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行政契約とは

アウトプットで知識の定着をしていこうシリーズです。
今日は、行政が行う契約について書いていきます。
今回の記事について、要約すると
①行政の契約は私人間の契約と同様、対等な立場で行うのが原則である
②人々の生活に影響する行政契約の場合には、行政に制限がかかる
③行政が相手方に規制をかけることも許される
という内容になります。

行政契約とは

行政契約とは、国や地方公共団体といった行政が、私人または行政間と対等な立場で締結する契約のことをいいます。
行政からの強制力が働くことなく、両者合意の上で契約が成り立つため、原則法律の根拠は不要となります。
しかし、行政が締結する契約の中には、人々の生活に直結するため、対等ではなくある程度行政に制限をかける(法律の根拠を必要とするなど)ものがあります。その例である「給付行政における行政契約」について紹介します。

給付行政における行政契約について

皆さんの家庭でも、定期的に水道代を支払っているかと思いますが、こちらも行政契約の一種となります。
もし、自分の家の水道代は1ℓあたり10円で、隣の人の水道代は1ℓあたり1円に設定されていると、不平等になってしまいます。
また、引越しをして、新しく水道契約を結ぼうとした時に、「あなたは嫌いなので契約を結びません」と言われたら、生活が成り立たなくなってしまいます。
上記の例の様に、行政サービスの提供(給付行政)のための契約は、国民の生活に関わるものが多く、利用者間での差別的な取り扱いの禁止や利用者の見極めの公正が必要になってきます。
従って、給付行政における契約の場合には、私法の規定だけでなく、法律・条例による規定を設ける必要があります。今回の例では、水道法15条により、役務・便益の提供にあたって、行政庁が正当な理由なしに契約締結を拒むことは許されない、と定められています。
また、理由なしに一方的に行政庁側から契約を解除すること、契約内容を変更する必要がある場合は、合理的な範囲内で契約条件を変更しなければならないという制限もあります。
なお、公営住宅の入居者を決めるなど、希望者全員に給付することが難しい場合には、先着順や当選などのような客観的方法によって対象者を選ぶ必要があります。

人々の生活を守るために、行政契約の一部にはこの様な制限がかけられます。逆に、行政が相手方に規制をかける場合もあるので、そちらも紹介します。

規制行政と行政契約

行政契約は、当事者同士の合意により締結することができます。行政はその性質を利用して、法律よりも厳しい規制をすることがあります。
行政が業者と結んだ公害防止のための協定と、廃棄物処理法の関係が問題となった事例を紹介します。
事例の概要は、廃棄物処理法に基づき、「知事」の許可を得て処分場を設置した事業者が、設置する「町」との間で公害防止協定を締結したが、その内容として、施設の使用期限が定められていたというものです。
問題になった点は、廃棄物処理法では、使用期限の定めというものがないのに、その協定で使用期限を定めた事です。
原審では、許可を知事の専権とした法の趣旨に沿わないため、期限条項に法的拘束力はないとしました。つまり、知事が権限をもって可としたにも関わらず、それを権限のない町が契約で制限するのは認められないと判断したのです。
ところが最高裁は結論をひっくり返し、法的拘束力を認めました。
知事の許可は、業者に対し処理施設の使用を継続すべき義務を課すものではなく、処理施設を将来廃止する旨の約束をすることは、業者の自由な判断で行えるため、その結果、許可が効力を有する期間内に廃止されることがあったとしても、法に何ら抵触するものではないと判断しました。
つまり、法で課した義務を契約で免除するのは当然違法だが、法で与えた権利を契約で放棄するのは自由だ、と判断したのです。
従って、行政が相手方に契約によって法律で定めている以上の規制を設ける事もできると考えることができます。
なお、契約により、その違反に対して刑罰を課すことまでは許されていません。

まとめ

今回は、
①行政の契約は私人間の契約と同様、対等な立場で行うのが原則である。
②対等な立場で考えると不都合になる契約もあるので、その場合には行政に制限がかかる
③契約で法律以上の規制をかけることも許される
ということについて書きました。
行政も民間と同じ様にという風潮がありますが、民間と全く同じにしたら不都合が生じてしまうので、この様な考えになるのは当然ですね。

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