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編集のしやすさアップ!ストーリーを意識した撮影テクニック|古知野西保育園の撮影テク

 愛知県にある古知野西保育園は、2020年7月から動画配信アプリ「てのりの」を導入。コロナにより、保護者が園内で子どもたちが遊んでいる様子を気軽に見られなくなってしまったことから、園の普段の様子を動画で伝えてきました。園の日常動画を「いかに見せる」か。遊び心満載の撮影テクニックを伺いました。

てのりの画面

撮影テク①
〝子どもが夢中になっているもの〟をテーマに

1つ目のポイントは、「子どもが夢中になっているもの」をテーマに動画のストーリーをつくるということです。

古知野西保育園では、今年運動会が中止になりました。
それでも、幼少期に運動あそびをして、子どもたちの得意なところを見つけたり、身体の動かし方を育てたりしていくために、運動会という節目は保育の中で欠かせないもの。

(運動会が)ないからといって、ないわけではない、ということをどう伝えようかと考えたときに、『動画』があがりました。そう考えたとき、ただ身体を動かしている動画を配信するよりも、『運動会なかったけど、楽しかったね』と親子で一緒に見て楽しめるようなものにしたいと思ったんです」

そのために、重視したのが「ストーリー」。
伊藤園長は、年中クラスの先生に「何か、子どもたちがいま夢中になっていたり、気に入っているものはある?」と相談。

年中クラスの先生によると、『どろぼうがっこう』(作・絵:かこさとし)という絵本が子どもたちの間で流行っているということでした。その夢中ぶりは、登園してすぐに手ぬぐいをきゅきゅっと頭に巻いて、どろぼうになりきるほど。

しゅりけん道

その一言をヒントに、伊藤園長たちは、「運動会ではなく、『どろぼうの修行』に出かける」というストーリーを考えました。

「逃げ足が肝心じゃー!」と園庭や芝生公園を思い切り走りまわる様子や、川としゅりけん道に見立てた道をぽっくりでわたる様子などを撮影。さらには、運動会らしい「つなひき」「玉入れ」も行い、力強さや身のこなし、片付けの速さなどを競い合います。

見せ方も、絵本のキャラクターを印刷した台紙をカメラの前で動かして、担任の先生が声をあてるなど、絵本の世界観をところどころに散りばめ、リアルも動画も盛り上げます。

絵本

撮影テク②
〝園内の珍事件〟をよりファンタジックに

ある日、同園の畑に、きゅうりが落ちていたそうです。
しかし、畑ではきゅうりを育てていません。

「これは、かっぱのしわざじゃなかろうか」

それから数日、園内は「かっぱ騒動」で持ち切りになりました。

そこで、年少クラスの担任の先生のアイデアで、年少の運動会では、「かっぱの大冒険」と題し、かけっこや玉入れ、水鉄砲を使ったきゅうりのまとあてゲームをしながら、かっぱを探す冒険に。全5編の動画の最後には、子どもたちの呼びかけに対し、かっぱに扮した先生が登場します。

かっぱ登場

「子どもにとって、『ファンタジーの世界にひたって遊ぶ』ということはとても大切。大人にとっては茶番に見えるかもしれないことも、想像したり、いろいろなことに思いを巡らせてみたり、楽しむ力につながっている」

園内で話題になったエピソードをもとに動画のストーリーを仕立てることで、運動会1つをとっても、園独自の思い出深いコンテンツになっていることがよくわかります。さらに、ストーリーがあることで、「どんなシーンを目立たせようか」という、その後の編集のしやすさにもつながっているそうです。

運動会仕立ての動画は、年少・年中・年長をあわせて約30コンテンツを配信。再生回数のみを見れば、保護者数×10倍の再生数にまで伸びたそうです。

かっぱダンス

古知野西保育園の〝もうひと工夫〟
動画と解説風おたよりで育ちを見える化

同園では、毎月、写真をふんだんに使ったクラスだよりを作成。
運動会バージョンのおたよりでは、写真とともに中でも注目してもらいたい部分を紹介。

例えば、
・「多い」「少ない」といった数の概念がわかるようになってきた
・身体が育ってきたことで、投げるフォームが変わってきた

など、解説風のおたよりを全学年向けに作成し、「おたよりと一緒にてのりの(動画)を見てね」と促しているそうです。

てのりのにアップロードされた、年長が「ストライクアウト」(ストライクを狙って数字のカードを落とすゲーム)をしている動画のコメント欄には、育ちが見えるようなメッセージも。

年長5 ストライクアウト
ストライクを狙って数字のカードを落とします。
カード1枚につき10点。
距離が近いのは、ご愛敬♪
両足揃えの投げ方から卒業し、カッコよくなってきました。

「動画を見て、『わあ、かわいい!』で終わらずに、『こんなふうに育っているんだな』と注目してもらいたい。それから、てのりのの動画を親子で見て、『楽しいね』『こんなことができるようになったね』って、会話を弾ませてもらえたらうれしい」と、伊藤園長はコメントやおたよりに込めた思いを教えてくれました。

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◎江南市立古知野西保育園(愛知県江南市)
「人」こそすべて、の保育理念のもと、子ども主体の保育をしている愛知県江南市の保育園。植物や野菜の栽培・収穫を通して季節を感じ、短大の学生の指導による調理実習体験や食育指導を行っている。そんな園の特徴でもある園の畑から、実っていないはずの「キュウリ」を発見。何気ない日常からストーリーを見出し、意外性と楽しさあふれる動画を配信している。