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突然、弁護士がやって来た(3)一般市民の民事訴訟初体験記【11】自転車は飛ばない

この連載も10回を超えました。お互い様の精神で、話し合いができれば、何とか解決できるご近所の問題が事件になっていく様を御覧いただいています。裁判というのは、すぐにそうなるものではないのです。

 このケースは単なる事故が完全に事件となって来ました。Y氏の安易な弁護士の送り込みがこの後、どのような展開を引き起こしたかを記していきます。送り込まれた弁護士の言動にも注目です。

前回よりのつづき・・・

突然の弁護士の来訪を受けたその翌日。

2017年11月10日(金)19時頃
帰宅した妻を庭にいたY氏が見つけて話かけて来た。

 Y氏は「夜遅くにメールしてくれたんやなぁ。私の気持ち、分かってくれてありがとう」と言って来た。

 K弁護士は妻が送ったメールをそのままY氏にFAXしているようであった。Y氏から、予告もなく、弁護士を送り込んだことに対する謝罪は一切なかった。「保険か実費か決めて、連絡します」の答えが、弁護士の送り込みだったのである。しかもその弁護士は火を消しに来たのではなく、ガソリンをぶっかけに来たようなものだ。こんな裏切りがあるだろうか。

 Y氏の口はさらに余計に開く。
 「あの人(弁護士)、滑舌悪いやろう」と言いながら、「今後は弁護士を通してやぁ」と言い放った。

 妻は怒りを抑えながら、Y氏に問いかけた。
 「前に結んだ覚書で、お互いの土地の立ち入りを認め合うという内容があったけど、うちのほうが甘え過ぎていたということなの」

 Y氏は、吐き捨てるような口調でこう言った。「だいたいなぁ、うちの土地を通ることありきが嫌やねん!」そして、そのあと、驚くべきことを妻に言ったのである。

 「ところで、覚書って、何やったっけ?」
 もうしびれるぐらいのレベルである。

 驚いたことに、自宅に駐車していた隣人の車にぶつけて傷をつけたY氏は、いつの間にか、日常、頻繁にその隣人に不法侵入されて困っていた被害者になっていたのである。

 お互いの車と車の間は、乗り降りがしやすいように、この事故以前は、もっと空間を取っていた。

甲2号証 - コピー (3) - コピー

    (2台、駐車の写真 以前の駐車位置)

 お互いの車はハの字型に停めていたのである。Y氏(赤い車両)は、右側のドアから乗っていた。自動車の乗降りだけではなく、歩行、自転車通行の際もこの間のスペース(写真:黄色の部分)を通っていたのは事実だったのだが、それはお互い様であった。うちだけでなく、Y氏とその家族も同じである。Y氏によると、うち(Y側は侵入しないのに)、自分の土地ばかりを隣人(=当方)が通るという認識になっている。

 妻が怒りをぐっとこらえにこらえて、ここまで、配慮に配慮を重ねたもろもろは、ここで、これ以上ないぐらい大きく裏切られることになった。


 妻には、容赦なくショッキングなことが続く。その翌日。
2017年11月11日(土)20:30頃
外に出ていた妻は、ご近所のTさんの奥さんに声を掛けられた。

 Tさんのお宅の近くに移動して、Tさんが言うには、
「Yさんと何かあったの?」からはじまって、「うちはどちらの味方もできないから…。隣同士引っ越すわけにはいかないから仲良くしてね」とのことだった。

 Tさんが、Y氏から、Y氏が隣人の当方より被害を受けているという趣旨の話を聞かされているのはあきらかであった。

 妻はこう言った。
「うちの車に当てたことは認めているのに、払っていただけないのはたいへん残念です。自転車の件も、うちは当たっていないのを確認したのに、当たったと言われるのは残念です。その二点は納得いかない気持ちでしたので、Tさんにそれだけお伝えできてよかったです」

この妻の言ったことは、Tさんは初耳といった感じであった。一方的に聞くだけでは、分からないこともあるからとTさんは妻からも話を聞いたのであろう。

Tさんは聡明だ。余計なことは言わず、安全な中立ポジションを取る。双方のあまりの言い分の違いにこの件の危険性を察知されたのであろう。

 それにしても、なんということだ。遠慮気味ではあるが、Tさんの口ぶりからは、Y氏がTさんに被害者面100%で話をしているのは明白だった。自分が傷を付けたことは言っていないのだ。
Y氏は、ご近所に対して、うちが悪者であることをPRするロビイ活動をしていたのである。ロビィストYが暗躍していた。

 そして、その日、
2017年11月11日(土)その日は私が一週間の出張から帰ってくる日であった。

夜半に駅に車で迎えに来てもらった私は、そのまま妻と夜遅くまで空いている和食の店へと向かった。

 その時の私は、その週の仕事をやり遂げた安堵感で一杯であった。あとは、妻とゆっくり夕食を食べてと、満ち足りた気持ちで車中の人となっていたのであった。
 その安堵感が木端微塵に吹き飛ばされるまで、このあと30分もかからなかった。

つづく


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