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15年ぶりに復活!秘境の村の盆供養行事!都会の"助っ人"が復活を後押し!?

こんにちは!天龍つなぐラボです。
私たちは、都会に住みながら地域とつながる関係人口。長野県の秘境の村、「天龍村」と関わり続けて今年で4年目になります。
 
今回は、15年もの間中断されていた、天龍村の盆供養行事「向方のかけ踊り」を復活させた話をしたいと思います!

復活の舞台は、秘境の村。

伝統行事というと、担い手不足から途絶えてしまうものが多いのが現状。ですが、今回お伝えするのは、途絶えてしまった話ではなく、"復活"した話。

人口が増えている地域の話ならともかく、天龍村は高齢化著しい秘境の村。高齢化率はなんと全国ワースト2位(※2018年時点)で、村内にはコンビニも、信号機もないのです。

そんな秘境の村、天龍村には、「向方(むかがた)のお潔め祭り」と呼ばれる冬のお祭りが受け継がれています。実はこのお祭り、国指定の無形民俗文化財。

ですが、高齢化による担い手不足は「向方のお潔め祭り」においても例外ではなく、地元の担い手の方達は、地域外の助っ人を受け入れることで担い手不足を解消。お祭りに詳しい方ならご存知かと思いますが、本来、お祭りに地域外の人が関わる、ってあり得ないことなんです。

地元の方の並々ならぬご苦労によって作られた、地域外の助っ人を受け入れる仕組み。その流れに乗る形で、私たち天龍つなぐラボのメンバーも「向方のお潔め祭り」に関わるようになりました。

ヨソモノが祭りに関わっていいの?!
こちらの記事で詳しくお伝えしています↓

お祭りをきっかけに、交流の輪が拡大!

「向方のお潔め祭り」をきっかけに、地元の人との交流を深めていく天龍つなぐラボメンバーたち。

ある時ふと、「夏には盆踊りとか無いんですか?」と質問したところ、「実は…」と、地元の方から聞かされたのは、「2006年以降、中断されたお盆の行事がある」というお話。

なんと中断されてしまったお盆の行事というのは、お墓参りをする、精霊馬を作る…といった一般的なお盆の風習ではなく、この地域で受け継がれている「向方のかけ踊り」という伝統行事。

笛や太鼓を演奏しながら踊り、祖霊を慰めるためのもので、「担い手不足から2006年を最後に、途絶えてしまっている」とのことでした。この話を聞いたお祭り好きの天龍つなぐラボメンバーが「ぜひ復活させましょう!」と持ち掛け、地元の人も「よし、やってみようか!」と、復活に向けて動き出すことになったのです。

盆供養行事の復活を後押ししたのは、○○!

「やってみようか!」となったは良いものの、課題は大きく2つありました。

一つ目は、人数。「向方のかけ踊り」を行うには、笛を演奏する人や、踊り手が最低でも15人必要で、それ以下では行事を行うことが出来ません。15年間中断されていた大きな理由として「人手不足」があったのですね。

二つ目は、助っ人たちの交通費です。天龍村は東京から4時間という立地で、交通費は決して安くありません。必要な人数を集めるためにも、交通費の補助があると嬉しい…というのが正直なところでした。

「向方のかけ踊り」当日のメンバー表(踊り手)。
踊り手以外にも、笛を演奏する人が必要となるため、最低でも15人は必要となる。

そこで今回申請したのは、長野県の「アーツカウンシル助成事業」。地域の伝統芸能の担い手である「向方芸能部」が主体となり、「向方掛け踊り復活事業/お盆行事の伝承」として申請を行いました。

こちらの事業に見事採択されたことを受けて、二つの課題を一気に解決させることが出来たのです。

こうして、準備を進めること約2ヵ月。
地元の人も15年ぶりに踊るとあって、映像記録などを頼りに、記憶を辿りながら練習をしたそう。地域外の助っ人たちも交えた事前合宿を経て、いよいよ本番を迎えることになりました。

「掛け踊り」にもいろいろな種類の踊りがあった!本番当日の踊りと装束をご紹介!

ついに迎えた「向方のかけ踊り」本番!

「向方のかけ踊り」が行われるのは、地区にあるお寺「長松寺(ちょうしょうじ)」。住職が常駐していない素朴なお寺です。
8月14日の日没頃になると、徐々にお寺に人が集まってきました。

「向方のかけ踊り」が行われるお寺。踊り手はゆったりとした浴衣姿。

区長さんの先達により、ご仏前に向かって皆で念仏を唱えてから「向方のかけ踊り」がスタートです!

ご仏前で挨拶をする区長さん。

こんなにいくつも踊りがあるの?当日踊られた内容とは?

まず踊り手は、お寺から少し離れた位置(ジョウドというそうです)にスタンバイ。
この地域独特の灯籠(切子灯籠)を持った区長さんを先頭に、一列になって笛と太鼓を鳴らしながらお寺に向かう「庭入り」を行います。

切子灯籠を持った区長さんを先頭に、踊り手が一列になってお寺に向かう「庭入り」

お寺の山門をくぐると、全員で大きな輪を作り、お寺の庭を3周!「ぶっきり」と呼ばれる独特の太鼓の打ち方に答えるように、踊り手が一斉に「セー!」と声を出すと、「向方の掛け踊り」の一つ、「庭ほめ踊り」が始まります。

踊り手がお寺の庭で輪を作って踊る

太鼓と笛の音に合わせて唱え歌いながら、お寺の庭を輪になって踊ります。太鼓を打ち鳴らしながらの踊りはとてもダイナミック!

続けて「蚊ばらい踊り」、「引け踊り」と続き、最初の「庭入り」とは反対方向にお寺の庭を周ってから、ジョウドに戻って終了となりました。

ぜひ動画でご覧ください!当日の踊りの様子はコチラ↓

太鼓に柳?様々な支度と楽器!

踊り手は太鼓、やっこ、鐘、など、手に持つ道具によって動きが異なります。また、それぞれ身に着けている装束も様々!

ひらひらと美しい傘をもって踊る「やっこ」や…

ひらひらと美しい傘をもって踊る「やっこ」

笠をかぶり、長いバチを使って叩きながら踊る「太鼓」。

一番太鼓~七番太鼓まで7人が「太鼓」を担当

片手に扇、もう片方には美しい飾りを持って踊る「柳」。

「柳」は一番柳、二番柳の2名。

踊りのダイナミックさはもちろんですが、道具類の美しさにも引き込まれるものがありました!道具類の手入れや準備だけでも、大変だったことと思います。

実際やってみてどうだった?皆さんの感想をご紹介!

今回、実際に踊りや笛で「向方のかけ踊り」に参加した皆さんに感想を聞いてみました!

練習時間が足りませんでしたが、所作を重んじるのではなく、楽しんで参加できたことが良かったです。たすき(?)のかけ方など、準備の面も記録に残したり教わったりしていく必要があると思いました。

埼玉県から参加/男性

実は祭り、伝統の維持とは、その煩わしいこと(事務方)を誰がこなすのかという事で、かけ踊りを地区でやらなくなった原因でもあり、改革的な事でもあったのです。人が集まれば芸能事はなんとかなりますが、伝統維持継承、祭りの正体は人です。

天龍村在住/男性

コロナ禍でまず自分も含め誰か感染しないかどうか不安でしたが、無事終えることができてホッとしています。向方の皆さんも良かったという声が多くて、やった甲斐があったかなと思います。

東京都から参加/女性

まとめ

2022年「向方のかけ踊り」に参加したメンバーの集合写真

地域外の助っ人が担い手に加わり、助成金に後押しされる形で復活することが出来た「向方のかけ踊り」。
同じ地区の別のお祭りが繋いだ縁も、復活の機運を盛り上げました。

地域外の助っ人たちからは、貴重な伝統行事に携わることが出来て良かったという声や、事前合宿や本番前後に天龍村に滞在する中で、地元の人と交流したり、天龍村の暮らしを体験することが出来て良かったという声も。

地元の方からもやってよかったという声が多く、当日は「この地区にこんなに人が居たの?」とびっくりするほどの観覧者が集まったことも印象的でした。

来年はどんな形になるのでしょうか?天龍つなぐラボの今後の動きに是非ご注目下さい!


支援:信州アーツカウンシル(一般財団法人長野県文化復興事業団)

令和4年度文化庁文化芸術創造拠点形成事業

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