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早くお芋が食べたいです

「ぐー、ニュースだよ!ニュースだよ!グッドニュースだ!」
いぬうた市のほぼ中心部に位置する、
きゅん君と、ぐーちゃんの自宅から、
何やら幸先の良さそうな、
きゅん君のセリフから本日はスタートです。
「ママがキッチンで、お芋をふかしているよ」
先程から、ママの近くにべったりと張りついていた、
きゅん君は、ママがお芋をお鍋で、
ふかし始めたことに気付いたのでした。
ぐーちゃんも、そのことはうすうす分かっていたようで、
「やっぱり!ぐーは匂いで、そうじゃないか?と思ったけど、やっぱりそうなのね。ぐー、楽しみー!お芋大好きー!」
と、蒸し上がるお芋より早く、ほくほく顔です。
「いつふかし上がるのかしらね?ぐー、その時間に合わせて体調整えておくわ。お腹いっぱい食べれるように、お腹空っぽにしておかないとー」
ぐーちゃん、すでに食べる気満々です。
「ふかし上がり時間かあ?そういえばどれくらいなんだろう?蒸されたとしても熱々なのは僕ら食べられないからね。結構時間かかるのかもしれないね」
そこまで考えてなかった。
と、きゅん君、うっかりという顔です。
「ふかし上がるまで、どうしようか?ぐー。ずっとここにいて、待っているのが一番早く食べれるんだろうけど」
キッチンの入り口で、先程からスタンバイしている、
ふたりはしばし考えます。
「ふかし上がるまで、2階で遊んでようか?遊んでたら、時間なんてあっという間さ。出来たらママがちゃんと呼んでくれるだろうし」
そんな、きゅん君の提案に、ぐーちゃんは懐疑的です。
「ぐーは、たぶん2階に行って遊んでいても、気になって全然遊びに身が入らないと思うわ。ママが本当に呼んでくれるかも分からないし」
ぐーちゃんが、そう反論すると、
急にムキになった、きゅん君です。
「ママが呼んでくれないはずないじゃないか!ぐーはママを信用してないのか?」
「そうじゃないわ。ぐーは、ふかし上がったお芋を次から次へと飼い主がペロリペロリと食べちゃって、たちまちなくなっちゃうかもしれないことを言っているのよ。そうしたら、ママだって、ぐーを呼ぶに呼べないじゃない」
ぐーちゃんは必死に弁明して、きゅん君も納得しました。
「なるほど。それは充分有り得るね。そうなると、僕らはここでずっと張り込んでいるしか選択肢がないかな」
きゅん君はどうやら覚悟を決めたようです。
「その洗濯機しかないわ。ぐーもそう思うー。仮にお芋さんが、ふかし上がるのに何十年かかろうとも、ぐーはお芋さんと一円タクシーよ!」
一円タクシーは一連托生の言い間違えで、
他にも間違えがあった、ぐーちゃんですが、
決意は並々ならぬものがありました。
そして、いざ!とキッチン入り口に座り込んで、
ふたり、居座りを決めたものの、待てど暮らせど、
お芋はふかし上がる気配がありません。
それもそのはずです。
ママをお芋をお鍋を入れただけで、
まだ火をつけていなかったのです。
ふかし始めたと思ったのは、きゅん君の見間違えで、
ふかしている匂いがすると感じたのは、
ぐーちゃんの思い込みだったのです。
しかし、何だかずっとキッチンの入り口にいる、
ふたりに気付いたママは、ふたりのために、
レンジでチンして、水で冷やした、お芋をくれて、
ようやく、きゅん君と、ぐーちゃんは、
お芋と同じ、ほくほく顔になりました。

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