出るとこ出ますよ(2) 訴状を出す 一般市民の民事裁判初体験記【23】自転車は空を飛ばない

ここまでのお話

相手が弁護士を立てて来ました。こちらも弁護士を立てて応戦です。お互いの主張内容は噛み合うことはなく、本件はついに、裁判所へと舞台を移すことになりました。

前回のつづき・・・

 訴訟に踏み切る手続き。まずは訴状の作成だ。
 これをつくるのは素人にはたいへん過ぎる。そこで、専門家の出番となる。

 訴状の構成
 ・事件名:本件は、損害賠償請求事件と記されていた。

 これに、
 ・当事者の表示
 ・請求の趣旨
 ・請求の原因
 ・証拠方法
 ・添付書類
と続く。

 この訴状で、私ははじめて「原告」となった。Y氏は「被告」である。Y氏は訴状が届いた時には、私とは違う感慨を持ったと思う。「被告」という表現のイメージはやっぱり悪い。

 証拠方法は証拠説明書という別途の書類に書かれている。証拠の数はなんと11種類であった。これが、甲1号証から甲11号証までと附番されていた。
 法廷ドラマで出て来る「甲○号証を提示します!」なんて弁護士が言っているあれである。

請求の原因には、私たちがこの訴えを起こさないといけなくなった事情が書かれている。単なる作文では通じない。法律家同士が読んで意味が通じ合うように書かねばならない。
我が陣営のS弁護士は、これまでの経緯を余すことなく明瞭に書いてくれていた。

 ここで教訓です。

 訴えを起こすときは、客観的に立証できるかどうかの証拠揃えが絶対に必要です。弁護士に依頼して、訴えたといっても、材料が不充分なら裁判所に受理されないのです。
 私たちは、この事態を想定していたわけではなかったのですが、いや、実は、ある程度、予感はあったのか、事故が起きてから起こった出来事、Y氏とのやりとりについてのメモを残していました。写真も然り。金額の話はすべて、見積書と領収書の裏付けを取っていました。
 あなたが何かに巻き込まれて、ややこしいことになりそうだなと予感できたら、証拠を揃えることをしておくことをお奨めします。

 話を戻します。
 この訴えで、私たち夫婦が求めることが請求の趣旨に書いてあった。それによると、

1. 被告は、原告に対し、金12万4220円及びこれに対する平成29年10月4日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え

2. 訴訟費用は被告の負担とする
との判決並びに仮執行宣言を求める。

これまでに出ていた金額よりプラスになっているものがあった。まず一つ、10万4220円にプラス2万円分は弁護士費用である。実際には、これ以上に遥かに掛かっている。この時点で、着手金として20万円掛かっている。しかも、訴訟に移ったということで、プラス10万円が掛かることになっていた。ただし、これはS弁護士の尽力で、自動車の損害保険に付いていた「弁護士特約」が使えることになり、この部分は保険でカバーできることにはなっていた。年5分云々というのは、「遅延損害金」というものである。Y氏が支払うべきものを支払わないことに利息を取るということだ。

 この訴えるという段階で私たち夫婦が学んだことがある。今回の件はあくまでも損害賠償ということでしか訴えることができないということである。
 私の怒りの本丸は、いわれのない冤罪(Y氏に「(うちの)自転車が風で飛んできて、(Y氏の)車のバンパーに当たった」ことにされたこと)を晴らすということなのだが、その一点を対象とすることはできないのであった。

 ちなみに、本件は140万円を超えない金額だったので、簡易裁判症の管轄となっていた。もちろん、私たちからしたら全然、簡易ではない。

 明日へ つづく


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