「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」(アニメ映画)

視聴環境:Amazon prime video

【内容】
テレビのロボットアニメ「機動戦士ガンダム」のファーストシリーズの内の1話完結の物語を映画化したもの。
伝説のモビルスーツパイロットのククルス・ドアンは、戦災孤児を匿うため脱走兵となり、モビルスーツで小さな島を守っている。
そこに調査に行ったアムロは、戦いに敗れククルス・ドアンによって捕獲されてしまうが…

「機動戦士ガンダム」のキャラデザイン、作画担当である安彦良和監督作品。


【感想】
ガンダムのアニメシリーズの中、作画崩壊しているなどの理由でマイナス面の評価で語られることの多いお話をあえて、映画化するという英断(?)をした作品ということで気になっていたんですが…
観た人の評判はそれなり良かったようで、今回アマプラで配信始まっていたので観てみることにしたのですが…

まだ、コロナ禍になる前に安彦良和のトークイベントに参加した時、
前日にちょうど「機動戦士ガンダム origin」の最後の映画のアフレコを取り終えて、次の仕事に着手を始めてるという話をしてました。
その時に、本当は言っちゃいけないんだけどと前置きしつつ、ファーストガンダムの話を映画化しますと言っていたのですが…
数年後、まさかこういう形での映画として実現するとは思ってもみなかったです。
その時の安彦良和が話していたのは、ファーストガンダムを作って頃の富野由悠季は天才であり、このファーストガンダムの設定や世界感は、残すべきものなんだと…
この作品はそのための布石の一つなんだということがよく分かった作品でした。

ストーリー展開は、安彦良和が漫画で様々に試して来た作画的な手法や、ストーリー展開のさせ方など、ファーストガンダム頃よりも随分と独自進化されていると感じました。
元のテレビアニメも観たのですが、ただの平凡な脱走兵だった設定が、伝説のパイロットに代わっていたり、細かなガンダムの歴史的な物語が挿入されていたりしました。アムロの影の存在として、あり得たかもしれない脱走兵としてのストーリー暗示させる作りになっていたり…
ガンダム本編のストーリーを補強するような物語構成になっていたりしていて、こういった形でのスピンオフの可能性を感じました。
作劇の手法として、よく練り込まれていて、きちんとした人間ドラマをガンダムという設定を使って描いている。
地上でのモビルスーツ戦もかなり力の入った作りになっていて、見どころたっぷりでした。
孤島での岸壁でのガンダムのビームサーベル二刀流でのザクとの一騎打ちなど、ファーストガンダムにあった時代劇の殺陣的なモビルスーツ戦も良く出来ていました。
その他、ラストに向かって幾つもの見せ場が用意されていて、まさかこんなにしっかりとした話として完結しているとは正直思ってもいなかったので、いい意味で期待を裏切られた作品でした。

人物の作画などは、最近の安彦良和ならではの感じの漫画的でもあるようなキャラクター表現などが随所に盛り込まれていました。
この誇張の仕方はなんなのかと考えていたのですが、これって新聞などの風刺漫画ぽい表現なのではないかと思ったりしました。

モビルスーツに関しては、3DCGの使い方などもかなりこなれていて、セルでのキャラクターのアニメーションと喧嘩することない良い雰囲気に仕上がっていました。

この形でのガンダムの映画に成功したのなら、今度はガンダムのエピソードごとでの映画化も可能になるので、それはそれでそれぞれのエピソードを映画化したら観てみたいと思ったりもしました。
本腰入れて作ったら、ここの所のアニメ技術の進歩や技術の蓄積で、凄いものが出来るのではないかと…
まあ、実はもうそうした形で企画動いていたりするのかも知れませんが…
ファーストシリーズをよく観ていた自分としては、オリジナルの声優が生きているうちに実現させてほしいなあと思ったり…

アニメシリーズものの名作のリブートの新しい形を提案したということで、新たな方法論を見出した作品として、後に語られる作品になるのではないかと思いました。
アニメの場合はどうしても、古いものになると、クオリティー的に観ていられ無くなったりして、若い世代が観るのが難しかったりするという話を良く聴きますが…
この手法は、その画期的な解決策なのではないかと…

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