行政機関相互の権限の代行

アウトプットで知識の定着をしていこうシリーズです。
今日は、行政機関相互の権限の代行について書いていきます。
今回の記事について、要約すると
①ある行政機関の仕事を、他の行政機関が行う事を、権限の代行という
②権限の委任とは、仕事の責任も含めて、他の行政機関に代行してもらうことをいう
③権限の代理とは、仕事の責任を本来の行政機関に残したまま、他の行政機関に仕事を代行してもらうことをいう
という内容になります。

権限とは

権限とは、行政機関が行政主体のために行うことができる事柄、活動の範囲のことをいいます。
行政機関が普段行なっている仕事のことだと考えてください。その仕事の中には、例えば、本来なら国や都道府県がやらなければならない仕事を、区役所や市役所が代わりにやっている場合があります。この様に、とある行政機関で行う仕事を、他の行政機関が担うことを、権限の代行といいます。
そして、権限の代行は、「委任」と「代理」の2種類に分けることができます。

権限の委任

権限の委任とは、行政庁がその権限の一部を他の行政機関に委任することをいいます。
通常、行政の仕事は、法律で「誰が何をやるのか」という事が定められています。権限の委任とは、法律で決められた仕事の分担に、変更を加えることをいうのです。従って、権限の委任には、法律の根拠が必要になります。
そして、委任した行政庁は仕事の権限を失い、その委任を受けた機関が、自己の名と責任で仕事を行います。もし、委任された権限に基づく処分に対する取り消しの訴えがあった場合には、その権限の委任を受けた行政機関が所属する行政主体が被告になります。
文字にすると難しいのですが、具体的にイメージすると簡単です。
とある家庭では、家事を分担して行おうと家事別に担当を決め、あとで文句が出ない様、その事をパソコンに記録(法律で決めている)していました。その中で、お父さんは毎週水曜日の料理当番になっていました(権限がある)。ところが、お父さんは仕事が忙しく、料理をするのが難しくなりました。そこでお母さんに「これから料理もしてほしい」とお願いし、お母さんはそれを了解しました。そこで、パソコンの記録を書き換えた上で(法律の根拠)、お母さんが料理をすることになりました(権限の委任)。
お母さんが料理をするので、当然料理の内容や味はお母さんが決めることになります(自己の名と責任でその権限を行う)。また、料理があまり美味しくなければ、お母さんに文句を言います(権限の委任を受けた行政機関が所属する行政主体が被告になる)。
これが権限の委任になります。
なお、上級の行政庁は、下級の行政庁に対し権限を委任した場合でも、当該下級の行政庁を指揮監督することができます
次に、権限の代理について説明します。

権限の代理

権限の代理には、法定代理と授権代理と2種類のものがあります。
法定代理とは、行政庁が欠けた時又は行政庁に事故があった時に、法律の定めるところに従い、他の行政機関が、本来の行政庁の権限を代行することを言います。
上の例で言えば、お父さんが風邪を引いたので、たまたまお母さんが料理をする様な場合です。この場合、お父さんが風邪から回復したら、またお父さんが料理をします。また、風邪を引いたら誰が代わりにやるのか、という事を明確に決めておかないとトラブルになるかもしれないので、ちゃんとルールとして決めておく(法律の定め)必要があります。
授権代理とは、本来の行政庁が他の行政機関に対し自己に代理してその権限の一部を行う権能を与えることを言います。本来の行政庁の権限が代理する機関に移動するわけではないので、法律の根拠は必ずしも必要としません。また、あくまで代理として行っているだけなので、権限は移動せず、代理者が何か権限行使する際は、代理者であることを示す必要があります。
上の例で言えば、お父さんが料理をしている時に、お母さんにお手伝いをお願いする様な場合です。この場合には、料理の内容等を決める責任者はお父さんのままになります。
これが

まとめ

今回は
①ある行政機関の仕事を、他の行政機関が行う事を、権限の代行という
②権限の委任とは、仕事の責任も含めて、他の行政機関に代行してもらうことをいう
③権限の代理とは、仕事の責任を本来の行政機関に残したまま、他の行政機関に仕事を代行してもらうことをいう
ということについて書きました。
法律の根拠とかめんどくさいかと思うかも知れませんが、実務では国や都道府県が区役所や市役所バンバン仕事を投げてくるので、制限をかけないと大変なことになってしまいます。最近の国や都道府県の政策や方針を、ヒヤヒヤしながら見ている自治体職員も多いかと思います。

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