見出し画像

そんな気にならない

「今日は天気もいいし、散歩のパートナーもママときて、気分は最高な、僕、きゅんですが、
だからといって、わーっ!とか駆け回りたい感じではなく、どちらかというと静かにじっくりこの陽気を楽しみたい。と、そんな日もありますよね。まさに今日はそんな日で、しかし、そんな時に限って、僕の横にいる、ぐーときたら」
「きゅん、何、ボーっとしてるのよー!ぐー、運動さんしたくて、うずうずしてるんだからー!いくわよー!」
と、最初話していた、いぬうた市の、
きゅん君の言葉を遮って、喋り出して、
ダッシュしたのは、ぐーちゃんです。
そうなんです。
今、きゅん君と、ぐーちゃんはママと、
いぬうた公園を散歩中で、ちょうどいつも、
わんプロをする広場に来たところで、
なので、ぐーちゃんはいつものように、
わんプロをするべく、きゅん君に飛びかかっていったのでした。
しかし、きゅん君、最初の発言にあったように、
今日はわんプロしたい気分ではないようです。
だからか、ぐーちゃんの突進を、寸前でよけました。
「こらっ!きゅん!何で、ぐーの攻撃さんをよけるのよ!攻撃さんには攻撃さんでしょ!いつものようにお正面から受け止めなさいよ!」
と、ぐーちゃん、きゅん君に叫んで、再度突進します。
で、また、きゅん君はそれをサラリとかわしました。
なので、激怒する、ぐーちゃん、
「だから何でよけるのよ!ぐーとわんプロさんしたくないとでも言うの?」
と、そう問うと、
「そうだよ。したくないんだよ。今日はそうゆう野蛮な気持ちにはなれないんだよ。今日の僕は今日の天気のように穏やかで平和な気分なんだ」
と、目を細めて遠くの空を、
まぶしそうに見つめる、きゅん君です。
その何か自分だけ悟りでも開いたような顔が、
無性にムカついた、ぐーちゃん、
「だったらいいわ!きゅんはそうやってスカしていればいいじゃない!別に、ぐーは、きゅんがいなくても全然おひとりで、わんプロさんくらい出来るお犬ですからー!きゅんなんかにお相手してもらわなくても、おひとりで遊べる、ぐーですからー!」
と、きゅん君にソッポを向いて、ひとりで、
広場の芝にドタドタと身体をなすりつけたり、
落ちている枝を急に噛んだりして、
暴れ始めた、ぐーちゃんです。
「ああ楽しい!ああ楽しいわあ!何ておひとり遊びさんって楽しいんでしょ。誰かさんに気を使わずに遊べるひとり遊びさん、最高!」
と、つぶつぶつぶやきながら。
一方の、きゅん君、ぐーちゃんが、
ひとりドタバタしている光景を非常に冷めた目で見つめます。
「こうして改めて見ると、何てこっけいなんだ。バカみたいにはしゃいで騒いで、自分も今まであんな風に遊んでいたか、と思うと、ゾッとするよ。なのでわんプロからは今後一線をおくとしよう。そしてこれからは常に穏やかに空を見上げて生きて行くとしようではないか。結局はクワイエットライフに限るという訳で、慌てず騒がす時の流れに身を任せて、それが生きるということさ」
などと、急に、ぐーちゃんを見て、これまでの自分を恥じ、
覚めて、悟った、きゅん君であります。
しかし、ぐーちゃんは、
そんな、きゅん君の気持ちも知らずに、
相変わらずの元気っぷりで、その行動といえば、
真逆、正反対なおふたりなのでありました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?