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人生最終盤を社会でどう支えるかを考えたい。死に関すること、介護のことなどをテーマにした文書をまとめます。
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2018年6月の記事一覧

生前葬が話題になったときにすべきこと

「生前葬」が時々、メディアで話題になる。最近だと、建設機械大手のコマツの元会長・安崎暁さんが、新聞広告で自身のがんを告知し、生前に自らの葬儀をしたことが報じられた。 広がらない生前葬 なぜ? 日本で生前葬が注目されるようになったのは「ターキー」こと、水の江瀧子さんが1993年に生前葬をしたのが契機だった。ちょうど、型にはまらない「自分らしさ」を生かした葬儀が注目され出した時期だ。その後、一般向けに生前葬を売り出した葬儀社もある。メディアで話題になるたび「いいかも」と、葬儀社

「死のタブー」 なにが問題なの?

「忌引き中出勤に違和感」で触れた「死のタブー」について、担当している大学院の授業で話題にしたさい、こんな質問があった。「タブーがあるとしたら何か問題があるのか?」 話題にせずに済むのなら… たしかに、死を話題にせずに済むなら、それにこしたことはないのかもしれない。「死にかけている時以外、死を考えるな、と自然は教えている」(モンテーニュ『エセー』)。怖いし、できれば遠ざけておきたいという気持ちは素直だ。「生を充実させるには死を思うことが大切。『メメント・モリ(死を思え)』だよ

安楽死「滑りやすい坂」と自己決定

安楽死を2002年、世界で最初に合法化したオランダで、「生きるのに疲れた」といった、健康上の問題はない高齢者にまで安楽死の適用範囲を広げようとする政府の提案が議論になっているという。さすがに、医師会からも強い反対意見が出ているようだが、この問題を巡る「滑りやすい坂」についてあらためて考えさせられる。 滑りやすい坂とは、一度そこに足を踏み入れて滑ってしまうと、どこまでも止まらなくなる危険性を指す言葉だ。オランダやベルギーといった「安楽死先進国」での法の適用範囲は当初、治療方法

「忌引き中出勤」への違和感

死者のホテル  「死者のホテル」という言葉が使われ出したのは2010年。遺族が葬儀の段取りなどを決めるまでの間、遺体を冷蔵設備の備わった施設で預かる事業だ。それ以前も、葬儀社などには冷蔵設備があって遺体を預かることはあった。だが、専門施設を設け、それを「死者のホテル」とキャッチーなネーミングをしたことで、俄然世間の注目を集めるようになった。  近親者の死で混乱する中、慌ただしく業者や段取りを決めてしまうことで、葬儀をめぐるトラブルにつながることがある。だから、「死者のホテル」