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ママが歌を歌っている

今の、いぬうた市はというと、もうだいぶ夜で、
きゅん君と、ぐーちゃんは早々と、
自宅の2階の寝室で寝入っています。
ベッドには飼い主もいますが、特に気にせず、
たまに踏んづけたりしながら、ベッドの上で、
すやすやと快眠をしている、ふたりであります。
一方、ママはというと、まだ起きているようで、
1階のダイニングルームにいるようです。
時折、テレビの音声が漏れ聞こえてくるので、
どうやら何かテレビ番組でも見ているのでしょう。
あら、しかしよく聞くと、やけに音声がリズミカルです。
なるほど。訂正致します。
この音の正解は、テレビの音声ではなくて、
ママの歌声だったのです。
それに最初に気付いたのは、きゅん君でした。
そこで、すかさず、ぐーちゃんを起こします。
「おい、ぐー。何やら、ママが下で歌を歌っているよ」
すっかり寝ていた、ぐーちゃんですが、
大好きなママというワードが、きゅん君から聞こえ、
思わず、
「えっ、ママが、歌を歌っているですって。それはそれは、何も差し置いても、ぐーはいかなくっちゃ。それが例え寝起きでも。それがまだだいぶ眠くっても。ぐーは大好きなママと大好きな歌を歌うわ」
と、まだ半分寝ぼけながらも、歌うことも大好きな、
ぐーちゃんはとことこと1階に降りて行きました。
「ならば、僕も行かねば。僕もママは、ぐーに負けず劣らず大好きだし、歌はそれなりな僕であるけれど」
と、きゅん君も慌てて、ぐーちゃんを追いかけました。
やっぱり寝ぼけまなこの、きゅん君ではありますが。
ぐーちゃんに追いついて、ふたり揃って、
ダイニングルームに入って行くと、ママはふたりを見るなり、
大喜びして、それも歌で表現しました。
きゅん君と、ぐーちゃんは、その歌が自分たちを、
歓迎している歌だと、すぐに気付きましたが、
歌詞の内容はよく分かりませんでした。
しかしとても嬉しかったので、
「ママが歌っている歌は僕らには分からない知らない歌だけど、でも大丈夫だ、ぐー。何となく合わせて、僕らも歌おうじゃないか」
と、きゅん君は言い、ぐーちゃんも、
「もちのろんよ。きゅん。ママとは気持ちは通じ合っているから、ぐー、きっと歌えるハズよ。ママと見事に、ぐー、ハモってみせるでやんす」
と返して、歌い始めた、おふたりです。
「ああ眠い。眠い。まだ眠い。けれど歌うよ、ナイトソングを。今や、いぬうた市は夜更けの時間。だから歌声もご近所さんに聞こえぬように。こっそり歌うよナイトソングを。ああ、ママとデュエットするナイトソング。それは真夜中の私たちだけの秘密のパーティー。飼い主はイビキでちょっとだけ参加。となりの家の猫は明け方まで待って参加。今は私たちだけの、いぬうたシティー」
なんて感じで、ママが歌うメロディに何となく合わせて、
歌う、きゅん君と、ぐーちゃんです。
おふたり、ご近所迷惑にならない程度に、
ボリュームは控えめに、
でもママとの、こんな夜も、たまにはいいもんですね。

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