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継続して動画を配信するコツ 日常保育の動画に込められた意図とは? | ずだじこども園

 静岡県浜松市にある「ずだじこども園」。芳川沿いの田園地域で、四季折々の自然とふれあう環境が魅力です。「てのりの」との出会いは2020年の9月、「パステルIT新聞」の記事でした。園長先生の「やってみる?」から始めた「てのりの」。継続するには課題もありましたが、今では新しい試みに挑戦しながらも楽しく配信を続けています。今回は、継続してコンテンツを配信していくコツを、園長の鈴木先生と、てのりの担当の細田先生に聞きました。

動画配信のきっかけと「てのりの」との出会い

 動画配信をはじめようとしたきっかけは、コロナ禍の卒園式。式の様子を保護者に届けるため、YouTubeでライブ配信を行いました。その頃は、初めてということもあり、ネット環境が整っておらず、配信が途中で切れてしまうなどうまくいかなかったと言います。

 「はじめはライブにこだわっていました。ただ、結局見逃したという声があったり、先生たちが後で振り返りたいという要望があったり、わざわざライブ配信をする必要はなかったと感じました。1時間後に同じ動画を配信できれば同じ。あえてライブ配信ではなくても良かったのではと考えました」

 ライブ配信は思うように行かなかったものの、動画で園の様子を届けたいという想いは変わらなかったずだじこども園。代わりになるものを探していたときにちょうど見つけたのが「パステルIT新聞」に掲載されていた「てのりの」の記事。園長先生の「やってみる?」というひとことに、職員が試してみたところ、簡単に登録から配信までできました。

配信している動画の一部

 「登録がかんたんで、誰でも手軽に動画をアップロードできたのが決め手です」

 「てのりの」は、動画専門アプリだからこそのシンプルな仕組み、連絡帳アプリと異なり無料で始められるといったメリットがあります。そこが、当時のずだじこども園の環境にぴったりとあてはまったようです。

開始はスムーズ。されど、ぶつかった継続配信の壁

 スムーズにスタートを切ったずだじこども園。しかし、アップロードが簡単とはいえ、継続的に動画配信をするうえでは、やはり課題がありました。はじめは、業務の合間に撮影や編集をすることが難しく、なかなか継続的な配信ができていませんでした。そんな園の状況とは裏腹に、スタートすると楽しみにしている保護者からは、配信を期待する声が高まります。
 そこで、同園では、いつもお付き合いがある発表会を撮影してくれているカメラマンに動画の撮影を依頼。専任カメラマンが撮影してくれるようになったことで、動画配信が活発になりました。カメラマンは一眼レフできれいに撮影し、編集まで対応してくれるとのこと。

 「動画配信は職員がやらなければいけないということはない。外部のパートナーや事務方の職員、例えば協力いただける保護者さんでも良いですよね、他にやってくれる人に頼って、選任としてお任せすればやっていけます。(カメラマンは)撮影に関しては有料にはなりますが、それ以上にメリットが大きく、ずだじこども園ではそのメリットを選択しています」

 最低限、個人情報で載せてはいけないものを事前に確認する作業はどうしても発生します。ただ、そこも業務の負担にならないように、そして保護者も気軽に見られるように、動画を3~5分程度の短いものに編集してもらって対応しているそうです。できないならば、できる方法を見出していく、それがずだじこども園流です。

日常保育だけでなく動画配信も、目的を明確にすることが大切

 動画の内容は、主活動、朝の様子、給食など。行事のときはDVDを販売しているため、「てのりの」では日常保育をメインに配信しています。保護者からは、これまで見られなかった普段の様子が見えるのは嬉しいという声が聞かれるようになりました。

 導入前は、保護者アンケートでも「日常の様子がわからない」という意見がよくあがっていました。子どもに園での様子を聞いても、子どもから聞く話だけではイメージがしにくいこともあります。

 「保護者が園での様子を見る機会は、行事のときくらい。そうすると、見えるのは本番の様子だけです。結果だけを見てしまうため、その良し悪しで『去年より悪くなった』や『手を抜いた』などと判断をされてしまう可能があります。行事は、本番だけではなく、その過程も大事です。日常保育を見てもらうことによって、その過程も共有することができるようになりました」

 (動画配信で)過程を共有するようになってから、一緒につくりあげている感覚になれるところが良いという保護者からの声もあったとのこと。行事での完成作品の意味がより伝わりやすくなったようです。

 また、子どもの様子だけではなく、先生の手遊びを配信して保育活動の導入にしたり、先生の自己紹介(職員紹介)の動画を出したり、様々な種類の動画を配信するずだじこども園。あるときは、映像にとどまらず、音声だけのラジオを配信してみたこともあるそうです。座談会のようなイメージで、行事の狙いやたわいのない会話、行事前の会議の様子などを録音し、写真を背景に配信。どんな想いで先生が子どもと関わっていくのかを伝えています。「保護者の家事の合間や帰りの時間で聴いてもらえたら」という想いから保護者向けに特化して配信したラジオ。保護者からの反応も良く、「いつもと違って面白かった」との声があがりました。

 「①子どもたちに特化、②親子に特化、③保護者に特化、と大きく3つのカテゴリをつくって配信しています」

と細田先生。目的を明確にして配信することで、次々に新しい発想が生まれているようです。 

動画を共有することで、保護者が保育の味方に

 動画を外部パートナーに撮影してもらうことで新たな発見もありました。客観的な視点で動画を撮影することで、先生方も見えていなかった部分まで見えるようになったと言います。おたより帳だと誤解が生まれてしまうような場面でも、動画を見ることで保護者が納得してくれるようになりました。

 「こども園はブラックボックスと言われることもあります。でも、一生懸命に働いている先生がほとんど。これまで先生の視点で子どものために撮影していた動画が、プロのカメラマンにお願いしたことで、先生の日常も撮影してもらえるようになりました。客観的に撮影される動画からは、普段がんばっている先生の姿も映っていて、そんな姿を認めてもらえるようになったことは職員の励みになりました。園での様子が見えないから心配という声もありましたが、動画配信がそうした不安を解消するきっかけになって、保護者に味方になってもらえるようになったことはとても良かったことですね」

配信している動画の一部

バスの送迎のときに、動画についてひとこと声をかけてくれる保護者も増えたそうです。動画配信をはじめたことで、一緒のものを見て、共有して、認め合える関係性が育まれているようでした。

楽しく動画配信を継続することで先生方も前向きに

 ずだじこども園では、職員がタブレットをつかって動画撮影をすることもあります。最近は、若手の先生方が自主的に編集して「これも上げたい」と持ってきてくれるようになったと言います。

 「若い先生はスマホやタブレットを使って撮影したり編集したりすることに慣れています。はじめるまでは大変でも、楽しくなってくると気持ちで動き出す。誰でもわからないことに1歩足を踏み出すのは怖いけれど、今の時代にあわせて取り入れていくことで、結果的に業務も効率化できていくのではないかと思います」

 最近では、若手の先生方とともに「ムービー園だより」を配信したそうです。

 「SNSなどの利用が増え、箇条書きはできるけれど、長文が苦手という先生も増えてきました。手紙だと文章能力が必要ですが、今の先生は話す方が上手で、写真や動画も撮られ慣れているので、一緒にノリノリで対応してくれます。伝える側だけでなく、見ている保護者も文章より動画の方が慣れている世代になってきていて、たまにこうしたお手紙も良いのではと感じています。とはいえ、保守的な方もいらっしゃるため、バランスよく活用するのが良いですよね」

「ムービー園だより」の一部

 若い先生方も楽しく無理なくできる「ムービー園だより」には手ごたえを感じているようでした。

動画配信を継続していくコツは、かしこまらないこと

 「短い動画でも良い。テロップなどは出さなくても良い。大変で嫌になってしまうような編集ならしない方が良い。動画配信を継続するコツは、細かいところは気にせずどんどん(本数を)あげることだと思います」

 鈴木園長先生はそう語ります。職員の手間をできるだけかけずに、楽しく配信を続けていくためにできることを柔軟に取り入れていくずだじこども園。こうした姿勢と工夫が、動画配信を続けていくコツかもしれません。

 今後は、園の紹介を「てのりの」にあげて、未就園児に公開していくことも計画しているとのこと。保護者目線でまわっていく「ツアー動画」のようなものができれば、またひとつ動画を通したつながりが生まれます。

 「これからも動画で日常の様子を伝えていき、園と保護者のコミュニケーションのひとつとして『てのりの』を活用していきたいと思っています」

 ご協力くださった先生方、ありがとうございました!