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知識は作られるということ

今描いているマンガ「それでも地球は回る」は、学生のときのある気づきがきっかけになってます。それは「知識は作られる」ということでした。

考えてみれば当たり前なことかもしれませんが、それまでの自分にとって知識は「教科書に書いてあること」でした。だから学問には正解があるし、それを覚えるのが勉強でした。

そんな楽観的な学習観は、学生になって見事にひっくり返されました。

学生時代は、自分の研究に対して「なぜその理論を使ったのか」「その手法の妥当性はあるのか」という激しいツッコミを受け、他の研究者の人が使っている理論や指標を使うことですら、その妥当性を主張しないといけませんでした。

そして、そこでは絶対に正しい知識というものは無く、現時点で確かだと思われていることが、「知識」と呼ばれているものでした。

だから反対のことを意味するデータが得られることもあるし、同じ事実でも違う解釈をすることもできる。
知識とは常に確かめられ、更新し続けられるものでなければならず、もしも絶対に正しい知識というものがあれば、それは科学的な知識ではない。(これを反証可能性と言うそうです)

……つまり、学校で知識を学んでいたつもりの自分は、教科書を鵜呑みにしていて、科学とは真逆の態度だったのです…

これに気づいたときは、なかなかの衝撃でした。

あの教科書を丸暗記していた日々は何だったのか… 高校までは学問ではなくてただの詰め込みだったのか…

じゃあ、学問ってどうやってやるんですか!?

それを模索していた学生時代。
そこで、その科学的な学問のあり方は、どうやらガリレオあたりの時代に遡ることを知りました。

その前はというと、教科書に書かれていることが正しい世界。
アリストテレスという古代ギリシャの哲学者の書物が神のごとく崇められていて、そこに書いてあることが正しく、眼の前で違う現象がおきたなら、それは目の錯覚や偶然別の要因が加わったせいとされていました。

これを知って、「これ、今までの自分じゃん…」と再度の衝撃を受けました。

教科書が正しいので、当然当時の学問といえばテキストを暗記すること。
暗記ニーズが高まり、記憶術が流行っていました。
ガリレオはそんな時代に生まれて、丸暗記する授業がつまらなくて、つまらなくて仕方がなかったようです。(そして先生に喧嘩売ったりしていた)

確かに、暗記はつまらないですよね。
自分は物理とか数学の法則とかを覚えるのが一番苦痛でした(笑)
そして、彼を見ていて気づいたのは、

新しい知識を発見することは楽しい
科学は、それを見つけるまでの試行錯誤が楽しい

ということ。
今まで言われていたことが違うんじゃないかと仮説を立てて、あれこれ実験し、確からしいと思える事にたどり着く。

このプロセスがドキドキ・ワクワクして一番面白いところでした。この事に気づいてから、大嫌いだった物理が面白いと思えるようになりました。

これを学校の授業に取り入れたのが、板倉聖宣先生の「仮説実験授業」です。それをドラマ仕立てて教えている「ぼくらはガリレオ」は名著なのでオススメ…!

でも学校の教科書は、いきなり発見された法則が書いてあって、その発見にどんな意味があるかとか背景とかは無視して、それを使って練習問題…
学問の一番面白いところをバッサリ切り落とされてしまっていました。そりゃつまんなくなるよね。

そうじゃなくて、自分であれこれ考えて、確からしい答えを見つけ出すプロセス自体を体験できたら、きっと面白いだろうな、という発想で学生時代に「それでも地球は回る」というゲームを研究開発しました。

学生時代は不慣れなアカデミック世界で色々辛いこともあり、学問ってどうやるんですか!?という迷宮を彷徨っていたので、ガリレオに出会って無かったら、多分本当に、心が折れていたと思います。
そういう意味でも、彼は私の恩人です。

でもね……(まだ何か言うのか)

ガリレオの時代、自然科学は自然哲学と言われていて、科学的な知識だけでなく、霊魂は不滅なのかとか、宇宙と人間はつながっているんだとか、そういうことも学問として取り扱われていました。

しかし、これらは「反証可能性」がありません。
霊魂の有無は視えないので、確かめようがないのです。宇宙と人間のつながりも証明できません。
そのため、そういう物事は非科学的なものとして、後の世の中で学問の世界から追放されてしまいました。

でも古代エジプトの時代から(もしかしたらもっと前から)ずっと人類はこれらも真面目に考えてきたのです。非科学的なものと、考えるに値しないものは同じではない。
だから自分は、学問から切り離されてしまったものについても知っておきたいし、反証可能性が生まれれば科学にもなりうることは覚えておきたいなと思っています。

(マンガ版のブルーノというキャラクターは、そんな一面も担う存在として登場させていたりします。)

長々と思いの丈を書きましたが、あくまで作品を作ろうと思ったきっかけで、作品は作品として純粋に楽しんでもらえればと思います!

もしこの文章を読んで、こういったことに少しでも興味を持っていただけたなら幸いですm(__)m

作品リンクもペタっと貼っておきます。ご興味ありましたらどうぞ〜


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