むらの中で横たわっていた。ハイエナが近づくと、シマウマは覚悟を決めたように長いまつ毛をふせた。

「怪我をしているのかい」
「ええ、もう走れないわ」

ハイエナはシマウマの隣に座り込んだ。

「私のこと食べないの?」
「食べないよ。その美しい縞模様を見ていたいんだ」

二匹の奇妙な時間が流れた。夕日や、月明かりに照らされ表情を変える縞模様は美しかった。ハイエナは弱ったシマウマの側を離れなかった。

夜が明け、朝日の中でシマウマが言った。
「あなたもとっても美しいわ」

ハイエナは嬉しそうな顔でやっと眠りについた。



(416字)

たらはかにさんの企画 #毎週ショートショートnote  「1分しまうま」に参加しています。