開戦の決断(2)  一般市民の民事裁判初体験記 【13】自転車は空を飛ばない

 期せずして、隣人ではなく、隣人の代理人である弁護士との対峙をしなければならなくなりました。こうなれば、もうご近所トラブルが、法的紛争と形を変えて来ます。私たちはこれに対応していかないといけなくなりました。気持ち的には、「対応」というより「応戦」でした。
厄介ごとが数万倍ややこしくなっていきます。


前回のつづき・・・

 この時、私たち夫婦には2つの選択肢があった。

(1) 全部を当方で負担して収める
(2) 敢然と損害賠償を求める

 妻が既に発しているメールの内容に沿って、そのまま進めれば(1)になる。こちらが全面的にこらえて厄介ごとを収めてしまうコースだ。しかしながら、それでは、Y氏はまったくの無罪放免になってしまう。そして、当方が完全な悪者になってしまうのは明らかであった。ここまでの感触で、Y氏は、無罪放免を有難いと思う気持ちなんて持たないと思われた。それどころか、自分こそが被害者となっているのが現実だ。

 そもそも、自分の家の宅地に、車を止めておいた私たち夫婦。その車に傷を付けられて、なぜに、その修理代を自分たちで支払わないといけないのだ。しかも、なになに・・・相手はこちらに迷惑をかけられっぱなしで、うちの自転車が自分の車のバンパーに当たったとホラを吹いている。これでは、どちらが被害者か分からなくなっているぞ。

 「このままでいいのか?」
 「いいわけないだろ!」

 事を荒立てずにを、大切にして来た私たち夫婦であったが、これは、敢えて、事を荒立てた方がよいのではないか。裏切られて湧き出た猛烈な怒りのあと、いくばくかの冷静さを取り戻した私が思い至ったのはこういうことであった。

 真実を曲げられたまま、今後の人生を生きていきたくない。
私たち夫婦は、戦うことを決めた。

 まずは、妻は防犯カメラの設置をすぐに決断した。10年来、平穏な近所付き合いしてきた隣人の姿はそこにはなかった。

2017年11月18日(土)
私は旧知の電器屋さんを訪ねて、緊急工事を依頼した。

 同日夕刻、Y氏は、どこかから工事業者を呼び、塀建設の見積もりをとっていたようだ。この日、たまたま在宅していた息子からの写メールでその事実を知る。

実は、この日までにも、妻は、Y氏から執拗に「塀の工事は、いつからしてもええのん?」と迫られていたのである。
Y氏の頭の中は塀を立てることでいっぱいのようであった。
 Y氏は、「主人にも訊かないといけないので、もう少し待って・・・」と返事をする妻に、このように言い放っていた。

 「私は〇〇〇〇〇(妻のフルネーム)の署名入りのメールで動いてるんや。いつになったらできるんや」謙虚さの欠片もない偉そうな口調である。

妻がメールで記していた覚書の内容を確認すれば、それはできないことであることはすぐに分かるのだが、どうもそれはしていないようであった。もっともそんなことができる人であれば、一連の騒動は起きてはいない。妻がOKを出していないのに、工事業者を呼んで動き出していたのだ。フライングも甚だしい。

 この御仁は、妻からのメールで、事態は、すべて自分の思い通りになったと判断していた。

 さて、ここで看過できないことが一つ発生していることに、読者の皆さんは気が付かれたであろうか。
 妻が打ったメールには、個人情報(=メルアド)が付いている。それが、Y氏にそのまま流れているのだ。仮にも弁護士と名乗る人間がこんなことしていいのだろうか。

 やってくれるぜ。この弁護士。私は信じられない思いであった。

 Y氏の無茶苦茶な言動はさておき、妻が返事を留保しないといけなかったのには理由があった。

 つづく


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