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〔連載〕思春期の子どもをもつ母親への心理学講座 その5:オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン

🔹学校はどう?

我が子を初めて小学校に入学させた親御さんの共通の思いは、果してうまく適応してくれるだろうか、友達もたくさんできるだろうかなどといった心配事であるにちがいない。したがって学校から帰宅すれば、勢い我が子の顔色を見ながら、学校の様子をたずねることになろう。
たとえば、こんな問いかけで。

「学校はどう?」
 
そのような親の質問にたいして子どもは、半ば首を傾げながら「べつに・・」とか「ふつう・・」などといった答えをしてくるかもしれない。なぜなら、子どもにとって質問それ自体が漠然としていて答えにくいからである。
 
ところが「学校は楽しい?」といった質問ならば、現に子ども自身が楽しいと感じているかぎり、たぶん「楽しい」といった反応を返してくるであろう。
 
前者のような漠然とした限定しない質問をオープンクエスチョン(開かれた質問)といい、後者のような限定的な質問をクローズドクエスチョン(閉じられた質問)という。どちらも一長一短がある。ただ、このような例では、オープンクエスチョンよりもクローズドクエスチョンのほうが、子どもにとって答えやすいということは言えよう。

🔹宿題はどう? 

では、次のような例ではどうだろうか。小学校の生活にも、ようやく馴染んできた子どもを頭に浮かべながら読んでいただきたい。 子どもがなかなか宿題に取りかかろうとしないので、母親はつい見かねて子どもに話しかけた場面である。

「宿題やった?」
 
先にあげた事例と同じように限定的なクローズドクエスチョン(イエスかノーの回答を求める質問)ではあるが、この質問にたいしては子どもからのこんな反発が返ってくることが予想される。

「いま、ちょうどやろうとしていたところなんだ」
 
こんなふうに不平不満をすぐに口にしたり態度で表に現す子どもは特に心配ないが、言いたいことがあっても、それを抑えてガマンしてしまう子どもは要注意である。
 
だから、このような場合には、先の例とは逆にオープンクエスチョンを用いることが望ましい。
 
「宿題はどう?」
 
このような問いかけであれば、子どもは案外「どうって聞かれても・・。まだやってないんだよーっ」などと言って、自分でも困りつつも何とかしようといった意思表示をしてくれるかもしれない。
 
このように、一般的にはオープンクエスチョンは、その先に話を広げ、クローズドクエスチョンは話を狭めるという特徴をもっている。
 
しかし、たいていの母親は、えてしてクローズドクエスチョンばかりを繰り出して、我が子を質問責めにしてしまってはいないだろうか。
 
だから子どものおかれている状況や質問の内容、予期される回答などによって、ときにはオープンクエスチョンも活用したらよい。要は、この二つを臨機応変に使いわけることである。
 
さらに今述べたことと関連する、もうひとつの質問の仕方を紹介してみたい。

🔹完全質問と不完全質問 

先に挙げた子どもに向かっての「宿題をやった?」というかたちのクローズドクエスチョンのことを、別名、完全質問ともいう。この質問には「まだ宿題やっていないようだけど、どうするつもり?」といった詰問のニュアンスが感じられないだろうか。
 
そんなとき「宿題、まだすんでいないようだけど、どうしようねえ・・」などとし話かけたら、子どもは素直に「まだなんだ。これからするつもり」といった反応を返してくる可能性が高い。
 
この「宿題、まだすんでいないようだけど、どうしようねえ・・」といった話しかけのことを不完全質問という。ここでは、そのことについて子どもと一緒に考えようといった寄り添ったスタンスが感じられるであろう。 
さらに別の例を使って説明してみたい。
 
「お風呂場の掃除をしてくれるって約束してくれたけど、いつやってくれるの?」
 
子どもにたいして明確な答えを即座に求めている質問である。言うことを聞かなければ「風呂場の掃除をしてくれるって言ったけど、やってくれるわね」といったダメ押しすることもあるかもしれない。
 
いずれも子どもにたいして、つよく迫る詰問である。 
一方「お風呂場の掃除をしてくれるって約束してくれたけど、いつやってくれるかなー」といった質問は、どうだろうか。これならば、子どもはさほど圧迫感を感じないで、案外、腰をあげようという気になってくれるかもしれない。
 
このように不完全質問は、子どもにたいして、ゆっくりと自由に考えたり、話の内容によっては承諾をしたり、無理であれば断るといった余裕を与えることができる点で、より効果的な質問ということが言えよう。
 
とりわけ我が子の気持ちや考えをうまく引き出せないと悩んでおられる親御さんにとって、以上のような質問の仕方を念頭におきながら我が子と関わっていくならば、いつの日か知らず知らずのうちに我が子のほうから自己開示をしてくれるようになっていることであろう。


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