行政調査

アウトプットで知識の定着をしていこうシリーズです。
今日は、行政調査について書いていきます。
今回の記事について、要約すると
①行政調査とは、行政が目的を達成するために必要な情報を収集することをいう
②行政調査は、任意調査、間接強制調査、強制調査の3種類に分けられる
③行政の権限が強い調査手法になると、根拠法令等が必要になる
という内容になります。

行政調査とは

行政調査とは、行政が目的を達成するために、必要な情報を収集することをいいます。警察が行う所持品検査や、税務職員が行う差し押さえも行政調査の一種になります。
行政調査は、その調査手法から、任意調査、間接強制調査、直接強制調査の3種類に分けられます。

任意調査

任意調査とは、国民の同意の上で行われる調査のことをいいます。例えば、行政が行うアンケート調査は、同意の上で提出してもらう形式になりますので、任意調査に該当します。
任意調査の場合、強制力が無いため、回答を拒否しても罰則はありません。また、国民の権利を侵害するものでは無いので、調査の根拠となる法令(以下、この記事では「根拠法令」といいます)は不要となります

間接強制調査

間接強制調査とは、物理的な強制は行わないが、拒否すると制裁(罰則)のある調査のことをいいます。
国税通則法に基づく職員の所得税に関する調査というものを紹介します。
国税通則法という法律では、関係職員に対し、質問調査権を与えています。質問調査権とは、納税者が申告した内容が正しいかどうか調査し、誤っている場合に、内容の更正、決定等を行うため、納税関係者への質問や物件を検査する事ができる権限となります。この検査は、あくまで相手方の任意に基づくもので、納税者が検査を拒否した場合、関係職員は強制的に検査をすることはできません。ただし、この検査を拒否した者については、場合によっては、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
この様に、強制的な調査権は無いが、調査を拒否した場合に罰則がある調査のことを、間接強制調査といいます。
この場合、国民に罰則等を付与することになるので、調査にあたっては、根拠法令が必要となります。

直接強制調査

直接強制調査とは、国民が拒否しても行政機関が実力行使によって目的を達成することのできる調査のことをいいますこの場合には、根拠法令が必要になり、さらに裁判所の令状が必要となります。
よくドラマで警察が令状を持って家宅捜索をする場面がありますが、あれがまさに強制調査の例になります。

まとめ

今回は、
①行政調査とは、行政が目的を達成するために必要な情報を収集することをいう
②行政調査は、任意調査、間接強制調査、強制調査の3種類に分けられる
③行政の権限が強い調査手法になると、根拠法令等が必要になる
ということについて書きました。
この分野では、警察が行った調査の適法性がよく問題になります。所持品検査を同意なしで行なった事例などですね。この点、判例を3つほど紹介しておきますので、少し難しいのですが、興味のある方は見てみてください。

①警察官の職務質問に付随して行う所持品検査の適法性
警職法2条1項に基づく職務質問に附随して行う所持品検査は、任意手段として許容されるものであるから、所持人の承諾を得てその限度でこれを行うのが原則であるが、職務質問ないし所持品検査の目的、性格及びその作用等にかんがみると、所持人の承諾のない限り所持品検査は一切許容されないと解するのは相当でなく、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、たとえ所持人の承諾がなくても、所持品検査の必要性、緊急性、これによつて侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される場合があると解すべぎである。

②自動車の一斉検問の適法性
警察官が、交通取締の一環として交通違反の多発する地域等の適当な場所において、交通違反の予防、検挙のための自動車検問を実施し、同所を通過する自動車に対して走行の外観上の不審な点の有無にかかわりなく短時分の停止を求めて、運転者などに対し必要な事項についての質問などをすることは、それが相手方の任意の協力を求める形で行われ、自動車の利用者の自由を不当に制約することにならない方法、態様で行われる限り、適法なものと解すべきである。

③調査の手法について法律に定める必要があるか
質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、右にいう質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられているものと解すべく、また、暦年終了前または確定申告期間経過前といえども質問検査が法律上許されないものではなく、実施の日時場所の事前通知、調査の理由および必要性の個別的、具体的な告知のごときも、質問検査を行なううえの法律上一律の要件とされているものではない。
なお、違法な調査によってなされた行政行為については、相対的には独立しているので、一般的には行政調査の違法は当然に行政行為の違法を構成しないが、違法性の程度によって、その結果行われた行政行為の違法を構成する場合もありうる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?