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「思考と意味の取り扱いガイド」Ray Jackendoff レイ・ジャッケンドフ 岩波書店 2019

かなり新しい言語学分野の著作。ジャッケンドフの著作は読みたかったので、良い機会である。

趣向を変えて、ナレーターがこの著作を紹介していくという感想文にしてみた。
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(ナレーター=tenmik)
 あなたの目の前にダチョウがいます。ダチョウは今まさにドアを開けて入ってこようとしています。さて、このダチョウと、あなたが、頭のなかに鮮やかにイメージしたダチョウの違いは何でしょうか?

「現実のダチョウ = イメージしたダチョウ?」
では、ダチョウは、どこにいるのでしょうか?

・あなたの頭の脳の中?
・外部世界?
さて、あなたは、どんな感想をもつでしょうか。

(言語学の学生)「ダチョウ」という概念・発声をコード化するのは脳であり、脳にしか存在しない

(ナレーター)
なるほど。さすがですね。この本は、その辺も踏まえつつ、さらに進みます。

(ジャッケンドフ)夢と現実の違いは、視覚表層と目から網膜への光刺激があるかどうかの違いである。つまり、幻覚は恐ろしいものでまるで現実さながらの体験となる。しかし、目からの入力と視覚表層の結びつきモニターが異常機能しているのが原因で、実際には光の網膜への刺激はない。

(ナレーター)
ジャッケンドフが、この本でいちばん言いたかった事の一つは、「目からの入力と視覚表層の結びつきの存在が(通常の場合)、世界を現実として見せているものである」ということです。

(仏教徒の意見)これは、仏教界では当たり前すぎる現実です。私たちが今見ている世界は、空であり因縁により絶え間なく移り変わり形のないものですから。

(ナレーター)
へぇー、そうなんですね。では、日本ではジャッケンドフの発見は、それほど新鮮ではないという事ですね。ジャッケンドフは、自分の発見があまりに異端な考えのため、胃にこたえるかもしれないと書いていますね。
しかし、ジャッケンドフは視覚だけでなく、言語と意味をつかさどる「概念構造」も、視覚の「空間構造」と同じことではないか、と言っていますよね。こちらは、言語学では新しい見地ではないでしょうか?

(ジャッケンドフ)
視覚と意味概念は、両方ともブラックボックスである無意識下を通している。
それは、意味の文脈理解や、錯視などでわかる。違う点は、概念構造は、ソシュールの言うように音と意味が「恣意的」であり、習慣的学習を経験として必要とするのに対し、空間構造は、ある視点からの光刺激を三次元化するのを幾何学的原理に基づいている。

(ナレーター)
まるで、Googleの「ハイブリッド」地図のように、衛星写真と細かい線がき地図を組みあわせ、わたしたちの思考、意味の総体が成り立っているんですね。われわれはどう世界を認識するか、のところでジャッケンドフは、「空間構造」と「概念構造」という相補的な2つのデータを利用していると書いていますね。
もう少し詳しく知りたいです。

つづき


メモ📝
・「ニカラグア手話」p15 その話し手が、どの部分を自分たちで意図的につくり、どの部分が「たまたまそうなった」たもので、そうなった理由も分からないものか、興味あり。新設された聾学校、音声手話どちらの経験もないろう者集団のなかで生まれる。今なお急速に発展。
・「見た目と話し方」は、どの集団に属しているかを示すしるし。p14 「正しく」話すとエリート層に属してるしるし、「間違った」話し方をするとあなたはそこに属していないというしるしがつく。英語。
・「金」「トラ」p22 本来なら、原子構造やDNAについて熟知しなければ、「本当の意味」を知り得ないはず。=ヒラリーバトナムの意味の意味。でも、誰もが金やトラに出会しているため、あんなものが金でありトラであるという日常的概念でことたりる。「トラに気をつけて」「あの素敵な夕日を見て!」で、日没が光子が網膜にぶつかるという概念である事を知らずにも、皆間違いなく適切な反応をする。
・サールについてp25 サールはお金やゲーム得点、境界標識を「制度的事実」と読んで、紙幣の色やサイズの生の物理的事実と対比した。
・言語とは何か・・思考と意味は、ほぼ完全に無意識的
・合理的思考として我々と動物を区別し、最も尊んでいるもの・・脳のなかで起こっていることんおぼろげに写し出したにすぎない。
・ニューロン・・脳のどこそこの部位が発火、活性化するこれがどのようにして「経験」を生み出すか
・一見簡単に思えるようなことも、細部に目を向けると単純さは消えてなくなり、p4
・脳は有限の貯蓄量。「有限のシステム」でもって、無限の組み合わせの思考をつくる(単語と単語を組み替えるなどする)「心的文法」チョムスキー

・声帯や舌や唇を使って、あなたの心的文法がその思考と結びつけた複雑な音声を発→よく似た心的文法をもっている人、それを似た何かと結びつけ、思考をあなたのものとして考える。=理解。
言語共同体で可能。
・語とは何か 5章 どこにあるのか?空間?外部社会?語は使われるたびに消費される?火曜日?また火曜日がきた?
・レイコフは、時間は、空間のメタファーだと述べた。p33 at Tuesday ,before ,after ,in など時間の前置詞を見て。しかし、火曜日などが全面的に空間に存在をモデルとしてるとは言えない。(during,until,sinceは時間のみだし、to the left, behind, beneathは空間のみしか使わないから)

・「心的辞書」知らない語でると困惑。
・ヴィトゲンシュタイン「意味をみるな。使用を見よ」=語がどの様に機能するか推し量ることはできない。使用を見てそこから学ばなければならない」

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