テニス上達メモ033.「イヤなこと」をやめれば、好循環に乗れる!
循環には、「好循環」と「悪循環」とがあります。
もちろんテニスの上達・調子も、できれば好循環の流れに乗りたいものです。
しかし若かりしころの私は、それこそ真逆の「悪循環」にハマってしまっていました。
たとえば相手から飛んでくるボールに対して、振り遅れた。
その様子を見ていたテニスの諸先輩方は、水を得た魚のごとく、たたみ掛けてきます。
「振り遅れないように、テイクバックをコンパクトにするんだ!」
「テイクバックをコンパクトにするには、右ワキを閉めるんだ!」
「テイクバックをコンパクトにしたぶん 、力不足を補うためにはボディーターンが有効だ!」
「ボディーターンをするためには、左肩越しにボールを見るといいぞ!」
それらのアドバイスに従った結果、どうなったかといいますと 、もうお察しのとおりです。
アドバイスに従う以前よりも、ますます振り遅れる「悪循環」にさいなまれました。
そりゃ、そうでしょうよ!
テイクバックやら、右ワキやら、ボディーターンやら、左肩までをわざわざ意識していては、「ますます遅れる」に決まっています。
「そのためには」
「そのためには」
「そのためには」
「そのためには」
「そのためには」
上手く打つ「そのためには」、さらに何を付け足せばいいというのでしょうか?
確かに、大手を含む出版社が発行する月刊テニス雑誌にも(当時は隆盛を極め、日本に5誌もあった)、有名なプロやテニスコーチによるアドバイスが、ところ狭しとぎっしりと、巻頭特集として掲載されていました。
細かな連続写真を使った懇切丁寧な技術解説が、てんこ盛りです。
それらにならっているつもりなのに、なぜか自分には上手くプレーできない……。
こうなると、「自分には運動神経がないのではないか?」「テニスに向いていないのではないか?」などと疑心暗鬼になるから、ますます悪循環の一丁上がりなのでした。
「なんか、テニスに行くのが楽しくないぞ……」
「ガツガツとイヤな当たりばかりで、ヒジや手首も痛いし……」
そんな日々が続き(時系列に多少の脚色がありますので、本当のところはリリース予定の『テニスゼロのテニス自叙伝(仮題)』に譲ります)、開き直るしかありませんでした。
「もうフォームなんて、どうでもええわ!」
「ボールだけよく見て、ラケット面の真ん中で打てばそれでええやん!」
そうすると、びっくりしましたね。
なんと一発目から、アドバイスされたテイクバックのサイズなんて一切意識しなくても、振り遅れはピタリとなくなりました。
右ワキを意識して閉めたりしないから、のびのびスイングでき、力不足になんて悩まされなくなりました。
身体をひねる余裕がないときには、無理やりボディーターンもしないから、対応力がメキメキ向上。
そうなると、あんなに悩んでいたのに、ゲンキンなものです。
「あれ? 運動神経あったじゃん!」
「もしかして俺、テニスに向いてんじゃね?」
何も意識しなくても(←意識しないから!)、ジャストミートが止まらなくなる快感。
※ガツガツとイヤな当たりの「苦」がなくなった状態を「快」と錯覚するのが「一切皆苦」のメカニズムなのですけれども、真理の小難しい話は置いておくとして、苦しかった反動の「快感」ですから喜びももう、当時はひとしおなのでした(笑)。
そうしたら、さらに私はびっくりしました。
「打球タイミングさえ合っていれば、フォームなんてどうでも、ちゃんと打てるやん!」
「強打はきちんとコートに収まるし!」
「テニス雑誌ではさんざん意識しろとは書かれているけれど、何も意識しないほうが、メチャクチャ調子いいッ!」
ある「気づき」をきっかけに、新たな「気づき」が生まれ、新たな「気づき」が連鎖して、また新たな「気づき」が降ってくるというか、湧いてくるというか、やって来るというか。
もう、止まらなくなりました。
これを「好循環」と言わずして、何と言いましょうか!?
いったん循環が起こると、スーッと流れに乗れてしまった印象です。
好循環に乗るためには、何かを「付け足す」のではなくて、むしろ「引く」ことが大事だったわけですね。
テイクバックやら、右ワキやら、ボディーターンやら、左肩越しやら……。
テニスコート上で付け足したすべてをやろうとするのは、複雑すぎます。
諸行無常だからです。
「無二の一球」が次々と飛び交うさなかでは、やれることといえば限られていて、シンプルなほど、当然ですが上手くいきやすい。
だから、あれやこれやを、「やめる」のです。
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero