質問078:戦術はどうすればいい?
回答
▶戦術を意識するから、戦術は成功しない
「究極のテニス上達法」は、リズムに乗ってタイミングよく打てるようになる、「体で覚えるテニス上達法」です。
それを通じて、スイングに関するイメージ(軌道、スピード、メリハリ、力加減等)が潜在意識に書き込まれます。
戦術も、スイングと同じです。
つまり、頭で考えて行なうのではなく、イメージにもとづいて遂行されます。
スイングの基本について「フォアハンド」「バックハンド」などの種類をご存じのとおり、戦術の種類についても、「センターセオリー」「ストレートアタック」「ワイド・ワイド」等、基本的なもので構いませんので、事前に知っておいてください(そして練習もなさってください)。
これらがイメージの蓄積となります。
だけど実際にプレーするときには、戦術を意識する必要はありません。
「センターセオリー」「ストレートアタック」「ワイド・ワイド」等のイメージがあれば、体は自然と、条件が整えば戦術を遂行するからです。
「フォアハンドで打とうか」あるいは「バックハンドで打とうか」などと、いちいち意識しませんよね。
それと同じように、「こういうボールが飛んできたら、ここに打って、相手が前に詰めてきたら次は……」などと予測しながらプレーするのはNGということです。
それは意識を未来に飛ばして、「今・ここ・この瞬間」のボールに対する集中力を低める(結果、戦術を遂行する以前にミスをする)原因になるからです。
ご自身も、「あそこに打ったら、ここに返ってくるから、次にこう打って決める」などと意識しながらプレーするものの、「そもそも、あそこに打てない」というご経験があるかもしれません。
逆に「狙っていたわけじゃないけれど、対戦相手のサーブが打ちごろの高さに飛んできたので、ストレートに打ったらサイドパスが抜けた!」というご経験もおありかもしれません。
これは、ストレートパスのイメージ蓄積があったうえで、得意な打ちごろの高さに飛んできたという条件が整ったから、体が戦術を遂行したのです。
▶戦術は「買い物」と捉えると簡単
戦術は、「買い物」のようなものとお捉えいただくとよいかと思います。
つまり何を選ぶかの「選択」です。
今夜はカレーライスをつくると決める。
これが、概略となる「戦略」です。
そのために必要な材料を、スーパーへ買いに行くとします。
この具体的なアクションが「戦術」。
まず、スーパー入り口付近ではニンジン、玉ねぎ、ジャガイモなどをカゴに入れます。
いくら肉が大好物だからといって、店内奥のほうにある肉売り場へは、いきなり行きませんよね。
そうすると、あとから右往左往して、ニンジン、玉ねぎ、ジャガイモを買い戻るドタバタになる。
このとき、カートが必要ならば、あらかじめ入り口付近で手配しておきます。
そのあたりは、ご自身の体力やキャパシティと相談してください。
そうしないと、食材を手に取ったはいいものの、持ちきれないから引き返す「体力」と「時間」と「メンタル」の消耗を招いてしまいます。
つまり、入り口でカゴとカートを手配し、ニンジン、玉ねぎ、ジャガイモを選択したら、レトルトのコーナーでカレールーをゲット。
ようやく店内奥のほうにある肉売り場へ向かいます。
その時々で何を選ぶかの「選択が戦術」。
特に「メンタル」が削られると、もうやる気すら失ってしまいかねないから、要注意です。
大前提として、今夜はカレーを作る概略となる「戦略」がまずあり、そのためには何が必要かを選択していく具体的アクションが「戦術」です。
当然、戦術を遂行するためには、カレーの具材として何を使うか、そしてそれらがどこにあるのかの店内における配置を知っておかなければ、スムーズに事は運びません。
入り口から、一度も引き戻すことなくレジまでたどり着けたら、カレーを作る「戦略」を遂行するための買い物「戦術」は、ひとまず成功。
テニスの「戦略」も、おおよそ「体力」と「時間」と「メンタル」のどれかで勝負することになりますから、戦術をしくじらないための「選択」が大切といえます。
▶テニス初心者は「配置」を知らない
ところが初めて行くスーパーだと、こうはいきませんよね。
何がどこに配置されているのか、分かりません。
これが、戦術のイメージが「ない」状態です。
そのため入り口から、行き当たりばったりで進む手探りのプレーになる。
そもそもカレーにどんな具材が必要かすら知らなければ、選びようもないというのが、戦術の「ない」状態です。
当たり前のように聞こえるかもしれませんけれども、「センターセオリー」も「ストレートアタック」も「ワイド・ワイド」も知らないテニス初心者は、この状態。
もちろん戦術が、いつもいつも上手くハマるとは限りません。
ジャガイモを買おうと思っていたのに、品切れ。
そんなハマらなかったときに、ほかの具材で代替するのか、あるいはナシで何とかするのかを選択するのが「戦術」です。
「戦術(選択)」を誤れば、美味しいカレーをつくる「戦略」も達成されません。
テニスでいえば、相手ボレーヤーの足元に沈めて、浮き球を誘う。
これも立派な「戦術」です。
このとき、トップスピンで鋭く沈めるのが難しければ、スライスでやんわり沈めるのも戦術遂行としての賢明な「選択」と言えます。
浮き球を誘うのには、何も「速いボール」である必要はないですからね。
速くても、浮いてしまえば叩かれる。
スピードを落としてでも相手の足元にやんわり沈めれば、次の返球は浮き球となって来る可能性は高いと「選択」するのが戦術です。
▶戦術は「選ばれる」
なので「(戦術を)上級者はどのように立てて、どのように自分の思うようにボールを打っているのでしょうか?」というご質問に関しては、「蓄積されているイメージのなかから、その時々の状況に応じて選択されたボールを打っている」とお応えできそうです。
ただしそれは、「戦術を意識する」という意味ではありません。
イメージがあれば、いちいち「カレーはジャガイモかサツマイモか?」などと意識しません。
なのでテニスでも、「ここはトップスピンかスライスか」などと考えるのではなく、蓄積されたイメージに基づき、その時々の状況に応じた戦術が「選ばれる」のだと言えます。
▶ボールを「追視」すれば、同調OK!
フォームをチェックする目的でフィニッシュを確認するのであれば、素振りでやるのがオススメです(これがスイングにおけるイメージの蓄積になります)。
たけど、ボールを打ちながらのフォームチェックは、NGです。
ボールを打ちながらフォームを意識すると、タイミングよく当たりませんから、ストレスフルなテニスになってしまいます……。
これを嫌というほど経験している人は、少なくないでしょう。
そうすると、いら立ちや、不安、ふてくされなどの「嫌なイメージ」が蓄積されていきますから、どんどんどんどん悪循環にハマっていく負のスパイラルなのです。
おっしゃるように、「ボール打ったあとは常に首は前にしてボールの行方を追ったほうがいい」というのは、まさにそのとおりです。
横目でボールの行方を追うのではなく、顔ごとボールのほうに向けて、中心視野でつねに追い続けてください。
ボールの行方を目で追い続ける「追視」により、集中力の持続がかない、ボールに同調し続けるプレーができるようになるのです。
▶「顔ごと正対」で、こんなに見やすくなる!
『新・ボールの見方~怖れのメガネを外して、ありのままに見る技術~』に解説があります。
ボールを横目で見たり、上目づかいで見たり、上から目線で見下したりすると、生理学的に見にくくなるようにできています。
何しろ目のピントがピッタリ合う中心視野で捉えられる領域は、「点」でしかありませんからね。
試しに今、顔を正面に向けたまま、左側にある人やモノを、見ようとしてみてください。
このように「横目」で見た場合、「ほとんど見えない」「距離感もつかみづらい」「眼筋にも負担がかかる」「そのため心理的にもストレスが及ぶ」わけですけれども、ご自身はフィニッシュにおけるフォーム確認のために、そのようなボールの見方になっていたと推測されます。
結構、多いのです。
ロブを「上目づかい」で見て、スマッシュをふかしたりネットに叩きつけたり、あるいはローボレーを「上から目線」で見下して、打ち損じたり……。
そうではなくて、顔ごとボールに「正対」させて見ます。
ロジャー・フェデラーは、インパクトの瞬間までボールに顔を正対させて見続けていたのは有名ですね。
そして打ったらボールの行方を追うために、前を向き直します。
さきほど実験した、横目で見ていた人やモノを、そのように「正対して見直し」てみてください。
ラクに、ハッキリと、不安なく、「全然違った見え方」になるはずです。
▶インパクトの「瞬間」、見ようとしないで!
ただしこういうと、インパクトの瞬間だけを「ガッ」と強く見ようとする人がいますが、それはNG。
あくまでも飛び交うリアルタイムのボールを、「ジーーーーーッ」と追視し続けるのです。
なので、無理してインパクトに顔を残そうと意識する必要はありません。
インパクトの瞬間は、1000分の4秒と言われる「一瞬」です。
「一瞬だけ集中」しても当然、『究極のテニス上達法』でお伝えしている、飛んで来るボールにも飛んで行くボールにも「集中し続ける」状態には、なりませんからね。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero