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【日本の冠婚葬祭~通過儀礼⑦十三参り~】

 このブログでは、日本の儀式を見直し、少しでも後世に継承していきたいという想いで様々な行事や儀式をご紹介しています。前回は『入学式』についての回でしたので、今回は『十三参り』について書いてみようと思います。

 前回のブログはこちら

 生まれてから一定の期間が経過したり、ある年齢に達したりすると誰もが等しく迎える儀式があります。 これまでご紹介してきたお宮参りやお食い初め、入学式などがそれにあたり、これらを「通過儀礼」といいます。

 生まれて間もなくは、短い間にとてもたくさんの儀式がありますが、大きくなるにつれ少しずつ間隔が長くなっていきます。七五三を過ぎると成人式までの間は、卒入学式しかないように思われている方も多いと思いますが、実は小学校を卒業し、中学校に進学したタイミングの春に「十三参り」という儀式があります。

 十三参りは、「数え年十三歳」の時にする儀式なので、「満年齢では十二歳」ということになります。つまり、生まれた年の十二支がちょうど一回りした年ということでもあります。

 昔から干支や十二支などは、年齢と同様にとても重要視されており、その十二支がまずは一回りしたということは、子供の死亡率が高かった時代ではとても喜ぶべきことでした。

 十三参りの起源は現在の成人式の歴史よりもかなり古く、平安時代にまで遡ります。第56代天皇にあたられる清和天皇が十三歳の時に、京都の嵐山にある法輪寺という寺院で成人の議をおこなったことが、その始まりだとされています。

 実は平安時代の厄年は現代のものとは異なっており、最初の厄年が7歳、次が13歳とされていたため、十三参りは厄落としの儀式でもありました。また、「半元服式」という意味合いもあり、このときから少しずつ大人になるための準備を始めていきました。たとえば、十三参りには初めて大人用の寸法の着物を誂え、肩上げをして着用します。その後、この着物を度々着用させることによって、きちんと着物を着た上での立ち居振る舞いを身につけられるようにしていったのだそうです。

 十三参りでは健やかな成長や成人への道を願い、虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)に参拝します。虚空蔵菩薩は、十三仏の中で13番目の仏であり、知恵と福徳を司る菩薩として知られておりますので、十三参りに参拝する対象となったようです。なお、虚空蔵菩薩が祀られている寺院がお住まいの近くになかった場合でも、儀式自体はどこの寺院でも受け付けていただけるそうです。

 普通に大人になることが当たり前ではなかった時代の人たちは、子どもが健やかに成長することを常に願うとともに、その成長を尊いものとして喜び、神仏に感謝しながら生活してきました。現代の私たちは、12歳まで生きることは当たり前のように思っており、十二支が一回りしようと、それほど関心を持っていない人が多いかもしれません。 

 七五三や成人式、結婚式は、今や記念写真撮影イベントと化している向きもあります。

 それぞれの由来など知らなくても、大して困ることはありません。しかし、古くから伝わる儀礼は成長・健康・無事・豊作への感謝が中心であり、すなわち「生きることへの感謝」が何よりも大切なこととされてきました。時代の変化によって、儀式の形は変わりつつありますが、「生きることへの感謝」は先人と同様に持ち続けたいものです。


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