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祖父との記憶

父方の祖父との記憶である。
私が中学1年生?くらいの時に亡くなってしまったし、年に3回ほどしか会う機会がなかったのであまり思い出といった思い出は無い。
ただ一つだけ今でも思い出せるものがある。

祖父の住んでいたところはそれはもう田舎も田舎で、家の前には山と田んぼとちょっと下に川がある場所だった。
小学3年の盆に祖父家に行った。
祖父は病気を患っており、入退院を繰り返していた。ちょうど祖父は退院している時だった。
いつもは家族たちと下の川で水遊びをしていたが、その日は祖父と夕方2人で山の方を歩いた。陽が沈みかけ少し吹く風が心地よかった。
蝉が鳴き、山は夕陽に照らされていた。
祖父に手を引かれ15分ほど歩いた。
川の上を架かる橋でお話しをした。
この川はどこから流れどこへ着くのか、
私の将来の夢は何か、そんな話をした。気がする。曖昧である。
だが、祖父の皺々の手の感覚は鮮明である。 
祖父との記憶はこれがほとんどである。
声も顔も背丈も思い出せない。だが、あの手と風景だけは思い出せる。
このほぼたった一つの思い出を大切にしていきたい。


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